不思議な見た目やきれいな模様の殻で目を惹くオウムガイ。水族館などでみたことのある方も多いだろう。しかし、この生き物の魅力はまだまだ知れ渡っていないと筆者は感じる。
この記事ではそんなオウムガイについて、その魅力をお伝えできたらと思う。
イカやタコの先祖、オウムガイ
オウムガイ類はオウムガイ目オウムガイ科に属する生物で、約5億年前に地球上に出現したとされる。これは頭足類、つまりイカやタコの仲間としては最古であり、頭足類すべての先祖筋であるといえる。
よくオウムガイと混同されるものとしてアンモナイトがある。巻いた貝殻を持ち、そこから軟体の脚が出ているところから混同されると思われるが、アンモナイトはオウムガイより出現が1億年ほど新しく、体の構造もより複雑である。
たとえてみるならばオウムガイから進化したアンモナイトはその子であり、そこから進化したイカは孫、さらにそれから進化したタコはひ孫と考えると、進化の系統関係を考えやすい。
オウムガイ類は5億4200万年前から2億5100万年前の古生代には大繁栄しており、その中でもチョッカクガイという種は最大11メートルもあったといわれている。これは現代のクジラと同じ大きさだから、その繁栄ぶりがうかがえる。
オウムガイの体の構造
オウムガイの殻を縦に真っ二つに切ってみると、普通の巻貝の殻とは構造が大きく異なっていることが分かる。オウムガイの殻は、軟体部が収納される空間と、いくつもの壁で仕切られた部屋がらせん状に続いている空間の大きく二つに分かれていることがわかる。
後者は管でつながっており、部屋の中はガスで満たされている。管の中には特殊な液体が軟体部から送り込まれる仕組みになっており、これを出し入れすることによって微妙な浮力を調節し、海中を浮いたり沈んだりしている。
オウムガイの軟体部には約90本ある触手が目立つ。イカやタコと違って、この触手には吸盤がなく、代わりにヒトの指紋のような皺があり、これを用いて岩などにつかまって休憩をする。
オウムガイの推進力はイカやタコと同じく水のジェット噴射によって得られるが、その噴射口はイカやタコのようにパイプ状ではなく、板を丸めたような構造をしている。そのため水が漏れ、推進力はあまり強くはない。
特筆すべき構造は目である。オウムガイの眼にはレンズが存在しない。代わりに小さな穴が開いており、ピンホールカメラのような形式でものを見ている。そのため視力はあまりよくない。
オウムガイの魅力
オウムガイはその特徴的な外見から大変目を惹く生き物である。しかし、近年ではワシントン条約に指定されたことから国内でみることは大変難しくなっている。
太古から生き残ってきた生き物が数を減らしていることは非常に残念である。願わくば、また水族館で気軽にオウムガイを見られるようになることを願ってやまない。
(サカナトライター:宇佐見ふみしげ)