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<スズキ>の成魚はオスとメスで河川利用が異なる? 1800個体超の調査で判明した「強い固執性」

釣りの対象魚としても人気の魚・スズキ。釣り人には「シーバス」とも呼ばれています。

同種は海で産卵しますが、一部の幼魚や稚魚は汽水域や淡水域に生息。また、成魚になってから河川へ入る個体もい

これまで、河川で採集されるスズキの成魚は、メスが多いことが断片的に知られていますが、こうした雌雄差がどのような過程で生じるのかはわかっていませんでした。

こうした中で、京都大学フィールド科学教育研究センターの山下洋名誉教授らの研究グループは、日本各地のスズキを調べ、耳石から塩分環境履歴を復元しました。

この研究成果は『Journal of Fish Biology』に掲載されています(論文タイトル:Sex-dependent divergence in river use following maturation in Japanese seabass Lateolabrax japonicus revealed by otolith Sr:Ca chronologies)。

比較的安定した漁獲量を保つスズキ

スズキ Lateolabrax japonicus は日本の沿岸に広く分布する魚で、漁業上重要な種であるほか、釣りの対象魚としても人気の種です。

また、日本沿岸における漁業全体の漁獲量が長期的に減少する一方で、スズキの漁獲量は、過去50年間で概ね5千~1万トンと比較的安定しているといいます。

スズキ(提供:PhotoAC)

この安定した漁獲量に関係しているとされるのが、同じ個体群の中で異なる環境を利用する個体が共存する「部分回遊」です。

河川に入る個体もいれば一生を海で過ごす個体も

スズキは海で産卵する海産魚ですが、一部の幼魚・稚魚は河川に入り、汽水域や淡水域を生育場として利用します。さらに、成魚になってから河川へ入る個体もいれば、一生を海で過ごす個体も存在するようです。

これまで、河川で採集されるスズキ成魚は、メスが多いことが断片的に知られています。しかし、こうした雌雄差が生まれた時からあるのか、或いは成長・成熟の過程で生じるのかは謎に包まれていました。

日本各地1,847個体のスズキを調査

京都大学フィールド科学教育研究センター・山下名誉教授らの研究グループが調査対象にしたのは、宮城県仙台湾、京都府丹後海、大分県別府湾とそれぞれに流入する河川のスズキ1,847個体です。

研究グループはスズキの性比が調べたほか、206個体について耳石のSr:Ca比を中心から外縁まで測定し、海水・汽水・淡水どの環境を利用したのか推定しました。

河川で採集された成魚はほとんどメス

研究の結果、河川で採集されたスズキで性別を判定できた199個体のうち、182個体がメスであることが明らかに。

一方、海で採集された個体では有意な性比の偏りは確認されていません。これにより、河川利用が雌雄で大きく異なることが示されました。

幼魚・稚魚期で河川利用率に雌雄差はほぼない

すべてのスギキ成魚が海に滞在する「産卵期の海」で採集された82個体の履歴を比較した結果では、0歳時の河川利用率はメスで54.4パーセント、オアスで51.9パーセントと雌雄差はほとんどないことがわかっています。

スズキ(提供:PhotoAC)

また、2歳では雌雄ともに河川利用率が50パーセント前後と、成魚で見られる強い雌雄差が、幼魚・稚魚の時から固定されている訳ではないことが判明しました。

スズキは一般的に2~3歳で成熟するとされており、この成熟時期とスズキの河川利用率の低下がほぼ一致していることが、研究によって明らかになっています。

5歳時における河川利用率はメスで33.3パーセント、オスで6.7パーセント、雌雄合わせて24.4パーセントであり、成熟後の個体は多くが海で生活し、一部のメスが河川の利用を続けることが示されたのです。

メスは採餌と成長のために河川を利用

一方、河川を利用する成魚は周年河川に留まる訳ではないといいます。

スズキは秋から冬に河川を下り、12~2月を中心に産卵のため、湾口から沖合で産卵します。その後、春以降に再び河川へ戻る個体がいるのです。

そのため、メスは採餌・成長のために河川を利用していると考えれています。

繰り返し河川を利用する個体も

0歳で河川を利用した個体のうち96パーセントが、その後も河川を利用しており、河川を利用した経験がその後の回遊に引き継がれていることがわかっています。

また、生涯に一度でも河川を利用した個体のうち43パーセントが、淡水域まで遡上していることが判明。3歳以上の9個体では毎年淡水利用が確認されたほか、9歳のメスでは生涯にわたり毎年、淡水域へ回遊する例も確認されています。

これらの結果は、同じ環境を繰り返し利用する強い固執性を示すものです。

河川の豊富な餌で大型化し卵を多く生産

ではなぜ、このように一部のメスだけが河川を利用するのでしょうか。

まず魚類では、オスとメスで繁殖に必要なエネルギー量が異なります。具体的には、メスは卵巣を発達させ多くの卵を産むために膨大なエネルギーが必要です。

また、一般に大きなメスほど多くの卵を生産することができるため、大型化することは繁殖の成功に繋がります。対して、オスでは精巣が比較的小さくても繁殖へ貢献できることから、メスと比較して大型化にエネルギーを使う必要がないと考えられています。

こうしたことから、一部のスズキのメスが河川へ入る行動は、豊富な餌を利用し大型化することで多くの卵を生産する採餌戦略として進化してきた可能性が示されました。

高度経済成長期以前の日本においては、現在の河川よりも生産力がはるかに高かったとされ、大型化する必要のあるメスにとって河川を利用するメリットが大きかったと推察されています。

海だけでなく河川環境の保全も重要

今回の研究によって、耳石から塩分環境履歴が復元され、スズキにおける河川の利用状況が明らかになりました。

近年、河川の生産力が低下する中、環境の劣化がスズキの河川回遊生態に影響を及ぼしている可能性もあるとか。

研究グループは、海の魚を守るためには、海だけでなくそこに繋がる河川環境を含めた保全・管理が重要としています。

(サカナト編集部)

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サカナト編集部

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