海に生息する小型の甲殻類ワレカラ。その生態にはまだ不明な点が多くあります。
図鑑や論文を見ると、ワレカラは主に有機物を食べていると言われています。接餌を調査した海外の研究でもほとんどは有機物であったと記載されています。
しかし、実際にワレカラを観察すると、植物プランクトンをはじめ、様々なものを食べている様子が観察できます。今回はそんなワレカラの接餌生態の研究と、それらに対する筆者の考察を紹介します。
ワレカラの基本的な餌は有機物
図鑑やネットを調べると「ワレカラは有機物を食べる」とよく書かれています。ワレカラの胃の中を調べた研究でも、胃の中はほとんどが有機物だったと記載されていました。
有機物とは「炭素を含む化合物」のことで、大抵の生き物が食べているものは有機物です。
つまり、ワレカラたちは海中を漂う生き物の破片や死骸などを食べているということになります。
状況や種類によって様々なものを食べる
ワレカラは有機物を食べる……と言われても、少し曖昧な感じがしますよね。より深く彼らの接餌を調べてみると、種類によっては海藻に付着した藻類を削って食べているという研究や、触角の毛で植物プランクトンをこしとって食べているという研究もあることがわかります。
また、ワレカラ種の形態によって、食物の割合が変わってくるという研究もあります。例として触角に毛が多く生えているワレカラは植物プランクトンを接餌する傾向が強いそうです。また個人でワレカラを飼育している方のブログにはサクラエビを与えていた、という記載もありました。
東京都にある葛西臨海水族園の記事(ワレカラってなに?-東京ズーネット)では「オキアミなど細かくつぶしてミンチにした餌」を与えていることがわかります。
以前に筆者が飼育していたトゲワレカラは、なんと生きたヨコエビを捕らえて食べてしまったこともあります。このように、ワレカラはその種類や形態、状況によって様々なものを食べていることがわかります。
溶けたら何でも有機物
では、いろいろなところで「有機物を食べている」と言われていたり、「ワレカラの胃の中が殆ど有機物だった」というのはどういうことなのでしょうか。
私の考察は、植物プランクトンだろうと動物プランクトンだろうと、口に入り胃で溶けてしまえばそれはほとんど“有機物”になるので、やはり彼らは種や形態によって様々なものを食べているのではないか、というものです。
前述の通り、私が飼育していたワレカラは生きたヨコエビをはじめ、クラゲの餌となるブラインシュリンプ、植物プランクトン、葛西臨海水族園が与えているようなオキアミやアサリをミンチにした餌もなんでも食べました。
これらをまとめて“有機物”と呼べなくはないですが、ワレカラの形態や環境下で摂餌するものが少しづつ違ってくるため、「有機物を食べている」という記載はやはり少し曖昧だとは思います。
贅沢なんて言ってられない?
これも筆者の考察ですが、ワレカラたちは寿命が1〜4ヶ月と短命であることから、餌を選り好みしているヒマなどないのかもしれません。
種や形態によって摂餌生態が異なるという研究があると紹介しましたが、少なくとも私が飼育していた4〜5種のワレカラは与えた餌のほとんどに反応しました。
よって私なりの解釈をするなら「必ずしも1種類の餌のみを食べているというわけではない」と言えます。付着藻類の摂餌に適した形態、有機物の摂餌に適した形態を持っていても、実際は色々な餌を食べているのでしょう。
短い命、限りある時間の中で、好き嫌いせずに食べてエネルギーを確保しているのです。
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