沖縄美ら海水族館は、飼育魚類に寄生する単生類(たんせいるい)への新たな治療法を開発したと発表しました。
同館が進めてきた「サメの人工子宮」研究の過程で開発した人工羊水技術を応用したもので、淡水浴による治療が難しい魚類にも適用できる寄生虫駆除法として特許を取得しています。
研究成果の詳細は2025年に学術誌「MethodsX」に掲載されました(論文タイトル:Urea water bath: A novel treatment for monogenean parasite infections in hagfish)。
淡水浴が使えない魚類への課題
単生類とは、魚類の体表やえらに寄生する数ミリ程度の寄生虫のことです。
大量に寄生すると魚の健康状態に悪影響を及ぼすことが知られており、水族館では一般的に淡水浴による駆除が行われています。
しかし、ヌタウナギの仲間などの無顎類やサメ・エイの仲間である板鰓類(ばんさいるい)は淡水環境への耐性が低く、淡水浴をすることができません。
ヌタウナギ(提供:PhotoAC)そのため、多様な魚類を飼育する施設では、これらの魚種にも対応できる安全な治療法の開発が課題となっていました。
サメの人工羊水研究から着想
沖縄美ら海水族館では、サメの人工子宮の研究の一環として、2021年にサメの胎仔を母体外で育成するための人工羊水を開発。この人工羊水は、淡水・海水・尿素を一定の割合で混合し、サメの血漿に近い化学的特性を持つ溶液です。
その後の研究により、この溶液の組成が寄生性単生類の駆除にも有効である可能性が示されたことから、研究チームは淡水・海水・尿素の配合比率を調整しながら検証を進めました。
表皮寄生性単生類の駆除方法(提供:PR TIMES)その結果、無顎類や板鰓類への安全性を確保しつつ、効率的に単生類を駆除できる「尿素水」の開発に成功したとしています。
実際の治療にも活用へ
新たな駆除法では、海水・淡水・尿素を混合した尿素水に寄生虫感染した魚を約5分間にわたり浸すことで、体表に寄生した単生類を除去します。
この技術は「表皮寄生性単生類の駆除方法」として特許を取得していて、すでにムラサキヌタウナギの治療に活用されているとのことです。
今回の技術開発は、サメの繁殖研究から生まれた知見が飼育魚類の健康管理へ応用された事例として注目を集めており、水族館における生物福祉の向上や飼育技術の発展につながる研究成果として期待されます。
(サカナト編集部)