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コラム

<絵本作家・こた>の水族館の楽しみ方 『こたじま水族館』をご案内【連載:わたしと水族館】

水族館は、不思議な場所です。同じ水槽を見ていても、そこに映るものは人それぞれ。魚の姿に心を奪われる人もいれば、静かな時間に安らぎを感じる人もいます。研究の対象として向き合う人、仕事の現場として日々関わる人にとっては、また違った景色が見えていることでしょう。連載「わたしと水族館」では、さまざまな立場の書き手のみなさんに、水族館にまつわるエッセイを寄せていただきます。今回は、絵本作家のこたさんにご寄稿いただきました。

「水族館」をテーマにした絵本を手がけている僕に、「水族館」をテーマに執筆してほしいという依頼が来た。

文章で水族館についてガッツリ語れる機会は初めてなので嬉しい。「おすすめの水族館10選!」「もしも自分が水族館を作るなら」「ローカル水族館はいいぞ」などなど──書きたいテーマは山ほど、いや海ほどある。

どのような切り口で水族館を語ろうかあれこれ考えたが、ここはシンプルに僕が普段どのように水族館という施設を楽しんでいるか、入口から出口まで僕の行動を覗き見できるような形で紹介してみることにした。

読者の皆さんにはこれから一緒に架空の水族館『こたじま水族館』を1日満喫して帰ってもらおうと思う。

わくわく科学ずかん 古生代水族館、大泉書店(左)、わくわく科学ずかん 中生代水族館、大泉書店(中央)、サメくらべ図鑑、 扶桑社(右)(提供:こた)

海辺が気持ちいい!こたじま水族館に到着

今日は快晴。背景には真っ青な水平線が永遠に広がっている。潮の匂いが風に乗って駐車場までやって来ている。水族館はほとんどのエリアが屋内だが晴れている日に来るのが清々しくて好きだ。

まずは大きくガッシリとした水族館の外観、入口前広場の大きなイルカのモニュメント、そして『こたじま水族館』の名前と日付が書かれたアシカの顔出しパネルと一緒にパシャリ。ここが水族館のワクワクのピークといっても過言ではないほど胸の高鳴りが止まらない。

この丁寧なお出迎えが水族館へ来たんだという喜びをよりいっそう掻き立て、僕の冒険心をくすぐる。

いざ水族館の中へ……とその前にチケットを買わなければならない。水族館のチケットは生き物たちの写真やイラストがプリントされていることが多い。これはランダムなのでおみくじのようで楽しい。

クマノミか、ウミガメか、はたまたシロクマか…おぉシュモクザメだ! 僕は無類のサメ好きなので推しのチケットに大興奮。

最近は電子チケットが多いが、記念品として持って帰ることができるこの紙のチケットが好きだ。チケットもゲットできたことだし、これで堂々と水族館の中へと入れる。

最初のエリアでは近海の魚たちがお出迎え

水族館のエリアの中でもこの入ってすぐのエリアは特に個性が出る場所だと思う。

いきなりメインとなるような生き物をドーンと巨大水槽で展示している水族館もあれば、最初は小型の生き物やキャッチーな生き物を展示し徐々にメイン水槽へと導いていくタイプの水族館、浅瀬からはじまり深海へ水深に沿って展示している水族館などもある。

こたじま水族館は近海である『こた内海』で生息している生き物たちが出迎えてくれた。磯遊びで見つけたことのある生き物や、港の市場でよく見る魚が展示されている。

このように地域にゆかりのある生き物を展示してくれる水族館は、テーマパークとしての水族館ではなく、自然との繋がりを身近に感じさせてくれる「学びの館」としても僕たちの心を惹きつけてくれるのだ。

「海の集合住宅」のような水槽たち

順路に沿って小さな水槽がたくさん並んでいるので順番に見ていこう。

小さいと言っても家で金魚を飼っていた水槽と比べれば何倍ものサイズだ。チンアナゴやトラフカラッパ、ゴンズイやハコフグなど小さくて人気のある生き物たちがたくさん展示されている。このエリアは海の集合住宅のようでかわいい。

生き物だけ眺めてどんどん進んでいくのも良いが、生き物の解説もできれば読んでみてほしい。生息域や特徴、分類や学名なども書かれている。水族館は図鑑の中に飛び込んだような施設だ。

比較的メジャーな生き物が展示されていることが多いが、たまにマニアックな生き物をのっけからガンガン登場させる水族館がある。

なんてこった…オオメンダコもオオグチボヤもいるじゃないか……! ここは深海生物エリアなのでフラッシュを焚かないようにパシャリ。

やはりレアな生き物が展示されていると生き物好きとしてはテンションが上がる。

中型・大型水槽エリアは大迫力!

小型・中型・大型と言っているのは僕が勝手に分けているだけで、正直水族館の水槽は全部デカい。だいたいの水族館にはメインとなる一番デカい超大型水槽が1つあって、あとは小型〜大型の水槽がたくさんあるといった感じだ。

ここではナポレオンフィッシュやクマノミ、ナンヨウハギなどの熱帯魚がサンゴの上を泳ぎ回る色鮮やかな水槽、ピラルクーやアロワナ、コロソマなど淡水の巨大魚がゆったりと泳ぐアマゾン水槽など、ジャンルに分かれて様々な展示がされている。

そしてなんと言ってもシロワニやシュモクザメなど大型のサメがいる水槽を目にしたものなら、僕はその場から動けなくなってしまうのだ。

シロワニ(提供:こた)

こたじま水族館では特にサメの展示に力を入れているようで、水族館では珍しいオオメジロザメや飼育が難しいイタチザメまで展示している。今日は1人で来ていてよかった。家族や友達と来ていたものなら置いてきぼりにされているところだった。

僕は普段から海の生き物をテーマに作品を作ることが多いので、水族館は資料とも言える。グングンと潜水艦のように泳ぐサメから目を離さずじっくりと観察をする。

絵を描くことにおいて、対象物を観察することはとても大事なことだ。図鑑やネットでリサーチをするよりも、実際に動いている様子を生で観察することが創作のヒントに繋がることも多い。

超大型水槽の前でゆっくり過ごす

でっけ〜〜!!!

思わず叫びたくなってしまうほどの巨大水槽が目の前に現れた。水族館のメインとも言えるこの超大型水槽には大小様々な生き物たちがくらしている。水槽の上の方を泳いでいるイワシの群れ、真ん中あたりを優雅に泳いでいるナンヨウマンタ、底でぺた〜としているトラフザメ、岩陰に隠れているウツボ──隅から隅までじっくりと目を通す。

こういった巨大な水槽の前にはベンチが置かれていることも多く、ここに座ってぼーっと時間を忘れて眺めるのがなんとも贅沢だ。

タイミングが良いと飼育員さんによるエサやりや掃除の様子も見ることができる。幼い頃の将来の夢は水族館の飼育員で、今でも憧れの仕事だ。

エサをまいた途端どこからともなく魚たちが集まってくる様子が面白い。夢中で群がる魚たちがなかなかゲット出来ないのに、こぼれて下へ落ちていったエサを底でぺた〜としている魚たちが労力0でゲットしているのもまた面白い。

こたじま水族館の超大型水槽は、水槽のまわりをぐるぐると囲いながら順路が伸びているので色々な角度、視点から生き物を眺められるようになっている。上の方に行けばイワシの群れと同じ目線で観察ができるし、平べったいナンヨウマンタは上から見た方が形がはっきりと分かって良い。

魚眼レンズのように水中が見れる丸い覗き穴のような窓もある。この窓から水槽の中を覗くとまるで自分が潜水艦の中にいるかのような気分が味わえる。じーっと眺めているとヌーッと巨大なクエがこちらを覗いてきてビックリしてしまった。魚たちを覗く時、魚たちもまたこちらを覗いているのだ。

水槽を大きく貫いた水中トンネルをくぐって順路は続いている。この水中トンネルもまたワクワクするスポットだ。周りを魚たちに囲まれ、本当に海へ潜り込んだかのような気持ちにさせられる。特に大きな魚が頭上を通ったときは思わず頭を下げてしまいそうになるほど臨場感に溢れている。

トンネルにペッタリ張り付いているコバンザメを横目に、次のエリアへと進んでいく。

自然が美しい淡水魚・両生類エリア

なんだか明るくなったと思ったら、大きな窓から光が差し込んできている。薄暗い海の中から、だいぶ地上へと上がってきたようだ。耳を済ますと滝のような音も聞こえてくる。

ここは淡水魚や両生類を展示しているエリアだ。

幼い頃、海よりも川の方が身近だった僕にとってこのエリアはたまらない。こたじま水族館は実際の環境を忠実に再現することにこだわりがあるようで、苔むした岩や水草、小さな滝などでリアルな自然環境を見事につくりあげている。

実際の環境に近づけているために、生き物たちが岩陰などに隠れてなかなか見つけられないことも多いのだが、これが探し絵のようでとても楽しい。

さてさて、サワガニはどこにいるかな……あっ、あの石の隙間に隠れているぞ! サンショウウオはどこだ…絶対この岩陰だろう……ほらやっぱり!

といった具合に、幼い頃から沢や川で遊び尽くしてきた僕はどこに生き物が隠れているか”匂い”で探し当てることが出来るようになった。

生き物好きは父の影響なのだが、父と一緒に水族館へ来ると2人でこの生き物探しをするのがいつものルーティンだ。

渓流魚を展示している水槽では川の流れを再現している。水流に逆らって泳ぐイワナやヤマメのなんと美しいこと。ここでも水槽にへばりついてしまい時間が経つのを忘れてしまう。

屋外には楽しい海獣エリア

最後の展示エリアに到着。海でくらす哺乳類『海獣』たちのエリアだ。生き物ヲタクにとってはここへ辿り着くまでがなかなかの道のりなのである。

海獣(かいじゅう)は怪獣(かいじゅう)と読みが同じなのがカッコいい。セイウチやシロクマなどの大型海獣から、ペンギンやラッコなどの小型海獣まで幅広く展示されている。

特にアイドル的な人気を誇っている海獣たちには熱狂的なファンも多く存在し、水族館へこの海獣目的で通い詰めている人も多い。

こたじま水族館では海獣たちとの触れ合いも充実していて、アザラシのエサやり体験やアシカと記念撮影などの体験が出来るようになっているようだ。こういった水族館ならではの体験はなるべく満喫して帰るようにしている。さっそくアザラシのエサやり体験をしてみよう。

エサはバケツに山盛りになっている魚で、1バケツ500円で買えるようになっている。エサを持って移動しているとアザラシたちが付いて来てかわいい。ひょいと投げると上手くキャッチする。

アザラシも魚が食べれるし、僕もエサをあげるのが楽しいWin-Winな体験だ。魚はあっという間になくなってしまう。中毒性がある体験なので貢ぎすぎないように注意が必要だ。

「まもなくイルカショーがはじまります」

そうだ水族館のビッグイベント、イルカショーを忘れていた。イルカショーは時間が決められているので、時間を把握しながら展示を見るのがオススメだが、いつも展示に夢中になってしまいすっかり忘れてしまうのだ。

イルカショーを見るたびに「イルカはなんて賢い生き物なんだ…」と思う。それと同時にトレーナーの飼育員さんもすごいなぁと思う。僕がイルカのトレーナーになったら果たしてイルカたちと心を通わせることが出来るのだろうか……。

あれこれ考えると純粋にショーを楽しめなくなるのでこれまた注意が必要だ。前から2番目の席でイルカたちから水しぶきをもらう、爽やかなクライマックスとなった。

最後はおみやげ屋さんで締めるのだ

水族館と言えば、やっぱり最後はおみやげ屋さんだ。

ぬいぐるみ、キーホルダー、お菓子がズラり。記念メダルもまた水族館お土産あるあるだ。

水族館へたくさん行っていると、どの水族館でも売っているものと、この水族館限定のものとで見分けがつくようになってくる。お財布と相談しながらお土産を選ぶが、僕は「限定」という言葉に弱いのであまり意味がない。

こたじま水族館限定シュモクザメ掃除機をゲットしウキウキで水族館を後にした。

水族館って、最高だ。

こた● 2001年新潟県生まれの絵本作家、イラストレーター。多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業。

海の生き物や緻密な空想都市のイラストを得意とする。著書に『古生代水族館』『中生代水族館』(大泉書店)、『たべもののまちABCity』(小学館集英社プロダクション)、『ユメノシティ』(フレーベル館)、『てつどうさがしえずかん』(KADOKAWA)、『サメくらべ図鑑』(扶桑社)、『はんこペタペタ つくろう!みんなのまち」(交通新聞社)がある。

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