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20年前に出会った魚<コスジイシモチ>の話 テンジクダイ科の魚の飼育方法&失敗した理由を考えてみた

今から20年前。2006年4月、大型連休がはじまった直後のこと。

家族と愛媛県宇和島市の防波堤で釣りをしていた筆者は、しましまのきれいな魚を釣りました。テンジクダイ科のコスジイシモチという魚です。

魅力的な美しさをもち、魚も元気そうだったので、早速飼育してみることにしました。しかしながら、このコスジイシモチの飼育は残念ながら短期間に終わってしまったのです。

釣ったテンジクダイ科の魚をうまく飼育するにはどうすればよいのでしょうか。

テンジクダイ科の魚

テンジクダイ科はスズキ目とされたり、あるいはコモリウオ目ないし、近年はハゼ目に含まれたりしています。

いずれにせよ、スズキ系 Percomorphaのいちグループであることには変わりませんが、ハゼと近い関係にあるとは驚きです。

多くの種は小型であるため、食用にされるものはあまり多くはないのですが、種標準和名テンジクダイなどは瀬戸内地方では「ねぶと」と呼ばれ、食用となっています。

種標準和名テンジクダイはこんな魚(提供:椎名まさと)

また、西日本太平洋側の夜釣りでおなじみの魚であるクロホシイシモチネンブツダイオオスジイシモチといった種はあまり市場に出ることはないものの、これらも焼いて食べると意外にも美味しい魚たちです。

クロホシイシモチ(奥)と、コスジイシモチ(提供:椎名まさと)

基本的には背鰭が二つあり、やや長め~丸みをおびた体をしています。また体側には細い縦帯がある種が多いのですが、種によってその模様には違いが見られ、集めてみると面白いものです。

数あるテンジクダイ科の魚の中にはGlossamia属などのように淡水域に生息する種も知られていますが、多くの種は浅海からやや深い海底に生息している海水魚です。

コスジイシモチは私の海水魚飼育の原点

海水魚を飼育しているアクアリストがはじめて飼育した魚というのが、釣りで採集したテンジクダイ科の魚だったというケースは意外とよくあります。

何を隠そう、実は筆者も、釣れたコスジイシモチを飼育したことが海水魚飼育にのめりこむきっかけだったりするのです。

釣れたコスジイシモチを飼育する(提供:椎名まさと)

2006年の4月、この年から居住するようになった愛媛県の宇和島というところで、遊びに来ていた両親と釣りに行った際に釣れたコスジイシモチを持ち帰りしました。

オレンジ色の体に赤みを帯びた縦線が入るという美しい魚です。

<コスジイシモチ>と<キンセンイシモチ>の違い

実はコスジイシモチが釣れたとき、最初キンセンイシモチという種だと思っていました。

キンセンイシモチという魚は体にオレンジ色の縦線が多数入る美しい魚だったのですが、魚図鑑を見直した結果、この個体はコスジイシモチと同定できたのです。

コスジイシモチ Ostorhinchus schlegeli (Bleeker, 1855)は体側に細い縦線が入り、見た目はキンセンイシモチに似ているものの、尾鰭の付け根に円形斑があることで、これがないキンセンイシモチとは容易に見分けることができます。

コスジイシモチとキンセンイシモチの見分け方(提供:椎名まさと)

体側に細い縦線が入るテンジクダイの仲間は関東以南の太平洋岸や琉球列島、小笠原諸島に広く分布しており、互いによく似ています。とくにコスジイシモチによく似たオオスジイシモチなどは千葉県から沖縄県までよく見られる種で夜釣りでは頻繁に釣れる魚で、食べてもそこそこ美味しい魚です。

しかしこの仲間は見分けるのがやや難しいところがあり、釣り人の間ではあまり区別されておらず、本種も他の数種とともに「ネンブツダイ」と一緒くたにされることも少なくありません。

コスジイシモチの分類

なお、コスジイシモチはかつて Ostorhinchus endekataenia (Bleeker, 1852)と呼ばれる種と同種とされ、Ostorhinchus schlegeli (Bleeker, 1855)はシノニムとされてきましたが、どうもそれぞれ別種とするべきようで、実際Kuiter and Kozawaによるテンジクダイ図鑑(2019年)の中では互いに別種として扱われています。

真の Ostorhinchus endekataenia のほうはインドネシア(タイプ産地)やマレー半島などの東南アジアに生息し、日本には生息していないようです。

テンジクダイ科の魚は飼いにくい?

テンジクダイ科の魚が釣れたら、まず針を外すのですが、その際に決して防波堤におかないようにしましょう。

防波堤に魚を置くと魚がやけどする恐れがありますので、飼育しない場合、たとえば食べたりリリースしたりするときも、魚を防波堤の上に置かないのがベターです。

ちなみに筆者はあらかじめバケツに水をくんでおき、魚が釣れたらその中に入れるようにしています。

また、家までの運搬についても注意が必要です。

テンジクダイ科の魚はおおむねスレ傷に弱く、運搬中にエアポンプからでる、いわゆる「ブクブク」の泡で擦れて鰭や体表がぼろぼろになったりすることもあります。

そのため、生かして家まで持ち帰るには袋に海水と空気をつめたものの中に入れて運ぶ(熱帯魚屋さんで魚を購入した際に持ち帰るのと同じ方法)、または大きめのバケツに新鮮な天然海水を多めに汲んで、緩めに蓋をして運ぶという方法もあります。

これらの方法だと、テンジクダイの鰭がぼろぼろになって死んでしまうというリスクを減らすことが可能です。

テンジクダイ科の魚をうまく飼育するには

筆者は四国近辺に夏から秋にかけて出現する「死滅回遊魚」を飼育しようと思っており、4月にあらかじめ水槽を立ち上げ、飼育する準備していました。

水槽は一般的に市販されている60センチ水槽のセットで、水槽上部にろ過槽を設けた上部ろ過方式と呼ばれるものです。

コスジイシモチを飼育していた水槽(提供:椎名まさと)

実際この方法でウツボを飼育しているなど、これでも十分に海水魚を飼育することができるのです。

しかしながら結果はあまり長生きさせられず、失敗といえました。いくつか理由を考えてみたいと思います。

失敗した理由1. 魚の数が多すぎた

失敗してしまったケースでは、水槽にコスジイシモチのほか、ササノハベラ属のベラが2匹、スズメダイ2匹、クロホシイシモチ2匹を一緒に飼育していました。

これらはいずれも釣りで採集したものなのですが、60センチ水槽で立ち上げてひと月もたっていないのに多くの魚を入れると、排せつ物や残り餌から発生する有害なアンモニアや亜硝酸塩を硝酸塩に変える生物ろ過が追いつかなくなり、魚が死んでしまいやすいのです。

そしてテンジクダイの仲間のうち、コスジイシモチをふくむスジイシモチ属というのは清浄な水を好み、硝酸塩の蓄積には弱いところがあります。上部ろ過槽のみでもいいのですが、外部ろ過槽を併用してろ過能力を増強するのもよいでしょう。

(提供:椎名まさと)

また、60センチ水槽の許容数を大幅に超えていたというのも失敗の原因といえるかもしえません。

釣れた魚ということで10センチを超える魚たちばかりで、このような大きさの魚だと、排せつ物の量も多くなるため、60センチ水槽に何匹も入れるのにはあまり適していないでしょう。

60センチ水槽で、それも立ち上げ直後であれば5センチ程度の魚を1、2匹にしぼるのが安心です。

失敗した理由2. エアレーションをしていた

エアレーションはいわゆるエアポンプを使用して、水槽やバケツに、魚に必要な酸素を送ることです。

水槽の右側にもエアレーションをしている様子が写っていますが、先述したようにテンジクダイ科の魚は擦れに弱く、エアレーションの際に細かい泡が出てくるようなエアストーンを使うと、テンジクダイ科の魚の体表や鰭がぼろぼろになってしまうことも多くありました。

そのため筆者は海水魚の飼育や運搬中に、細かい泡を発生させるエアストーンを用いてエアレーションを行うことをやめています。

エアストーンの代わりに投げ込み式ろ過器を使用(提供:椎名まさと)

ただし筆者も魚採集の際に、魚をバケツでストックする際には溶存酸素量を確保する目的でエアレーションをすることがあります。

しかしその際にはエアストーンではなく、投げ込み式のろ過槽を使用しています。またバケツの中の海水も頻繁に交換し、常になるべくきれいな海水を維持するように気をつかっています。

失敗した理由3. クーラーをつけていなかった

コスジイシモチをはじめ、この水槽にいるほかの魚たち、クロホシイシモチ、スズメダイ、ホシササノハベラといった魚はいずれも温帯域に多い魚であり、高水温には強くないという特徴があります。

また海水魚自体が高水温は苦手な種が多く、基本的には熱帯性種は25℃、温帯性種は22℃前後を維持するようにします。ここ数年異常なほど暑い日本の事情を考えると、海水魚飼育における水槽用クーラーはマストアイテムといえるでしょう。

水槽用クーラーはぜひ設置してほしい(提供:椎名まさと)

しかし残念ながら水槽用クーラーは安価になったとはいえいまだに数万~数十万円かかるようなしろものであり、なかなか導入に踏み切ることができないという方も多いと思います。その場合は室内ごとクーラーで冷やす方法もありますが、そのような方法も電気代がかなりかかります。

近年はネットオークションなどで中古品を手に入れる方法もあり、だいぶ入手しやすくなりました。海水魚を飼いたいと思っている方はなんとかして水槽サイズに適合したクーラーを導入してほしいと思います。

テンジクダイ科を飼育するならしっかりとした設備を

筆者の飼育経験を考えると、初心者にはコスジイシモチをはじめとしたテンジクダイ科の魚の飼育は難しいと思います。

はじめて海水魚を飼育するのであれば、ハゼの仲間やカエルウオの仲間などの魚が飼いやすいでしょう。

ですが、もしテンジクダイ科の魚を飼育してみたいと思ったら、十分なろ過装置とクーラーを使用するなど設備への初期投資をしっかりし、硝酸塩濃度の低くきれいであり、かつ適温の海水で飼育してあげましょう。

そうすれば難しいとされるテンジクダイもしっかり飼育できるはずです。

うまく飼えばキンセンイシモチも複数年生きる(提供:椎名まさと)

筆者はこの経験を踏まえて、今ではキンセンイシモチなどを飼育していますが、複数年飼育することができています。

やはりテンジクダイ科の飼育に重要なものは飼育設備の充実であり、それさえクリアすることができれば、長期飼育は決して難しくはないといえるかもしれません。

(サカナトライター:椎名まさと)

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椎名まさと

魚類の採集も飼育も食することも大好きな30代。関東地方に居住していますが過去様々な場所に居住。特に好きな魚はウツボ科、カエルウオ族、ハゼ科、スズメダイ科、テンジクダイ科、ナマズ類。研究テーマは魚類耳石と底曳網漁業。

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