規格外の規模を誇る大河・アマゾン川
本館の大トリとなる展示がアマゾン川展示です。
日本の水族館でもアマゾン川の展示は多く存在しますが、本展示は規格外の規模をしています。
とても大きなオオカワウソ
日本の動物園・水族館で見られるコツメカワウソ・ツメナシカワウソとは似ても似つかない、巨大なオオカワウソ。性格は非常に凶暴で、集団でワニを襲うこともあります。
まさにアマゾン川のトッププレデター。体長も大きいもので1.8mもあり、パッと見はもはやアシカです。
オオカワウソは、現在日本で展示されている動物園・水族館はありません。
そんなオオカワウソが、外に面した太陽光が降り注ぐトンネル水槽をいきいきと泳ぎ回る水景に、度肝を抜かれます。日本のコツメカワウソ展示とは比べ物にならない、圧倒的なスケールの展示です。
なるほど、オオカワウソほどの動物をストレスなくかつ展示も拘りぬいて飼育展示するには、このレベルが必要というわけか……と感心しました。
先ほどのメコン川展示もそうですが、日本の水族館では大水槽といっても過言ではない巨大水槽がここでは“いち展示”なのです。しかもいずれも淡水水槽です。
ここまで読んだ皆さんは、もう「淡水水族館=小さくて地味」といった偏見などなくなっているかと思います。川や湖といった淡水環境は、こんなにも偉大なのです。
時間帯によっては、陸上で寝そべるオオカワウソを観察することもできます。かわいい寝顔……かと思いきや、その顔はしっかりと猛獣。日本でコツメではなく、オオカワウソが展示されていたら、可愛いイメージではなく猛獣のイメージが定着していたかもしれません……。
小水槽のランドスケープも見事
オオカワウソのトンネル水槽を抜けると、デンキウナギやネオンテトラ、ピラニアなどが展示されている小水槽群が展開されています。
ここの展示の作り込みもまた見事で、水草の植え方から水槽周りのランドスケープも一切手を抜いていません。熱帯魚マニアの方には、たまらないエリアでしょう。
様々な場所から観察できる巨大冠水林水槽
順路的には最後の展示です。
「アマゾン川展示」と聞くと、半水面の水量的にはあまり大きくない水槽を想像するかもしれませんが、ここの展示は規格外です。
半水面ではなく、しっかり水深のある巨大な水槽に、おなじみのピラルクやレッドテールキャットフィッシュ、タイガーショベルノーズキャットフィッシュなどが展示されています。魚たちも巨大なのですが、それ以上に水槽が巨大なため、彼らが小さく見えてしまうほどです。
それにしても、なぜ半水面ではなくしっかり水深のある水槽なのでしょうか。それは、この水槽がアマゾン川の雨季をテーマにしているからです。
アマゾン川では毎年雨季になると、ジャングルは約10メートル以上も冠水してしまうのです。鬱蒼としたアマゾンのジャングルが、美しい水中世界に切り替わります。その冠水林のなかを、ピラルクや巨大ナマズたちが縦横無尽に泳ぎ回る世界を再現したのが本展示なのです。
半水面の展示に見慣れた日本人の方々は、きっと見たことないアマゾン川の一面、そこに暮らす彼らの生き様に心奪われるはずです。
主役はアマゾンマナティー
アマゾンマナティーは本展示の主役動物といっていいでしょう。
日本では静岡県の熱川バナナワニ園でのみ展示されている、非常に珍しい動物です。数えるだけで7頭ものアマゾンマナティーがおり、小さな子どものマナティーもいました。
冠水林の幻想的な世界を巨大なアマゾンマナティーがふわりふわりと優雅に泳ぎます。
大水槽前には座る場所もあるため、ゆっくり座りながら彼らの暮らしぶりを観察できます。時間によってはマナティーたちの食事風景、スタッフさんたちがお世話している場面を見ることもできます。
奥行きの演出 どこまでも続く冠水林
本展示で一番驚かされたのは、その奥行きの演出です。正面から見ると、水槽の奥の壁が見えないようになっており、冠水林がどこまでも続いているように見えます。
これは手前に砂を浅く盛り、奥にかけて砂を多めに盛って傾斜をつけることにより、奥行きがあるように感じられるようになる見せ方です。
アクアリウムの基本テクニックで、熱帯魚ショップや水族館でもよくみるとこのテクニックが使われている水槽があります。そこに、少し濁った水中とライトの光量を上手く調整することで、鬱蒼としたアマゾン冠水林水槽となるのです。
また、このエリアは音楽も抜群にいいです。私は展示を見る際、視覚だけではなく嗅覚や聴覚から得られる情報も大切だと考えながら見ています。
日本の水族館でも五感で感じられるような展示が大好物なのですが、このアマゾン冠水林展示でも、その幻想さを表現するようなエリアミュージックが流れています。
もし実際に訪れる機会があればぜひ視覚だけではなく、全身でこの展示を楽しんでみてください。