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漁業関係者を困らせる<クラゲの大量発生・大型化> 漁業被害への対策は?

「海でクラゲをよく見かけるようになった」

海のレジャーを楽しむ人や採集活動をする人などは、最近そのように感じている人も多いかもしれません。

実は年々クラゲの数が増えていて、放っておくと私たちの生活にも大きな影響を与えてしまうことがあるのです。

クラゲの発生状況

ニュースでも「クラゲの大量発生」が取り上げられることが増えました。中でも“大型クラゲ”と呼ばれる、クラゲの中でも大きな種類のものは、昔よりも発見されることが多くなっているようです。

この大型クラゲには、ビゼンクラゲやヒゼンクラゲ、エチゼンクラゲ、ユウレイクラゲといった種が該当します。

エチゼンクラゲ(提供:PhotoAC)

もともとは九州や東シナ海あたりでよく発見されていたのですが、最近では日本海から北海道にまで広がっているようです。

2021年には、日本海沿岸において一度の漁で約1000匹ものエチゼンクラゲが網に入っていたという報道がありました。また2024年には、同じく日本海側で1日5トンの混入があったともいいます。

2025年は大量発生の報告はなかったようですが、近年のクラゲはより“大型化”の傾向があり、少量の発生でも操業に影響が出ることがあるといいます。

クラゲ大量発生の理由は?

クラゲの大量発生について、そのメカニズムは完全には解明されておらず、今もデータの蓄積・解析が続いています。

一方、この大量発生は日本だけでなく、メキシコ湾北部沿岸やアフリカ南西部のナミビア沿岸域、アルゼンチンのパタゴニア沖などでも発生しているそう。

エチゼンクラゲ(提供:PhotoAC)

大型クラゲの代表であるエチゼンクラゲは、主に朝鮮半島から中国本土に囲まれた海域に生息。しかし、エチゼンクラゲのポリプの発生場所はいまだ不明だとされています。

平均表層温度の上昇や河川からの排水などによる富栄養化、魚類の乱獲をはじめとした海洋環境の変化が関与していると考えられています。

クラゲの増加で発生する問題

では、クラゲが増え続けると、どのような問題があるのでしょうか。

実は、一番困るのは漁業関係者なのです。

クラゲがたくさん網に入ることで、重さで網がやぶれたり、魚が入る余地がなくなってしまったりといった被害のほか、せっかく入った魚がクラゲの毒で弱り死んでしまい、販売できなくなることもあります。

クラゲの大量発生は、漁獲量・漁獲金額ともに減少させることとなるのです。

海のレジャーにも影響あり

一方、漁業者以外の市民にも、直接影響があることもあります。

その代表は“夏のレジャー”。クラゲは海水浴場付近の海に発生することもあります。

クラゲは毒を持っており、遊泳中の被害はかゆくなるだけでなく、猛毒のものであれば搬送のリスクがありますし、ショックで溺れてしまう二次被害がうまれることもあります。

あまりにもクラゲの数が増えてしまうと、遊泳禁止になる海水浴場も出てくるでしょう。

入網したクラゲを排出する方法と対策

本来は魚をとるための網に、思わぬ形でクラゲが入ってしまうことがあります。

クラゲがたくさん入ると、魚を捕るのが難しくなってしまうため、クラゲを外に出す工夫や、そもそも網に入らないようにする対策が考えられています。

ビゼンクラゲ(提供:PhotoAC)

独立行政法人水産総合研究センター(現・国立研究開発法人水産研究・教育機構)による、マニュアル『大型クラゲ対策のために』より、沖合底引き網のクラゲ対策をみてみましょう。

クラゲを誘導して排出

まずは「排出口を作る方法」です。網の入り口近くにクラゲ誘導網を設置。

その先にクラゲがることのできる小さな穴を付けて、そこから自然に外に出せるようにします。この穴は魚が通れない大きさなので、魚は逃げられず、網の奥に入り漁獲されます。

仕切り網でわけて排出

もう一つは「仕切り網で分ける方法」です。

一度クラゲと魚・甲殻類を一緒に集め、魚や甲殻類のみ落ちる仕切り網を設置し漁獲、上部のクラゲは排出口から網の外へ排出される、という仕組み。

このように対策が練られていることからも、大型クラゲの漁業被害が伺えます。

網の目を大きくしてクラゲを逃がす

また定置網では、網の目を大きくするという対策も取られています。

垣網の大目化とは、定置網の一部である「垣網(かきあみ)」の網目を通常より大きくすることで、大型クラゲによる被害を減らす対策です。

垣網は、魚を直接とるための網ではなく、魚を網の中へ誘導する役割を持っています。そのため、網目を少し大きくしても、魚の入り方には大きな影響が出にくいとされています。

一方で、大型クラゲは体が大きく水の抵抗を受けやすいため、網目が細かいと網に引っかかり、網を重くしたり破損の原因になったりします。垣網の網目を大きくすることで、クラゲが網にたまりにくくなり、そのまま通り抜けやすくなります。

この対策により、漁具への負担を軽減し、安定した操業につなげることができます。

クラゲの大量発生はこれからどうなる?

遠いことのように思える大型クラゲの発生ですが、私たちの食卓と密接に関係する漁業に影響を与えます。漁業関係者たちはただ駆除をするだけでなく、共存できるよう工夫を重ねているようです。

漁業は食卓を通じて、私たちの暮らしともつながっています。海で起きている変化を知ることは、身近な海のあり方を考えるきっかけになるのかもしれません。

(サカナトライター:米澤菜保)

参考文献

読売新聞オンライン-日本海にまた大量エチゼンクラゲ、一つの網に1000匹も…09年には漁業被害100億円

上, 真一. 「グローバル化するクラゲ類の大量発生:原因と対策」. 地球環境 (Global Environmental Research), 2011, 16(1), p.17-24.

独立行政法人水産総合研究センターー漁具改良マニュアル -大型クラゲ対策のために₋ 第4版

JAFIC 一般社団法人漁業情報サービスセンターー大型クラゲ出現情報

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米澤菜保

米澤菜保

クラゲ好きの管理栄養士ライター

フリーランスの管理栄養士webライターとして活動中。幼少期に地元の「のとじま水族館」へ行った事をきっかけに大のクラゲ好きに。YouTubeでクラゲの動画を観ているときがいちばん幸せ。

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