海には様々な形態の魚がいますが、中には一般的な魚のイメージとはかけ離れた姿をした種もいます。
今回は変わった形態を持つ魚たちを紹介します。
海老のような魚・キホウボウ
海老と魚のハイブリッドのような見た目のキホウボウという深海魚がいます。キウホウボウはスズキ目キホウボウ科に属する魚で、日本国内では20種ものキホウボウ科の魚が記録されています。
キホウボウの仲間は主に赤またはオレンジ系の体色を持ち、体は硬い外骨格で覆われていることが特徴で、キホウボウのような小型種からオキキホウボウのような中型種もいます。
また、キホウボウ科の魚はホウボウ科の魚によく似ていますが、キホウボウ科の魚たちはホウボウ科とは異なり、硬い外骨格を持つことや、胸鰭下部の遊離軟条が2本であることが特徴的です。赤くて硬い外骨格を持った姿はまるで、海老と魚を融合させてたような見た目をしており、初見では魚には見えないかもしれません。
このような姿をしているのだから食味も海老に似ているのだろうと思いきや、キホウボウ科の魚の味は以外にも淡白です。
ちなみにキホウボウ科の魚は深海底引き網では普通に漁獲される魚であり、愛知県や鹿児島県などの一部地域では食用として流通しています。味が気になる方はぜひ探してみてはいかがでしょうか。
鏡のような魚・カガミダイ
鏡のような見た目のカガミダイという魚もいます。カガミダイは浅所から深海に生息するマトウダイ科の魚です。
名前の通り平たい体と鏡のような銀色の体色が特徴の魚であり、標準名の由来となっています。英名ではMirror doryと呼ばれ、英語圏でも鏡が由来になった名前が付いています。
同じ科のマトウダイとは体色が明らかに異なることから、容易に区別することができます。また、2019年には近縁種であるイトヒキカガミダイが新種記載されました。このイトヒキカガミダイは背鰭の鰭膜が非常に長いことや、頭長と吻長の比率からカガミダイと識別することができます。
カガミダイは味も良いことが知られています。やや味は淡白ですが、食感はよく、刺身やフライ、煮つけどんな料理にしても美味しく食べることができます。
しかし、市場で見かける頻度は低く、マトウダイよりも値段が安いにも関わらず、産地以外で見かけることは多くはありません。産地の一つである愛知県ではギンマトーの名で売られており、蒲郡市内の魚屋では丸魚や加工品で普通に見ることができます。
また、同じような見た目の魚にギンカガミがいます。こちらも名前の通り平たく銀色の体を持ちます。
ギンカガミはギンカガミ科に属する海水魚であり、現生するギンカガミ科の魚は本種のみが知られています。この魚はアジ科の魚に比較的近いとされており、食味も青物に近いです。ギンカガミは定置網などで少量漁獲されますが、流通は稀であり、手に入れるのは難しい魚です。
岩のような魚・オニダルマオコゼ
オニダルマオコゼは岩に酷似した海水魚です。英語ではStone Fishと呼ばれるほど岩石に似ています。
その見た目とは裏腹に肉は綺麗な白色であり、大変美味と評価されています。
特に沖縄県では高級食材として知られており、その姿を魚市場でもお目にかかることができます。一方で、この魚は背鰭棘に強い毒を持つことでも有名であり、2010年には本種の毒による死亡事故も起こっています。
ちなみに、オニオコゼ科の魚は本種の他にも岩のような見た目の魚がいくつかおり、いずれも背鰭に毒を持つため注意が必要です。このように岩のような見た目の魚は岩礁に生息する種が多く、周囲の岩礁に擬態するために、このような形質を獲得したと考えられます。
カエルのような魚・アカグツ
アカグツ科に属するアカグツは、海底に生息する深海魚です。
アカグツ科の魚はどの種も変わった形態をしていることから人気が高く、特にアカグツは強く縦扁(じゅうへん)した体と赤い体色、可愛い顔が特徴の魚で人気があります。
アカグツの名前の由来ですが、「赤い靴」ではなく、「赤いグツ(クツ)」と言われています(クツはカエルの古語である「クク」が語源と考えられています)。
また、アカグツは水族館で見られる深海魚としても知られています。
通常、底引き網で得られた魚の大半は水圧の変化や網によるスレ、他の魚の重さで多くが死んでしまいますが、アカグツ科の魚類は比較的強く、漁獲後も生きていることがあります。そのため、水族館だけではなく、稀にペット用としても流通することもあります。
なお、英語ではアカグツ科の魚をBatfishと呼びますが、これはアカグツ科の魚(恐らくフウリュウウオの仲間)を背面から見た姿がコウモリの形に見えることから、このような名前が付けられたと言われています。
このように、海には魚らしからぬ形態をした不思議な魚がたくさんいます。その食味と言えば、見た目の印象はあまり関係がないようです。
見る楽しみはもちろん、機会があれば食べてみるのも良いかもしれません。
(サカナト編集部)