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飼育が難しい生き物は何?

飼育や維持が難しい生き物もよく聞かれます。

これも園館や飼育員によって異なりますが、私の答えは「クラゲ全般」です。理由はとにかくデリケートな生き物だからです。

ミズクラゲ(提供:PhotoAC)

まず、クラゲの飼育には水流が必須です。クラゲは遊泳能力がないため、水流がないと底に沈んで死んでしまいます。そして、水流が必要であるのにも関わらず、気泡が傘の内側に入ると傘に穴が開いてしまうのです。よって、クラゲの傘に気泡が入らないように水流を調整する必要があるのです。

そして、身体のほとんどが水でできているクラゲは、水質にももちろん敏感です。例えば、水温がそのクラゲにとっての適温から少し外れてしまうだけで傘の形が崩れます。また、塩分量にも気を使わなければなりません。適切な塩分量でないと、クラゲの形が悪くなってしまいます。

ブラインシュリンプ(撮影:みのり)

エサの準備も大変です。毎日ブラインシュリンプという生きたプランクトンを卵から孵化させ、それをクラゲに与えています。生き餌なので、水が汚れやすく、それに伴い水質も悪化してしまいす。スポイトを用いてクラゲの口に直接給餌することもありますが、この際も傘に気泡が入らないように注意しなければいけません。

クラゲ飼育員はクラゲの機嫌を伺い続ける

このように、注意しなければならない点が多すぎるのです。しかも、これだけ注意しても死んだり、形が悪くなったりしてしまいます。さらに、その原因がわからないこともしばしば……。このようにクラゲの飼育はとっても大変ですが、クラゲをみにくる皆様のため、クラゲ飼育員たちは今日もクラゲの機嫌を伺い続けるのです。

筆者自身がクラゲ担当だったこともあり、少し自画自賛にはなりますが、日本の水族館のクラゲ飼育技術はすごいです。こんなに飼育が難しいクラゲを恒常的に好きな時に見られることは、飼育員たちの日々の努力あってこそなのです。

これから水族館でクラゲを見た際には、裏で努力を続けている飼育員さんたちがいることを少しでも思い出してみてくださいね。

水族館飼育員に質問してみよう

今回紹介した3つ以外にも、水族館飼育員には日々たくさんの質問が飛んできます。

長らく水族館界隈に身を置いていましたが、飼育員さんが質問を受けて嫌な顔をしている場面は一度も見たことがありません。むしろ、自分たちの好きなことや生き物たちについてたくさん語れるチャンスなのです。

水族館を訪れた際は、展示を見るだけでなく、そこで気になった疑問などがあればぜひ飼育員へ聞いてみてください。きっと、あなたの知りたいという気持ちに喜んで応えてくれますよ。

(サカナトライター:みのり)

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みのり

みのり

センス・オブ・ワンダーを大切に

北里大学海洋生命科学部卒・元水族館飼育員。魚類・クラゲはもちろん、イルカの飼育も担当。非常に多趣味で、生き物観察やフィールドワークはもちろん、映画や読書、ゲームも好き。多趣味ゆえの独自の視点、飼育員視点を交えつつ、水生生物やそれを取り巻く自然環境、文化、水族館の魅力を発信していきます。

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