キタオットセイは、アシカやアザラシの仲間で4本の足がヒレのようになっている鰭脚類(ききゃくるい)という動物です。
芸をしたり、とても愛嬌があったりと人気者のキタオットセイ。その魅力とともに、岡山県玉野市にある「渋川マリン水族館」で飼育されている“水の上で昼寝するキタオットセイ”について紹介します。
キタオットセイってどんな動物?
キタオットセイ(学名:Callorhinus ursinus)は、北部太平洋、ベーリング海、オホーツク海に生息する海獣。クリっとした大きな目と小さな耳たぶが特徴で、水族館でも人気を博しています。

キタオットセイはオスとメスの体の大きさが哺乳類の中でもっとも差がある動物といわれ、オスの体重はメスの4倍ほどもあるそうです。水族館では親子に間違われるカップルも多いといい、水族館あるあるのひとつとなっています。
ちなみに野生では、いちばん身体が大きいオスに数十~百数頭の多数のメスが群がるハーレムを形成します。

このように、オスメスで生殖器以外の形態に性差があることを「性的二型(にけい)」と呼びます。哺乳類では、一夫多妻制でハーレムを作るゴリラやマントヒヒなども同様にオスの身体の方がかなり大きいです。
キタオットセイは絶滅危惧II類(VU)に指定
キタオットセイの毛皮は高価で取引されるため、生息地では乱獲によって絶滅の危機に瀕したそうです。一時は回復傾向にありましたが、未だに十分な回復が進んでいません。国際自然連合(IUCN)の絶滅危惧種レッドリストでは絶滅危惧II類(VU)に指定されています。
ただ、北海道などでは「定置網や指し網を破る」「かかった魚を略取する」など漁業への影響が大きく、生態の解明とともに漁業とのすみ分けの必要性などの課題があります。
渋川マリン水族館のキタオットセイは水の上で寝る?
筆者と筆者の子どもは水族館が大好きで、年に1回ほど、岡山県玉野市渋川にある「渋川マリン水族館」にも遊びに行きます。

今回は初めて夏に行ったのですが、なんとキタオットセイのうち1頭がポーズをとりながら漂っていて、具合でも悪いのかと思ってしまうほど水の上で動きません。
ドキドキしながら観察していると……ただ昼寝しているだけのようです。

人間がリゾートプールでマットを敷いて水に浮いているような様子で、なんとも優雅な姿でした。
飼育員さんに聞くと、暑い日にはよくする行動らしく、2頭同時にしていることもあるそう。その様子も見てみたいですね。
キタオットセイが水の上で寝る理由
キタオットセイのエサは、イワシ類やサバ、スケトウダラ、ホッケ、スルメイカ、サケなど。これらのエサをえり好みせずバクバク食べるので、夕方から朝方にかけてエサを探すために潜水するそう。
エサを探す時間以外は、海上で半球睡眠しながら休息します。

半球睡眠とは、脳の半分だけ眠り残りの半分は覚醒している状態の睡眠のこと。イルカやクジラなどで普遍的な睡眠方法です。
海上や海中で普通に寝てしまうと、溺れるか捕食者に食べられてしまうため、脳を半分ずつ休息させるためにとる睡眠方法でもあります。

なお、キタオットセイでは、片方の前足と両方の後足を重ねた帆掛け船のポーズをとって海面で睡眠する習性があるそう。
前足と両方の後足を重ねた帆掛け船のポーズを専門用語では「ジャグハンドリング」と呼び、オットセイ類に特有な姿勢らしいです。
前足の片方だけ水に浸けておくことで、すぐに泳ぐことが可能となります。これにより、逃げたり姿勢をコントロールしたりしやすくなるのでしょう。
キタオットセイを水族館で見よう!
現在、日本でキタオットセイを飼育している水族館は、伊豆・三津シーパラダイス(静岡県)、アクアマリンふくしま(福島県)、渋川マリン水族館(岡山県)、浅虫水族館(青森県)の4館です。

これらの水族館に行ったら、ぜひ展示の様子をご覧ください。水上での昼寝姿は、とてもかわいいので見れたらラッキーですよ!
(サカナトライター:額田善之)