マンボウ類は世界に広く分布する大型の海水魚で、特徴的な見た目から水族館でも人気の魚です。
一方、マンボウ類は寄生虫が多い魚としても知られており、解剖すると多くの寄生虫が見つかるといいます。しかし、マンボウ類の寄生虫相(寄生虫の種類や構成の全体像)についてはこれまで情報が不足していました。
そうした中で、東邦大学などの研究グループは日本近海のマンボウ類を調査し、マンボウ類の寄生虫相を明らかにしました。
この研究成果は「Systematic Parasitology」に掲載されています(論文タイトル:Accacoeliid trematodes in two sunfish species, Masturus lanceolatus and Mola mola, in Japanese waters)。
水族館の人気者<マンボウ>
「マンボウ」とは、マンボウ科マンボウ属のマンボウ Mola mola もしくはマンボウ科の総称です。
マンボウ(提供:PhotoAC)マンボウ類は日本を含めた世界中に広く分布し、その特徴的な見た目から水族館でも高い人気を誇ります。
また、一部地域では食用としても利用されており、肉は肝和えで食べられるほか、腸は「ひゃくひろ」と呼ばれる珍味です。
マンボウの寄生虫
観賞魚・食用魚として有用なマンボウ類ですが、実は寄生虫が多い魚としても知られています。実際に解剖をすると多くの寄生虫が見つかるようです。
しかし、マンボウ類における寄生虫相は情報が不足しており、どのような種がどのくらいいるのかは謎に包まれていました。
また近年、マンボウ科の分類が進み、日本近海でマンボウとされてきた種には、マンボウとウシマンボウの2種が含まれていると考えられています。
国内におけるマンボウの寄生虫記録は過去にあるものの、それがマンボウなのかウシマンボウなのかは分からないということです。
そのため、マンボウ類の正しい寄生虫相を明らかにするためには、現在の分類で宿主を同定し寄生虫を記録する必要がありました。
10種もの吸虫が発見される
そこで、東邦大学などの研究グループは日本近海のマンボウとヤリマンボウを対象に寄生虫相を調査。体内から得られた寄生虫(Accacoeliidae科の吸虫)の記録をおこないました。
マンボウ(提供:PhotoAC)調査の結果では、ヤリマンボウとマンボウそれぞれ4個体計8個体から合計497虫体が得られています。これらの虫体を形態とDNA解析で調べたところ、5属10種もの吸虫が見出されました。
さらに、10種のうち4種は未記載種であることが判明し、論文中で新種記載され新たな和名が提唱されています。
新種記載された吸虫4種
論文で新種記載されたのは、クモガクレマンボウキュウチュウ、ベンガラマンボウキュウチュウ、オトヒメマンボウキュウチュウ、トンガリモンボウキュウチュウモドキの4種です。
クモガクレマンボウキュウチュウは5ミリほどの小型種で消化管内容物に隠れることから発見が難しいようです。ベンガラマンボウキュウチュウは個体差はあるものの、体の全体または一部が「弁柄色」を呈することに由来しています。
また、オトヒメマンボウキュウチュウは小型で細長いことが特徴。トンガリマンボウキュウチュウモドキは既知種のトンガリマンボウキュウチュウにものの腹吸盤の基部が短いことで区別できるとされています。
他の海域やマンボウの調査が期待される
今回の研究により、マンボウとヤリマンボウの体内から10種もの吸虫が発見され、うち4種が未記載種であり論文中で新種記載されました。いずれの吸虫も人間への感染報告はないといいます。
この成果はマンボウの体内という限定的な環境に絞っても、実に多様な生物がいることを示すものです。今後は別の海域や他のマンボウ科を調査することで、マンボウ類の寄生虫相がより詳しく解明されることが期待されています。
(サカナト編集部)