タコやイカが海の中で、瞬時にからだの色を変えるようすを見たことはありませんか。
頭足(とうそく)類と呼ばれる彼らは、体色や模様を変化させることで身を守るだけではなく、仲間への合図や求愛などコミュニケーションをとっているのではないかと考えられています。
また、イカの仲間には体色を変化させるだけでなく、ホタルイカのように発光する種類も少なくありません。
この模様や発光は、一体どのような役割があるのでしょうか。
イカのコミュニケーションは視覚情報が重要
イカにとって視覚は、仲間とコミュニケーションをとるための重要な手段です。
コウイカの仲間は威嚇するときは触手を大きく広げて体を大きく見せたり、求愛するときにはオスが発達した一対の腕を伸ばしてメスにアピールをしたりと、視覚的にコミュニケーションをとることがあるからです。
コブシメの喧嘩。メスを奪い合う際に触腕使うことがある(提供:PhotoAC)そんなイカの目は、人間と同様にカメラのような構造をしています。
しかし、近年の研究により偏光を認識していることが明らかになりました。そのため、海面から差し込む光や、生き物に当たることで生まれる光の変化など周囲の環境の変化に対して敏感です。
このことから、イカは腕を使った動作のほかに、体色や模様を変えたり発光したりすることで、威嚇や求愛などのシグナルを仲間に伝えていると考えられています。
つまり、イカのコミュニケーションにおいて視覚情報は非常に重要なのです。
イカはどうやって体色を変えているのか
イカは皮ふの下に無数の色素胞(しきそほう)を備えており、周囲にある放射状の筋肉によって伸縮させて体色を変えています。
この色素胞は、それぞれの中心に色素で満たされた弾力性のある袋があり、中身は黒や茶色、オレンジ、赤、黄などさまざまな色をしています。この色素胞1つ1つが伸縮することで、周囲の環境や状況に応じて瞬時に色を変えるのです。
ヨーロッパアカイカ(学名:Alloteuthis subulata)色素胞がよく見える(提供:Adobe Stock)また、一部の頭足類は光を反射して輝く虹色素胞(こうしきそほう)や、光を散乱させる白色素胞(はくしきそほう)を持っていることも知られています。
このようにイカは、無数の色素胞を伸縮させたり、虹色素胞や白色素胞などを組み合わせることで、体色を変えたり模様を作り出しているのです。
発光はコミュニケーションにも使われている?
ホタルイカなどの一部のイカでは、体を発光させることがあります。
身を守るために発光すると考えられてきましたが、近年の研究ではコミュニケーションにも利用しているのではないかと考えられています。
ホタルイカは発光器官をもっており、発光物質(ルシフェリン)に発光酵素(ルシフェラーゼ)が作用することによって青白い光を放ちます。
ホタルイカ(提供:PhotoAC)従来はこの発光について、海面から差し込む光によってできる自分自身の影を打ち消すことで身を守る「カウンターイルミネーション」に利用しているのではないかと考えられてきました。
一方で、近年の研究では身を守る以外にも、仲間同士のコミュニケーションや求愛のシグナルとしても利用されている可能性が出てきました。
この仕組みはまだ謎が多く、研究が続けられているため今後ホタルイカの光のメッセージがさらに明らかになるかもしれません。
イカは体の模様でもコミュニケーションをとっている?
イカは皮膚の模様を変化させることでコミュニケーションをとっていると考えられています。
アメリカオオアカイカ Dosidicus gigas では、ほかの個体がいる場合に体の模様を高速で点滅させるフラッシングを行うことが知られていました。近年の研究ではフラッシングによって仲間に情報を伝えている可能性が報告されています。
コブシメのカップル。手前がメス、奥がオス(提供:PhotoAC)さらに、2026年には東京大学などの研究チームにより、エゾハリイカのオスが人間の目には見えない偏光を利用して、強いコントラストのある模様を作りメスに求愛のシグナルを送っていることが確認されました。
このように、一部のイカではフラッシングや偏光を利用して体の模様を変えている様子が報告されており、模様を変えることでコミュニケーションをとっていることがうかがえます。
水族館で実際にイカを観察してみよう
イカが実際にどのような変化を見せてくれるのか、気になるという人もいるのではないでしょうか。
そんなときはぜひ、水族館に足を運びイカを観察してみてください。イカは餌を見つけたときや周囲を警戒したとき、背景の色が変わったときなどに体色や模様が変化することがあります。
また、泳ぐときのヒレや腕の動きにも注目すると、仲間へ何らかのシグナルを送っている場面に出会えるかもしれません。
これまでとは少し違った視点で観察すると、イカたちのコミュニケーションが身近に感じられるだけでなく、新たな発見につながるかもしれませんよ。
参考文献・参考URL
・Cephalopod dynamic camouflage
URL:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0960982207011384
・Smithsonian Ocean How Squid Change Color
URL:https://ocean.si.edu/ocean-life/invertebrates/how-octopuses-and-squids-change-color
・ほたるいかミュージアム
URL:https://hotaruikamuseum.com/museum/hotaruika
・Synchronous and asynchronous counterillumination by three types of photophores in the firefly squid, Watasenia scintillans
URL:https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2025.10.29.685447v1
・Squid flicker and flash for communication and camouflage
URL:https://journals.biologists.com/jeb/article/218/2/161/14257/Squid-flicker-and-flash-for-communication-and
・透明な体が“派手”を生み出す ―体の透過光を利用したエゾハリイカの求愛ディスプレイ―
URL:https://www.aori.u-tokyo.ac.jp/research/news/2026/20260127.html