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ロクセンスズメダイ Abudefduf sexfasciatus

このロクセンスズメダイは房総半島や三浦半島では少ないのですが、伊豆半島以南ではしばしば見ることができます。琉球列島の漁港では、よく表層から中層を泳いでいて、オヤビッチャとならび最もよく見られるスズメダイ科魚類の一種です。

体が妙に青っぽく、尾鰭に二つの黒色帯があるため、ほかのオヤビッチャ属とは容易に見分けられるでしょう。

ロクセンスズメダイ成魚。眼の上にも黒色域が見える(撮影:椎名まさと)

標準和名だけでなく、学名の種小名も「6本の帯」という意味になります。体側に5本の帯がありますが、頭部にも黒色域が出ることが多く、合わせて「6本の帯」ということなのだと思われます。

英語名は”Scissortail sergeant”といい、こちらは尾の模様をハサミに見立てたようです。

ロクセンスズメダイの幼魚。他の魚との混泳も可能(撮影:椎名まさと)

オヤビッチャ属としては比較的おとなしめで飼育しやすく、幅90センチ以上の水槽では他の種類の魚との混泳もできますが、それでも温和で隠れがちな魚との混泳は避けるべきでしょう。丈夫で飼育自体は容易です。

テンジクスズメダイ Abudefduf bengalensis

テンジクスズメダイの成魚(撮影:椎名まさと)

テンジクスズメダイはその名の通りインドのベンガル湾で採集された個体をもとに記載されたことに因みます。学名も英語名Bengal sergeantも同様。

幼魚はオヤビッチャの幼魚によく似ていますが、オヤビッチャよりも多く7本の黒色横帯があることにより見分けることができます。

内湾のテンジクスズメダイ。オヤビッチャとの違いがわかるかな?(撮影:椎名まさと)

成魚はやはりオヤビッチャよりも横帯は細く数が多いことや、背鰭や臀鰭が大きく見えること(「ティラピアに似ている」という人も)、尾鰭上葉両葉は丸みをおびるなどの点でオヤビッチャと見分けることができます。

幼魚は千葉県以南の太平洋岸から屋久島にかけて分布し、愛媛県宇和島湾でも幼魚を見ています。紀伊半島や四国南岸、宮崎県、鹿児島県の沿岸などで成魚が見られます。

朝鮮半島からの記録もあり、香港などにも多いことからアジアの大陸棚の魚、といえるのかもしれません。

三重県産のテンジクスズメダイ(撮影:椎名まさと)

飼育については容易ですが、稚魚のときは打たれ弱いところもあります。そのため混泳には注意したいところです。

しかし成長すると逆の理由で混泳要注意となります。内湾では個体数も多くついついバケツに入れてしまいがちですが、お持ち帰りについてはよく考えたほうがよいかもしれません。

イソスズメダイ Abudefduf notatus

イソスズメダイの幼魚は鹿島灘以南の太平洋岸に見られますが、オヤビッチャやシマスズメダイと比べると少ないように思います。

浅いタイドプールで見られ、小さくても単独でいることが多いようなイメージ。大きな岩の下などのような暗い場所に多いようにも思います。

伊豆大島のイソスズメダイ(撮影:椎名まさと)

しかしそんな暗い場所でも、体側にある黄色い横帯が目立ちます。尾も黄色く、幼魚のうちは背鰭にも黄色斑が入り美しいです。成魚は残念ながら灰色の体で体側に白い横帯があるという少し地味な色彩ですが、尾鰭にある黄色は消えず、英語では”Yellowtail sergeant”などと呼ばれています。

性格は結構強く、縄張りを主張します。成魚の飼育経験はありませんが、成魚も相当気性が激しいものと思われ、大型水槽で、しかも他の魚も強めの魚をチョイスしないと混泳はできません。

なお残念ながらイソスズメダイの成魚の写真は持ち合わせておらず、紹介は幼魚のみとなってしまいます。成魚は奄美大島以南の磯では普通に見られ、よく釣れるとのことですが、まだ遭遇したことがないのです。

シチセンスズメダイ Abudefduf septemfasciatus

ロクセンスズメダイに似た標準和名ですが、ロクセンスズメダイとは似ておらず、むしろシマスズメダイによく似ています。幼魚は背鰭前下方に黒色斑があり、体側の横帯が背鰭付近で繋がらないことで見分けることができます。

シチセンスズメダイの幼魚。左に頭だけだしているのはネズスズメダイ(撮影:椎名まさと)

また水中で見ると、背鰭から黒い線がのびて眼の付近にまで達するように見え、シマスズメダイと異なる種とわかります。シチセンスズメダイの成魚は尾柄付近の黒色斑を欠きますが、幼魚にはあります。

シチセンスズメダイの成魚。重厚な見た目をしていてかっこいい(撮影:椎名まさと)

標準和名だけでなく学名の種小名もロクセンスズメダイと似ており「7本の帯」を意味します。septemはラテン語で「7」の意味になります。「September」で9月を意味することから、「Septem=9」と間違って覚えてしまいやすいので注意しましょう。

実は「September」も7番目の月、という意味で、これは古代ローマ時代では3月が暦のはじめであったことに由来しているとされています。

基本的にシマスズメダイよりも個体数は少なく、和歌山などではそこそこ見られますが、関東沿岸では数が少ないです。海外では台湾、インド~太平洋に広く見られます。

シチセンスズメダイの幼魚はここで紹介したオヤビッチャ属の中で唯一飼育した経験がありません。しかしながら大きく育ち、海藻をよく食べるタイプ(釣れたら海藻の色の糞をした)で縄張りを作る種のようですので性格はそうとうきついと思われます。

身は塩焼きにして美味でした。写真は幼魚・成魚ともに鹿児島県喜界島で撮影・採集した個体です。

シマスズメダイ Abudefduf sordidus

シマスズメダイは関東に毎年夏になるとやってくる……のですが、近年は5月の大型連休中にも千葉県や高知県の磯で採集されたのを見たことがあります。

しかもそれらの個体は越冬したようなサイズではなく、あきらかに「当歳魚」といえるようなサイズでした。太平洋岸のほか、日本海でも福岡県津屋崎で見たことがあります(採集はできませんでした) 。

高知県で5月に採集したシマスズメダイの子(撮影:椎名まさと)

幼魚・成魚ともに尾柄付近に大きな黒色斑があり、大型個体では頭部に黒い斑点があらわれます。またシチセンスズメダイと比べると体高も高いように見えます。

写真ではわかりにくいですが体側の横帯は背鰭でつながっているのも、シチセンスズメダイと異なる特徴と言えそうです。

少し大きなシマスズメダイ。横帯をつなぐ逆U字の黒い模様が背鰭にある(撮影:椎名まさと)

成魚は主に琉球列島に見られ、ごく浅い漁港やサンゴ礁のタイドプールに単独または数匹の群れで見られます。高知県の沿岸では大型の個体は一度も見たことがありません。大きいものは全長20センチくらいにまでなり、塩焼きなどにして食することができます。味もなかなか美味。

飼育は容易ですが、藻類を好んで食するらしく、縄張りをつくり他の魚に対して攻撃的です。ただし低い水温には弱いように思われます。

このシマスズメダイは浅いところをこのみ、先述のようにタイドプールではよく見られるものの、そのような場所では温度の変化が激しく、なかなか生き残れないのではないか…とも私は思っているのですが、どうでしょうか。

なお、藻類を主に食う種でも飼育下ではすぐに配合飼料もバクバク食うようになりますので餌の心配はありません。

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椎名まさと

魚類の採集も飼育も食することも大好きな30代。関東地方に居住していますが過去様々な場所に居住。特に好きな魚はウツボ科、カエルウオ族、ハゼ科、スズメダイ科、テンジクダイ科、ナマズ類。研究テーマは魚類耳石と底曳網漁業。

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