夏と共に姿を見せるオニヤンマ。
今回はダイナミックな飛行で私たちを驚かせるオニヤンマをご紹介します。
フィギュアでも怖い? 虫たちに恐れられる強さとは
オニヤンマはトンボ目オニヤンマ科に属する水生昆虫です。筆者は最近、子どものために虫除け対策として身につけられるフィギュアを購入し、その効果に驚きました。
虫たちが避けたくなるオニヤンマとはどんな生物なのか、その“強さ”を改めて調べました。
オニヤンマの生態① 動体視力の高さ
オニヤンマは体長100ミリ前後ある日本最大のトンボです。北海道から沖縄島まで広く分布しており、綺麗な小川など水辺に生息しています。
“強さ”の秘密のひとつに動体視力の高さがあります。緑色のぎょろっとした大きな目は「複眼」と呼ばれ、約2万個の小さな目が集まっています。
このひとつひとつの目が敏感に反応し、周囲のほとんどを捉える視野の広さで周りの飛ぶ虫を見つけるのです。
オニヤンマの生態② 強靭な顎
オニヤンマは肉食性で、ハエやアブ、蛾、蜂などの飛んでいる虫を空中で捕食します。1日に体重の10%の餌を食べると言われています。
顎の力が強く、人間が咬まれると出血するほどです。この大きな顎でセミさえも捕食します。
オニヤンマの生態③ 優れた飛行能力
オニヤンマは4枚の翅をたくみに使う飛行の名人です。からだにあしを密着させ、空中停止や急旋回もお手の物。
飛行スピードは時速約60キロ以上。捕食対象のスズメバチの飛行速度は時速約20~30キロであるため、簡単に追いつかれてしまいます。
速さと技術を兼ね備えているオニヤンマに虫たちが寄ってこないのも理解できますね。
ちなみにオニヤンマはまっすぐに飛ぶので、虫取り網で捕まえる際は、進行方向に網があると捕まりやすいそうですよ。
オニヤンマがいなくなる? 後世に残せるか
優れた能力を持つ昆虫界のツワモノのオニヤンマですが、近年その数は減少傾向にあります。
その原因は都市開発や家庭用排水などによる水質の汚染によって、生息地が奪われてしまっていること。オニヤンマの幼虫「ヤゴ」は3~4年間水中で過ごすため、水質の変化は命に関わります。
環境省が発表するレッドリスト(絶滅のおそれのある野生生物の種のリスト)には、多くの種類のトンボが載っており、オニヤンマが載るのも時間の問題かもしれません。未来でも子ども達にはオニヤンマは実在していて、虫除けフィギュアだけの存在ではないと伝えていきたいですよね。
高知県四万十市では世界初のとんぼ保護区(トンボ王国)があり、人の手で守る活動を行っています。これに限らず、生物の生息地を奪うことがないよう、私たち大人は共存ができる世界を考えていく必要があるでしょう。
(サカナトライター:keiko)
※2024年7月1日修正:記事内で使用していた複数の画像について、記事で説明しているオニヤンマではないのではないかとのご指摘がありました。該当する画像に関して、差し替えもしくは削除の対応をしております。読者の皆様、また、執筆者のkeiko様にご迷惑をおかけしましたことをお詫び申し上げます。