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キグチから考察する「にべもない」

筆者が昔シンガポールを訪れた際、魚市場で「Yellow croaker(キグチ)」という魚が売られているのを見ました。

キグチは東シナ海、中国と韓国の間の黄海、渤海に生息し、シンガポールに近い南シナ海にはいないため、恐らくこれは輸入品です。

シンガポールの魚市場で売られていたYellow croaker(キグチ)(撮影:みのり)

シンガポールは多民族国家で、多くの海外の方々が出稼ぎのためにシンガポールにやってきて働いています。そうした他国からの労働者のために、祖国の味を彷彿とさせる料理が次々と誕生していきました。

キグチは特に中国や韓国料理には欠かせない水産物だと言います。このキグチも韓国や中国からの労働者のために輸入されたものだったのかもしれません。

このキグチと同じように中国・韓国でよく食される「フウセイ」というニベ科の魚もいるそうです。「にべもない」の語源となったのは今回のキグチやフウセイなど、東シナ海・南シナ海で見られるニベ科のいずれか……もしくは、なにか一種と断定しているわけではなく、こうしたニベ科の魚が総じて「ニベ」「イシモチ」と認識されて「にべもない」という言葉が生まれたのかもしれません。

サカナたちは意外と身近に潜んでいる

今回の記事の執筆にあたって改めて色々と調べましたが、「にべもない」の本当の語源となる魚は断定できませんでした。しかしこうした魚市場の探索や、旅先で見た魚に関する情報が面白い背景を持っていたり、時には大発見に繋がることもあります。

普段当たり前のように使っている言葉でも、サカナが関係する言葉は以外に多く、それらへの出会いはサカナとの向き合い方を改めたり、サカナをより深く知ろうとしたりするよい機会でもあります。皆さんも魚にまつわる言葉をについて、ぜひ考察してみてください。

(サカナトライター:みのり)

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みのり

みのり

センス・オブ・ワンダーを大切に

北里大学海洋生命科学部卒・元水族館飼育員。魚類・クラゲはもちろん、イルカの飼育も担当。非常に多趣味で、生き物観察やフィールドワークはもちろん、映画や読書、ゲームも好き。多趣味ゆえの独自の視点、飼育員視点を交えつつ、水生生物やそれを取り巻く自然環境、文化、水族館の魅力を発信していきます。

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