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“水族館で泳ぐ魚”はどこから水槽にやってくる? <海の手配師・石垣幸二さん>に話を聞いてみた

大水槽を大きな群れで泳ぐイワシや、水槽の底で静かにたたずむ深海魚。水族館に遊びに行くと、水槽で泳ぐ魚たちの姿に夢中になります。

しかし、ふと考えてみると不思議です。海にいる魚たちは、どのようにして水族館の水槽までやってくるのでしょうか。

その裏側には、普段あまり表に出ることのない仕事があります。

静岡県沼津市を拠点に、海洋生物の採集・輸送・納入などを手がける有限会社ブルーコーナー。代表取締役社長の石垣幸二さんは、“海の手配師”として国内外の水族館や研究機関に海の生き物を届けています。

石垣さんの仕事は、国内外の海へ足を運び、水族館や研究施設などが求める生き物を調達して届けることです。しかし、その役割は単なる「買い付け」や「輸送業者」にとどまりません。

今回、石垣さんにブルーコーナーの施設を案内してもらいながら、水族館で見られる魚たちが「海から水族館にたどり着くまで」の道のりをお聞きしました。

海と人をつなぐ「海の手配師」の役割

━━海の手配師として、自身にはどのような役割があると考えていますか?
海と人をつなぐ役割だと思います。生き物を安定した状態で水族館に届けるのはもちろん、捕獲・採集・研究・調査した情報をきちんと伝えることも大切な役割です。

ブルーコーナー内に設置された水槽(撮影:taku)

海と水槽の環境は異なるため、生き物の情報を正確に伝えないと安定した飼育・展示につながりません。

水族館にたどり着いた生き物が落ち着いて過ごせるように、漁師さんの思いや知識を含めて情報共有しています。

━━当たり前のように水族館で魚の姿を見ていますが、よく考えてみると難しいことを実現していますよね。
(水族館の)お客さまのなかには、未就学児や車椅子で移動されている方もいます。みんなが水中マスクをつけて潜りながら、海の中を見られるわけではありません。

誰でも気軽で安全に海の世界を楽しめる場所であることが、水族館にとって重要な役割なのだろうと思います。

本来であれば難しいであろう水槽展示を、できるだけ自然に見える形で実現する。海で暮らしていたときのように、元気よく泳ぐ姿を水族館で見られるようにする。

身近な海の環境や、そこにいる小さな生き物たちを伝える水族館の姿勢に、私自身も影響を受けています。

生き物の採集は一筋縄ではいかない

━━生き物たちは、どのようにして生きたまま海から水族館に届けられるのですか?
まずは魚を採るための「権利の問題」を解決する必要があります。ライセンスがないと魚を採れないため、権利を持っている人が同行するんです。

ただし、現地で一緒に採集しても、生き物をそのまま持ち帰るわけではありません。権利を持つ漁師や採集者から、きちんと買い取ることで、ようやく持ち帰れるわけです。

ブルーコーナーにあるヘコアユの水槽(撮影:taku)

━━採集する前段階から解決しないといけない課題がたくさんあるんですね。
とくに東南アジアは、流通経路が不透明なことも多々あります。とにかく自分で現地に足を運び、漁師はもちろん、ときには子どもたちとも直接交渉するんですよ。

水族館や研究機関からの依頼に応えるため、一般的な流通ルートに乗っていない生き物を探すこともあります。

ペットのように紐をつけて散歩させていたカニを子どもたちから買い取ったり、シーフードレストランの生け簀から買い付けたりすることもあります。

海から命をつなぐ輸送の裏側

━━生き物を輸送するときに気をつけていることはありますか?
採集した場所から水族館までの経路でかかわる全ての人が、同じ目的意識を持つことが重要です。

例えば、深海生物を送る場合は、保管する場所や時間、温度などの管理が欠かせません。

完璧にパッキングをしても、移動に想定外の時間がかかったり、高温の場所に放置されたりしたら大問題です。

パッキングの様子(撮影:taku)

海外の空港には荷物を放り投げる人もいます。だから、通関業者や航空会社などの全方面に連絡を入れて、生き物が安全かつ確実に届くように細心の注意を払っています。

━━たしかに、生き物だけでなく「人」にも気をつかわないといけませんね………。
国内の施設に届けるときも、基本的には海外と同じように袋と箱を使います。ただし、すべての生き物がパッキングして送れるわけではありません。

例えば、大量のイワシを届けるときには、我々が大型トラックを運転して送ります。輸送中の揺れで生き物にストレスをかけないこと、到着後に受け取り側がすぐに対応できる状態を整えることも大切です。

採集した海と輸送先の水槽は、水温が一致しているとは限りません。急激に水温が変化すると元気な姿で生き物を展示できないので、輸送中に水温をコントロールできるように現地で受け取る水族館とも事前に連絡を取り合っています。

クリスマス島「アカガニ」輸送劇

━━過去の対応で印象に残っている生き物はありますか?
いまでも悪夢を見るほど印象に残っているのは、アカガニですね。オーストラリアにあるクリスマス島にしかいないカニで、とある水族館から依頼されて苦労して許可を取りました。

オーストラリアの海 イメージ(提供:PhotoAC

クリスマス島にいるカニなので、クリスマスに展示したいわけです。バスやらグッズやらで、展示先の水族館は数千万円のお金をかけて準備していました。初めて調達する生き物だったので、失敗すれば「会社が飛ぶのではないか」と想像してしまうほどのプレッシャーです。

ところが、いざ空港にたどり着くと、検疫のために「24時間立ち入るな」と。丸1日も足止めを食らい、アカガニは手の届かない場所でほったらかしです。

その日からカニが全滅してしまう悪夢を見るほど、生きた心地がしませんでした。

━━生き物の管理よりも、関わる人とのやりとりのほうが何倍も難しそうですね。
そうですね。とくに海外を経由する場合は、検疫や税関の手続きが大変です。

途中経路に一箇所でも問題があれば、生き物が無事に届かない可能性もあります。

結果的にアカガニは無事に生きたまま届けられたのですが、その後も2年くらいフラッシュバックのように悪夢を見続けました。

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水の中の世界が好き

愛知県在住。いきもの好きなライター。水族館に行って写真を撮ったりボーっとしたりするのが趣味。NAUI アドバンスダイバーです。

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