秋は一年の中でも、特に色々な魚が釣れる季節です。
とくに人気の対象魚がシロギス。この魚は防波堤や砂浜から、あるいは船から狙うのですが、さまざまなゲストもシロギス釣りの魅力です。
そんなゲストのひとつに、ネズッポ科の魚がいます。釣り人はよく「めごち」と呼んでいる魚です。しかし、標準和名でメゴチと呼ばれる魚は、ネズッポ科の魚とは全く異なる魚なのです。いったい何者なのでしょうか。
なお、この記事では、種の標準和名をカタカナ、そうでないものをひらがな表記しています。
ネズッポ科の魚
人気のある秋の釣り魚の一つとして、「シロギス」があげられます。
なぜこのシロギス釣りが人気なのかといえば、竿で仕掛けを飛ばす爽快感、魚体がパールピンクで美しく、大きいものはそこそこ強い引きをし、そして美味しい、見てよし、釣ってよし、食べてよしということがあるのでしょう。
しかし、筆者はこの釣りのもう一つの魅力に「多彩なゲスト」というものを付け加えたいと思います。
ネズッポ科の魚(提供:PhotoAC)その中でもスズキ目・ネズッポ亜目・ネズッポ科(分類は中坊編,2013による)の魚は頻繁にあたりをくれるゲストといえるでしょう。
ネズッポ科の中でも、科の標準和名にもなっているネズッポ属の魚は琉球列島をのぞく日本各地沿岸に生息しており、シロギスを狙って投げ釣りをしている方なら必ず一度は出会ったことがあるだろう、そんな魚です。
よく知られているのはネズミゴチ
ネズッポ科の中でもとくによく知られているのが、20センチほどの大きさになるネズミゴチRepomucenus curvicornis (Valenciennes, 1837)で、おかっぱりからのシロギス釣りでも、ボートや船での釣りでもよく見られる種です。
国内における分布域は広く、北海道南部から、南は九州南岸までその姿を見ることができます。
海外においては中国と朝鮮半島など東アジアにのみ分布しているものと考えられています。本種はもともとCallionymus curvicornisとしてインド洋のレユニオン産のものをもとに学名が付けられたとされますが、その産地は誤りのようです。
三河湾産のネズミゴチ(雄)(提供:椎名まさと)また属学名も、Callionymusという属学名が現在も使用されていることがあるようですが、この属は地中海や大西洋に見られるものとされています。
ネズッポ科の魚はしばしば「めごち」と称されます。とくに関東においては江戸前の天ぷらのネタとして、「めごちの天ぷら」は欠かせません。
しかし、標準和名で「メゴチ」というのは、実は全く異なる魚のことを指すのです。
これが「真のメゴチ」だっ!
標準和名のメゴチInsidiator meerdervootii (Bleeker, 1860)は、ネズッポ科とはまったく異なる種で、中坊編(2013)の分類に従えばスズキ目・カサゴ亜目・コチ科・メゴチ属の魚です。
メゴチ(提供:椎名まさと)食用魚として知られ、釣りの対象魚としても有名な、同じくコチ科のマゴチと比べると小型であり、大きくても20センチほどです。沿岸の砂泥底に生息しており、船からの釣りで釣れることもありますが、多くは底曳網漁業により漁獲されます。
分布域は広く、青森県、秋田県および茨城県から九州南部までの各地沿岸に生息しています。海外の分布は朝鮮半島や台湾、中国までで、温帯性の魚といえそうです。
メゴチの特徴(提供:椎名まさと)メゴチが背鰭が2基、第1背鰭後方に黒色域があること、体側に小斑点が散らばるなどの特徴があります。しかし、そのほかにも様々な特徴があり、ほかの小型コチ科魚類との見分けは簡単ではありません。
ネズッポ科魚類とメゴチの見分け方
背面から見るとどちらも平べったくてよく似たもの同士、なのですが、先述したように、実際にはネズッポ科とコチ科はそれぞれ異なったグループなのです。
メゴチの口(提供:椎名まさと)メゴチを含むコチ科魚類は口が大きくて上向きにつき、下顎は上顎よりもよく突出しています。大きく口を開き小魚や甲殻類などを捕食します。
その一方で、ネズッポ科魚類は口が小さく、餌としているものもゴカイ類などの底生動物が中心です。
ネズッポ科魚類の口(提供:PhotoAC)ほかの大きな特徴としては、体表の鱗の有無もあげられます。
コチ科メゴチの体表は鱗に覆われる(提供:椎名まさと)メゴチは小さいものの明瞭な鱗を持っています。その一方で、ネズッポ科の魚は(少なくとも外見上)鱗は見られません。
ネズッポ科トビヌメリの体表。少なくとも外見上鱗は見られない(提供:椎名まさと)またネズッポ科の魚は体表が粘液でおおわれることでも知られており、「ヌメリゴチ」や「トビヌメリ」といった標準和名のほかに、「ねばごち」「なめらごち」「よだれごち」など、その粘液にちなむ地方名も多く知られています。
多くの場合、これらはネズッポ属魚類の総称となっています。
ヤリヌメリ(ネズッポ科)とその前鰓蓋骨棘(提供:椎名まさと)そして、ネズッポ科魚類では多くの種において、鰓蓋付近に大きな棘(前鰓蓋骨棘:ぜんさいがいこつきょく)が見られることも特徴の一つです。この棘はネズッポ科の魚ではよく発達しており、うかつに頭部に触ると刺されることがあるので注意が必要です。
針をはずすときなどはできるだけ素手で触らないようにし、専用の道具「めごちばさみ」などを使うとよいでしょう。この仲間はシロギス狙いで釣りをしているとゲストとして高い確率で釣れるため、必需品ともいえます。
一方で、コチ科のメゴチも頭部に棘を持つほか、眼の下には眼下骨隆起線(がんかこつ りゅうきせん)という骨の隆起があります。
メゴチ(コチ科)の頭部(提供:椎名まさと)この眼下骨隆起線の棘の形状はコチ科の種により異なっており、同定形質となりますが、メゴチでは鋸歯状の部分と、強い棘の部分で構成されています。これもうかつに触ると刺されて痛むことがありますので、注意して扱いましょう。
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