スズメバチにはできれば会いたくないという人が多いでしょう。
スズメバチのメスが持つ毒は非常に強力であり、小型哺乳類はオオスズメバチやキイロスズメバチの働き蜂に1回刺されるだけで、死に至ると言われています。
しかし、この毒を恐れない生き物がいます。それがトノサマガエルです。
強い毒をもつスズメバチ
日本のスズメバチはオオスズメバチ、キイロスズメバチ、コガタスズメバチなどが知られており、メスは産卵管を進化させた毒針を持ちます。
これらのスズメバチたちが持つ毒は非常に強力であり、オオスズメバチやキイロスズメバチであれば1回刺すだけで、小型の哺乳類を死に至らせることが可能です。
そんなスズメバチですが、天敵がいない訳ではありません。
意外にも鳥類、クモ類、カエルなど複数の動物がスズメバチの捕食者として知られています。
スズメバチを食べるトノサマガエル
水田やため池で暮らすトノサマガエルからも、野生個体の胃内容物からスズメバチが発見されています。
このことから、水や蜜を吸うために水辺にやってきた働き蜂を、トノサマガエルが襲撃していると考えられていました。
トノサマガエル(提供:PhotoAC)一方、トノサマガエルがどのようにして、スズメバチの毒を回避しているのか、毒に耐えるなにかがあるのか、謎に包まれていたのです。
そうした中で、神戸大学大学院農学研究科は、トノサマガエルとスズメバチの生体を用いた観察を実施しました。この研究成果は「Ecosphere」に掲載されています(論文タイトル:Data from: Pond frog as a predator of hornet workers: high tolerance to venomous stings)。
3種のスズメバチを与える実験
研究ではトノサマガエルの成体に対してオオスズメバチ、キイロスズメバチ、コガタスズメバチの3種のスズメバチが与えられています。
この実験により、トノサマガエルがスズメバチの毒針をどのようにして回避しているのか、あるいはどのくらいの確立で捕食が成功するのか、実験室で観察が行わました。
実験では45個体のトノサマガエルに対して、3種のスズメバチがそれぞれ15個体が用意され、トノサマガエル1個体に1個体のスズメバチが与えられています。
刺されても捕食
実験と観察の結果、ほとんどのトノサマガエルがスズメバチを襲うことが判明しました。
キイロスズメバチを襲った個体で93パーセント、コガタスズメバチを襲った個体で87パーセント、オオスズメバチを襲った個体で79パーセントが捕食に成功していたのです。
この際、捕食の有無にかかわらず、多くのトノサマガエルが顔や口内をスズメバチに刺されていたものの、実験後に衰弱したり死亡したりした個体は確認されなかったといいます。
トノサマガエルと同じか、それより大きいマウスではスズメバチに1回刺されるだけで死亡することから、この結果は本種が毒針への強い耐性があることを示すものとなりました。
毒に耐える仕組みは謎
今回の研究により、トノサマガエルがスズメバチに対して強い耐性を持つ可能性が示されました。しかし、トノサマガエルがスズメバチの毒をどのようにして耐えているのかはいまだ謎に包まれています。
哺乳類を死に至らせるスズメバチの毒が、なぜトノサマガエルに耐えることができるのか──。今後の研究で、スズメバチの毒の進化やトノサマガエルがもつ耐性について解明されるのが楽しみですね。
(サカナト編集部)