ブリ属によく似ている別属の魚3種との見分け方
ブリモドキ Naucrates ductor
ブリモドキ属の魚はブリモドキのみですが、世界中の温帯・熱帯海域に生息し、日本では北海道以南の各地の沖合に見られます。
外洋性の魚で大型のサメなどについて泳ぐことでよく知られています。全長50cmほどになりますが普通はもっと小さいです。身はやわらかいものの、刺身や揚げ物などにして美味しい魚です。
ブリ属とブリモドキの大きな違いとしては第1背鰭にあります。
ブリモドキの第1背鰭は小さな棘条のみからなり、棘条をつなげる鰭膜がありません(「ブリモドキの同定ポイント図」の1)。体側にはブリの幼魚のように目立つ横帯がありますが、この横帯は成魚でも消えません(図2)。
アイブリ Seriolina nigrofasciata
アイブリはアイブリ属の魚で、ブリモドキ属同様1属1種のみとされます。
古くは「ねったいぶり」とも呼ばれた種で、南方系の種です。しかしながら日本においては沖縄のほか、新潟県以南の日本海および茨城県以南の太平洋沿岸でも漁獲されており、やはり身はやわらかいものの刺身などにして美味です。
本種の特徴としては吻がブリ属に比べ明らかにまるくて短いこと(「アイブリの同定ポイント図」の1)、体側に斜めに入る黒色帯があること(成魚では不明瞭/図2)があげられます。
ブリモドキともよく似ており、しばしば間違えられますが、第1背鰭はブリモドキと異なり鰭膜を有しているので容易に見分けられます(図3)。またブリモドキは体側の帯は斜走帯ではなく明瞭な横帯であることでも区別できます。
ツムブリElegatis bipinnulata
ツムブリもまた1属1種の魚です。全長1mを超える大型種で、食用となり刺身などでかなり美味な魚です。
南方系といえますが、千島列島からの記録もあり、日本では青森県以南の日本海・太平洋沿岸に分布しています。国外でも全世界の温帯・熱帯海域に分布します。
体側にはブリ属にはない青い縦線が走り(「ツムブリの同定ポイント図」の1)、Rainbow runnerという洒落た英語名がついています。
ブリ属に似ているものの、第2背鰭および臀鰭のそれぞれ後方に小離鰭があるのが特徴です(図2)。第1背鰭は小さいものの鰭膜があります(写真の個体は鰭膜が破れている)。
(サカナトライター:椎名まさと)
主要参考文献
久新健一郎・尼岡邦夫・仲谷一宏・井田 斉・谷野保夫・千田哲資.1982.南シナ海の魚類.海洋水産資源開発センター,東京.335pp.
中坊徹次編. 2018. 小学館の図鑑Z 日本魚類館.小学館.東京.528pp.
下瀬 環.2021. 沖縄さかな図鑑.沖縄タイムス社,那覇.208pp.
Smith M.M. and P.C. Heemstra (eds.) 1986. Smiths’ sea fishes. Springer-Verlag, Berlin.ⅩⅩ+1047 pp.
Takahashi H, T. Kurogoushi, R. Shimoyama, and H. Yoshikawa (2020). First report of natural hybridization between two yellowtails, Seriola quinqueradiata and S. lalandi. Ichthyological Research. 68:139-144.