東京大学大気海洋研究所の平井惇也講師らの研究チームは、砕氷船ガリンコ号などを活用し、北海道紋別沖で動物プランクトンを採集。その多様性を明らかにしました。
この研究の成果は「Marine Environmental Research」に掲載されています(論文タイトル:Hidden diversity of marine zooplankton under sea ice in the Okhotsk Sea: Insights from community and population analyses based on DNA metabarcoding)。
海氷で覆われるオホーツク海
オホーツク海は日本とロシアに囲まれた半閉鎖的な海域。魚やエビ、カニなどが数多く生息しており、豊かな漁場は我々の食卓を支えています。
また、北半球において、流氷が形成される南限に位置し、冬季は海氷に覆われることが知られています。
紋別の海(提供:PhotoAC)このような特徴から、オホーツク海は独自の生物多様性を有すると考えられてきました。
しかし、海氷域はアクセスが難しいことから、冬季の海氷下の生物多様性調査は、ほとんど行われてこなかったといいます。
観光船を活用してサンプリング
今回の研究では、海氷下の生物多様性を解明すべく、動物プランクトンに着目した調査が実施されました。
動物プランクトンは海流に逆らって移動できない小型の生物なので、水産重要種の餌としてだけでなく、環境変化に敏感かつ群集組成が変化しやすいことが知られています。
ガリンコ号(提供:PhotoAC)動物プランクトンの採集では、観光用の砕氷船「ガリンコ号」や展望塔オホーツクタワーが活用されました。
4割が既存の配列データベースに一致せず
採集された動物プランクトン群集には多くの種く含まれていたものの、外見からの識別が困難だったといいます。
そこで、研究チームは多様性を網羅的に解析できるメタバーコーディングを用いて種判別を実施。その結果、約100種に相当するDNA配列のグループが検出され、このうちの約4割が既存の配列データベースに一致しないことが判明しました。
この結果は海氷下に未記載種などが多く存在する可能性を示唆するものとなりました。
また、主要な動物プランクトンで広域に分布する種でも、オホーツク海に独自の集団を持つ例も確認されています。
海氷の減少が進むオホーツク海
今回の研究によって、オホーツク海における海氷下の生物多様性が明らかになりました。
また、ケガニの幼生やスケトウダラの稚魚も発見されているとのことで、海氷下に豊かな生物多様性が維持されていることも示されています。
この成果は、オホーツク海の環境が変化していく中で、生態系への影響を評価する上で重要な知見になるとされています。
(サカナト編集部)