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南の島で釣れたテンジクダイ科の魚<シボリ>を飼育してみた 日本産淡水魚にそっくり?

テンジクダイ科の魚に「シボリ」という魚がいます。

体は茶褐色で地味ですが、背鰭、腹鰭、臀鰭、そして尾鰭に縞模様が入り、鰓蓋に大きな円形斑があります。この円形斑はとある淡水魚を思い起こさせる、格好いい魚です。

筆者は2010年、南の島でこのシボリをはじめて釣ることができました。そんなシボリを家に持ち帰り、飼育してみました。

シボリが釣れた!

2010年5月、南の島の夜のこと。

防波堤からキビナゴを餌に、落とし込み釣りをしていると、ユニークな見た目の魚が釣れました。

見ると、重厚感があり格好いい魚。一見ハタ科の魚かと思い、糸を手に手繰りよせて確認してみると、珍しいシボリという魚でした。

夜釣れたシボリ(提供:椎名まさと)

このシボリもハタ科の魚と同じように肉食性が強く、餌のキビナゴを丸のみにしてしまうような魚です。

あまりにも格好いい魚なので、筆者はこのシボリに見とれていたのでした。

シボリの特徴

シボリはその強そうな見た目から想像できないのですが、ネンブツダイクロホシイシモチなどが含まれるテンジクダイ科・シボリ属の魚です。

この属の魚はインド-太平洋から8種が知られており、日本にはシボリ、ナハマトイシモチ、オビシボリ、シボリダマシといった種が生息。いずれもサンゴ礁域に分布する熱帯性の魚ですが、まれに和歌山県や四国の沿岸でも見つかることがあります。

シボリには横帯や点列状斑紋がない(提供:椎名まさと)

シボリも琉球列島や小笠原諸島のほか、愛媛県愛南町でも水中写真が撮影されています。

日本産シボリ属との識別

シボリは他の日本産シボリ属と、いくつかの特徴で見分けることができます。

まず体側に横帯や黒い点列状の斑紋がないことで、これでオビシボリやナハマトイシモチと識別が可能。ただし、ナハマトイシモチについては体側に点列が無い個体もいます。

シボリの胸鰭を除く各鰭には細かい模様が入る(提供:椎名まさと)

また、シボリは背鰭・臀鰭・腹鰭、そして尾鰭に点列がありますが、ナハマトイシモチでは通常、この点列が見られないので見分けるのは難しくないようです。

この細かい模様もシボリの特徴的な個性のひとつといえるでしょう。

シボリの鰓蓋に見られる黒色の円形斑(提供:椎名まさと)

そしてシボリダマシとは、鰓蓋部の大きな円形斑の有無で見分けることができます。シボリだけでなく、ナハマトイシモチやオビシボリもこの特徴をもちますが、シボリダマシではこの円形斑は見られません。

そしてこの円形斑があることにより、筆者はこの魚にほれてしまったともいえるでしょう。

あの魚にそっくり!

シボリの仲間の特徴は、なんといっても鰓蓋の円形斑。

一方、シボリ同様に鰓蓋の円形斑が目立ち、雰囲気がよく似た日本産淡水魚もいます。それが、筆者の大好きな魚のひとつ、オヤニラミです。

オヤニラミ(提供:椎名まさと)

オヤニラミの名前は鰓蓋の円形斑によるもので、子魚が親魚をにらんでいるようだから、というのがオヤニラミという標準和名の由来の一説としてあげられています。

また、オヤニラミの地方名(兵庫・岡山・福岡)にも「ヨツメ」のように、この鰓蓋の円形斑にちなんだものがあります。

オヤニラミ(提供:椎名まさと)

そして、シボリとオヤニラミが似ているのは鰓蓋の暗色斑だけではありません。

オヤニラミは両眼の間、背部に薄橙色線が入るのですが、シボリも状態により、両眼の間に広い薄橙色域が見られることがあります。

シボリ(提供:椎名まさと)

これはおそらく背景に溶け込もうとしているのだと思われます。

シボリもオヤニラミも獰猛な肉食性の魚で、餌になりそうな小魚を待ち伏せして捕食するのでしょう。

飼育の注意点もオヤニラミに似ている?

採集したシボリを持ち帰り、飼育してみることにしました。

シボリは全長10センチ近くになる魚ですが、余り泳がないため、60センチ水槽や、それより水量が小さい水槽でも飼育することができます。病気にもかかりにくく、飼育しやすい魚という印象です。

しかし、他の魚を食べてしまうという悪癖があります。またシボリよりもきつい性格をしている魚と飼育するといじめられて鰭をぼろぼろにされたり、拒食になったりすることも。

そのようなところまで、オヤニラミによく似ており、オヤニラミが好きな筆者にとって、とても飼育していて楽しい海水魚でした。

クモウツボと一緒に飼育してみた

ちなみに我が家の水槽では、45センチほどの水槽に、砂とサンゴ岩を入れ、クモウツボと一緒に飼育していました。

クモウツボと仲良し(提供:椎名まさと)

ウツボの仲間はたまにテンジクダイ科の魚を捕食することもありますが、シボリは体が大きく、クモウツボについてもウツボ科の魚としては温和なため、襲われたりすることはありませんでした。

そんなシボリですが、ある日水槽のモーターが止まってしまい、死んでしまいました。

またいつか飼育してみたい魚の一種なのですが、この魚を釣った南の島には以後も何度か訪れてはいるものの、結局シボリは2010年に1回採集しただけで、それ以降出会ってはいません。

また会いたい魚のひとつです。

飼うなら最後まで

シボリという魚はテンジクダイ科としては独特の見た目をした魚で、水槽に余裕があるならぜひ飼育してほしい魚ですが、ほかの魚を食べるという悪癖があったりするので、持ち帰って終生飼育できるかどうかよく考えましょう。

もちろん、飼育しきれないからといって海に放流するようなことがないようによろしくお願いいたします。

(サカナトライター:椎名まさと)

参考文献・参考URL

榮川省造. 1982. 新釈 魚名考.青銅企画出版.箕面.

Kuiter, R.H. and T. Kozawa. 2019. Cardinal fishes of the world. Aquatic Photographics, S eaford, Victoria. and Anthias(Nexus), Okazaki, Aichi.

中坊徹次編. 2013.日本産魚類検索 全種の同定 第三版.東海大学出版会.秦野.

高木基裕・平田智法・平田しおり・中田 親 編.2010.えひめ愛南お魚図鑑.創風社出版.松山.

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椎名まさと

魚類の採集も飼育も食することも大好きな30代。関東地方に居住していますが過去様々な場所に居住。特に好きな魚はウツボ科、カエルウオ族、ハゼ科、スズメダイ科、テンジクダイ科、ナマズ類。研究テーマは魚類耳石と底曳網漁業。

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