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国際的に重要な湿地を保全<ラムサール条約> 世界湿地の日にはイベントも

湿地には、さまざまな水生生物が生息しています。そんな湿地にまつわる国際条約をご存じですか?

この記事では、湿地に関する国際条約、ラムサール条約をご紹介します。

イランで採択されたラムサール条約

ラムサール条約は、1971年2月2日にイランのカスピ海沿岸にあるラムサールという都市で開催された「湿地及び水鳥の保全のための国際会議」で採択された条約です。

正式名称は「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」といい、採択の地にちなんで「ラムサール条約」と呼ばれています

湿地を国際的に保護する理由は?

湿原や沼沢、干潟等の湿地は、水生生物を含めて様々な生物を育み、特に水鳥の生息地として非常に重要です。しかし、湿地は埋め立てなどの開発の対象になりやすいため、それによって湿地が失われてしまうのを防ぐ必要があります。

さらにこの条約で特に保全の対象となっている水鳥の多くは国境に関係なく渡りをするため、国際的な取り組みが必要です。そこで、特に水鳥の生息地として重要な湿地を保全するために、この条約が採択されました。

コハクチョウ(提供:PhotoAC)

この条約における湿地とは、天然や人工、永続的か一時的か、水の流れや淡水・汽水・海水にかかわらず、低潮時における水深が6メートルを超えないすべての沼沢地、湿原、泥炭地、水域が定義されています。

つまり、湿原湖沼ダム湖河川ため池地下水系遊水池マングローブ林藻場干潟サンゴ礁など、さまざまな地形が含まれます。

日本のラムサール条約登録地

日本は、1980年10月17日にラムサール条約に加入しました。2024年1月24日現在、ラムサール条約に登録されている湿地は53ヶ所、総面積は155,174ヘクタールあります(Japan-The Convention on Wetlands)。登録されている湿地を3つ紹介します。

釧路湿原

北海道釧路市、釧路町、標茶町、鶴居村にまたがる広大な釧路湿原は、日本最大級の泥炭湿原です。釧路川をはじめとした川が流れており、東部には3つの淡水湖沼があり、オジロワシ、キタサンショウウオなどがすんでいます。また、一時は絶滅したと思われていた大型のツル、タンチョウが生息している重要な湿地です(『日本のラムサール条約湿地』環境省 p.18-釧路湿原)。

釧路湿原、釧路川(提供:PhotoAC)

また、釧路湿原を構成する河川・湖沼群には、幻の魚といわれるイトウをはじめとして、ヤマメニジマスなどが生息しており、さまざまな魚類にとっても大切な場所です。

葛西海浜公園

葛西海浜公園は、東京湾の荒川と旧江戸川にある汽水湿原です。同公園内には葛西臨海水族園もあり、首都圏に住んでいる人にとっては馴染み深いのではないでしょうか。ここはもともと広い干潟がありましたが、開発に伴って一部の浅瀬を残して失われてしまいました。

1989年、豊かな自然生態系を保全・再生し自然観察などを楽しむ場として葛西海浜公園が開園しました。ここは西なぎさと東なぎさと呼ばれる人工の砂浜が特徴です。なかでも東なぎさは野生生物の生息地を保護する鳥獣保護区であり、鳥類や魚介類の生息に重要な保護区として人の立ち入りを禁止しています。干潟には二枚貝甲殻類をはじめとした、たくさんの水生生物が生息しており、魚類の産卵場・稚魚の生育場としての役割もあります。

葛西海浜公園(提供:PhotoAC)

一方で、西なぎさはレジャーの場として開放されており、自然環境と都市が共存するモデルケースとしても国際的に重要な湿地です。(『日本のラムサール条約湿地』環境省 p.35-葛西海浜公園

三方五湖

三方五湖は、福井県の西岸、若狭湾に面したリアス式海岸にある湿地帯です。5つある湖はそれぞれ塩分濃度や面積、水深が異なるため、淡水魚や汽水魚、回遊魚など、多様な魚類が生息しています。例えば、三方湖は完全な淡水湖ですが、日向湖は海水湖。ほかの湖は汽水湖ですが、それらも塩分濃度が異なっています。このような環境のなかで多様な生態系が育まれており、なかには、ハスタモロコナガブナなど日本固有の魚類も多く見られます。(『日本のラムサール条約湿地』環境省 p.41-三方五湖

三方五湖(提供:PhotoAC)

また、日本の伝統漁である、たたき網漁を行うことでも知られています。

ラムサール条約にちなんで制定された「世界湿地の日」

湿地の保全に関するラムサール条約が2月2日に採択されたことを記念し、世界中の人々に湿地への関心を持ってもらい、その大切さを知ってもらうためにラムサール条約事務局が定めた日が世界湿地の日。世界湿地の日に合わせて、各国で湿地を守っていくための活動が行われます。

2024年のテーマは「湿地と人間の幸福」です。日本でも、湿地の魅力を伝えるためにさまざまな活動がおこなわれています。

2024年「世界湿地の日」ポスター(出展:環境省-ラムサール条約と条約湿地

東京にある上野動物園・多摩動物公園・葛西臨海水族園・井の頭自然文化園では「身近な湿地に目を向け、湿地の今を知ろう!」(世界湿地の日にあわせた4園連携企画「身近な湿地に目を向け、湿地の今を知ろう!」-東京ズーネット)が開催中です(※本記事公開時点で終了している企画・イベントがあります)。

東京にある4つの動物園・水族館が連携して行うこの企画では、それぞれの園の特徴を活かした湿地にまつわる講演や、そこにくらす生き物の紹介などが行われます。湿地を身近に感じることがない都会でも、自然と触れながら湿地について学ぶことができる、世界湿地の日にぴったりの企画です。

また、ラムサール条約に登録されている各地域でも、世界湿地の日に合わせたイベントが行われます。ぜひチェックしてみてください。この機会に身の回りの湿地に目を向け、そこにすむ生き物たちや環境について学んでみると、新たな発見や驚きがあるかもしれません。

(サカナト編集部)

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サカナト編集部

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