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<秋の味覚・さんま>が値上がりする理由 “庶民の魚”に起きている変化とは?

ここ最近、スーパーの鮮魚コーナーで秋刀魚(サンマ)を手に取ろうとしたものの、値札を見て止めたという経験のある人は少なくないはずです。

秋の味覚として親しまれてきたサンマが、いつの間にか手の届きにくい存在になりました。かつて1尾100円前後だった“庶民の魚”に何が起きているのでしょうか。

水産研究・教育機構(FRA)や水産庁、Umios(ウミオス=旧マルハニチロ)の公式発表をもとに、値上がりの背景にある不漁の理由と、「なぜ養殖しないのか」という疑問への答えをまとめました。

かつての庶民の魚が高くなった背景

天然サンマの水揚量は、2008年に記録した35.5万トンをピークに減少が続いています。

国立研究開発法人水産研究・教育機構の公式発表によると、2014年の約22万トンから2025年には約6万トンへと、10年余りでおよそ4分の1以下まで落ち込みました。

水揚げ風景のイメージ(提供:PhotoAC)

水揚量の減少とともに価格も変化しており、ウミオスの公式発表では、卸売価格が2008年の65円/kgから2021年には621円/kgと10倍近くまで高騰したことが示されています。

不漁の主な原因は「気候変動」と「漁場の遠隔化」

水産研究・教育機構は、サンマの水揚量減少の要因として「気候変動によるサンマ資源の減少及び回遊経路の変化に伴う漁場の遠隔化」を挙げています。

日本近海のサンマ漁場に最も大きな影響を与えるのが、親潮の流路と強さです。

同機構の調査・研究によれば、夏から秋にかけての親潮の流れは1990年代後半をピークに徐々に弱くなり、2010年代中盤には道東沖まで届かないほど弱まりました。

親潮は冷たく栄養豊富な水を運び、サンマの餌となる動物プランクトンをもたらします。一方、親潮が弱まると日本近海のエサ環境が悪化し、サンマが沖合の公海に移動しやすくなります。

サンマ(提供:PhotoAC)

また、同機構は2023年の発表で「日本におけるサンマの漁獲量の減少は、2010年に突然起きた分布の沖合化が契機であったと考えられる」と整理しました。

漁場が遠くなれば、漁船の燃油費と往復時間が増え、水揚量はさらに減少する悪循環につながります。

水産庁と水産研究・教育機構は毎年、道東から常磐海域の長期漁海況予報を発表しており、近年の予報は継続して「低水準」の見通しが続いているのです。

サンマの養殖がなかなか進まなかった理由

「不漁が続くのであれば、養殖すればよいのでは」と思う人もいるかもしれません。しかしサンマは、これまで養殖が技術的に極めて難しい魚として知られてきました。

ウミオスの公式発表では、その理由が次のように説明されています。

「ウロコが剥がれやすく網での採集ができない上、神経質なためわずかな刺激で水槽の壁に衝突し死んでしまうことから、長期飼育は難しい」

養殖のイメージ(提供:PhotoAC)

外洋を高速で泳ぎ続ける強い回遊性も、狭い水槽での飼育を難しくしている要因のひとつです。

また、サンマは胃を持たない魚で消化・吸収が非常に速いため、エサが切れるとすぐに痩せてしまいます。適水温も低く、陸上水槽での飼育には冷却設備のコストがかかります。

こうした特性が重なり、長らく商業養殖の実現は遠いものとされてきました。

試験養殖の成功と今後への期待

そうした中、状況が動いたのは2025年のことです。

水産大手のウミオス(当時マルハニチロ)は同年9月9日、“アクアマリンふくしま”の名でも知られる「ふくしま海洋科学館」(福島県いわき市)と協力し、事業レベルに準じる飼育密度でのサンマ試験養殖に成功したと発表しました。

同社グループの養殖技術開発センター(鹿児島県南さつま市)が、2023年10月に同館からサンマ卵の提供を受けて研究を開始。クロマグロやブリ、カンパチ、マダイの人工種苗生産で長年培ってきた技術知見を活かし、サンマ養殖に適した餌や飼育設備の検討を重ねた結果、2024年6月には出荷目安の100グラムを超えるサイズへの成長に成功しました。

同年8月には人工授精にも成功しており、事業化に向けた技術の蓄積が進んでいます。

商業規模の大量出荷には引き続き課題が残りますが、水揚量の低下による価格上昇が養殖の経済的な意義を高めており、今後の展開が注目されます。

サンマの値上がりは複合的な問題が背景に

サンマの値上がりは、「乱獲」という一言で語れる話ではありません。

親潮の弱まりと気候変動による漁場の沖合化、それに伴う漁業コストの増加、さらに養殖が難しい生態的特性——これらの複合的な要因が重なっています。

それでも秋になるとサンマを求める声は絶えません。

試験養殖の成功を足がかりに技術開発が続けられているなか、不漁が続くサンマの状況が少しずつ変わっていくことを期待したいと思います。

(サカナトライター:原田大樹)

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