メダカは飼育や繫殖が容易で、アクアリウム初心者や愛好家に親しまれている魚です。多くの人が一度は目にしたことがあるでしょう。
そんなメダカですが、実は飼育や展示だけでなく、研究の現場でも活躍している魚だということを知っていますか。
メダカは進化や医療の研究で重宝されているのです。
淡水魚の代表ともいえる<メダカ>
メダカはダツ目メダカ科の4センチほどの魚です。平地の湖池、水田、用水や流れのゆるやかな河川の下流域に生息します。
日本には、兵庫県から青森県までの日本海側の地域に生息するキタノメダカ(学名:Oryzias sakaizumii)と京都府以西の日本海側と岩手県以南の太平洋側および内陸部に生息するミナミメダカ(学名:Oryzias latipes)の2種類がいます。これらは日本固有種です。
なお、ミナミメダカには地域ごとの遺伝的な違いがあり、現在では10前後の近交系が知られています。
メダカ(提供:PhotoAC)近交系とは、近親交配が繰り返された結果、遺伝子の違いがほとんどなくなった集団のことを指します。
こうした集団は、自然界では限られた地域に生息する生きものに見られることがありますが、実験用のマウスなどでは、研究のために人の手で作られています。
近年、都市化や河川改修などで生息地が減少し、両種とも環境省レッドリストで絶滅危惧II類(VC)に指定されています。
様々な表現型をもつメダカ(提供:PhotoAC)メダカの繁殖は江戸時代から趣味として親しまれてきました。かけ合わせによって、色やヒレの形が異なる変種が生み出せます。
近年、珍しい色やヒレをもつメダカが生み出されメダカブームが起こりましたが、最近は少し過熱が収まったようです。
メダカをモデル生物にする利点
ゲノム解読の結果、メダカは硬骨魚類の中でゲノム数が少ないフグと多いゼブラフィッシュの中間のゲノム数を持つ魚であることが判明しました。
ゲノム解読が先行したゼブラフィッシュは、純系や近交系が存在せず、個体ごとの遺伝子の違いが大きいという特徴があります。そのため、試験によっては評価が難しくなる場合がありました。
一方、近交系が確立されているメダカでは、遺伝子の同一性が高く、実験結果が安定しやすいという利点があります。
純系とは遺伝子が全く同じ集団のことで、近交系よりも高い遺伝的同一性を示します。
遺伝子組換えメダカ(提供:PhotoAC)また、フグは飼育が大変でありモデル生物にするのは難しいです。その点、飼育しやすく実験条件を整えやすいメダカは、モデル生物としての優位性が際立っています。
こうした特徴から、メダカは人間を含む他の生きものの体の仕組みや病気のメカニズムを理解するための研究に用いられてきました。
メダカで何を研究するのか?
メダカはかけ合わせにより、成長できない組み合わせや突然変異で大きく見た目(色やヒレなどの形)が変わります。つまり、成長の段階でどこかの遺伝子に異常が発生しているのです。
ゲノム解読が完了したメダカであれば、遺伝子に異常が出るとどのような変異や異常が起こるのかを詳細に解析できるため、進化やヒトの病気の発生メカニズムを研究できるのです。
メダカの胚発生(提供:PhotoAC)例えば、肝臓の形成機序や肝疾患モデルの作出なども行われています。
メダカは日本で生まれたモデル生物として様々な研究に貢献しています。用水路でのガサガサや、水族館などでメダカを観察するときは、ぜひメダカたちの貢献を思い出してくださいね。きっと、違った観点から楽しく観察できると思います。
(サカナトライター:額田善之)