「好きな生き物ランキングを一位から三位まで考えてください」
そう言われたとおりにランキングをつけたところで、
「一位に選んだ生き物はあなたが本心で憧れている姿や生き方の生き物で、二位に選んだ生き物は今のあなたと近い性質の生き物です」
……なんていう心理テストをいつだか受けたことがある。
僕の当時の答えは二位が「猫」、一位は「魚」だった。
いつしか魚に心を惹かれた
僕は幼い頃から生き物が大好きで、小学生ながら生き物図鑑を愛読し、カブトムシやクワガタ、サメなんかの絵を自由帳に描きまくっていた。
いつからか、その興味の中心は水中世界の住民たちへと移行し、川や海を通れば必ず覗き込んでは魚の影を探してしまうのだった。
「魚」と一口に言えど、多種多様な種がいる。
海水魚と淡水魚、小魚から巨大魚、軟骨魚類に硬骨魚類、熱帯魚や深海魚…と語るに尽きないが、僕はどうやら魚という存在全てが愛おしく、あるいは羨望の眼差しさえ向けているのだ。
様々な環境に適応した多様な形態
地球上には数多の環境が存在し、その至る所で魚はその姿を見せてくれる。
広い海の中、砂浜のすぐそばから険しい山の谷川の細流や洞窟の中、あるいは地下深くや雨季にできる水たまりなど、およそ考えつかないような場所にも適応し、たくましく生き延びる。
彼らがそれぞれの場所で生きていくために起こした進化の結晶たる千差万別の姿には目を見張るものがある。
弾丸のように流線形だったり、下敷きの如く平たい体だったり、固くて細長かったり。
また、鱗を駆使してきらびやかな色を映すことも、風景に溶け込んでしまうほどに巧みな模様を呈することだって可能な彼らにとって、ともすれば己がどう生きるかなんてことは自由自在なのかもしれない。
わからない存在だから「面白い」
水の中の世界は僕たちが生きる陸上とは何もかもが違い、透明なのに重たくて、僕たちヒトは俊敏に移動することはおろか、自由に呼吸することさえ許されない。
そんな世界を滑るように泳ぎ、あるものは踊るように、あるものは佇むように暮らす彼ら。
その一端に触れる時、僕は絶対にその世界の中に存在することはできないと知らしめられる。きっと、だからこそ、どうしようもない程に美しく惹かれ、恋い焦がれてしまうのだろう。
水辺は、最も身近な「宇宙」だ。
まるでこの世界とは別の理が支配していて、その全てを解明することなど到底不可能だ。
魚との対話は常に一方通行で、会ったことはまだないが、おそらく地球外生命体との対話に似ている。
彼らの哲学を紐解くことが、彼らの世界を深く知ることに繋がる。
僕にとって魚は世界の神秘そのもの、多様性に満ちた不思議の宝庫なのである。だからこそ、魚という存在そのものが尊く、愛しいのだ。
(サカナトライター:よづる)