いまだ謎も多い「深海魚」ですが、近年は研究も進んでおり、新種が見つかることも少なくありません。また、四方を海で囲まれた日本では漁業が盛んで、底曳網や釣りなどで多種多様な深海魚が漁獲されています。
昨年12月に刊行された『日本の深海魚図鑑』(岡本誠、本村 浩之・編著/山と溪谷社)は、日本で見られる深海魚を423種も掲載した、本格的な深海魚図鑑です。
解説は分類学に精通した19人の研究者がそれぞれ得意なグループの魚を担当しており、他の図鑑ではなかなか知りえない貴重なエピソードを楽しむことができます。
【画像】英国「醜い生物保存協会」のマスコットキャラクターとして話題となった深海魚
マニア垂涎の深海魚図鑑
本書を手に取り、まず目に飛び込んでくるのが、美麗な標本写真が並ぶ手触りの良い表紙です。
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表紙には、ラブカやアカグツなどのメジャーな深海魚に交じって、かなりマニアックな魚たちが並んでおり、本書を開く前から深海魚マニアを喜ばせてくれます。
裏表紙にも、表紙と同様にマニアックな深海魚が並んでいます。気になる人は、ぜひ本書を手に取って確認してみましょう。
美しい標本写真
本書は「深海とそこに暮らす魚とはなにか?」という解説から始まり、途中でコラムを交えつつ、ギンザメ科やチョウチンアンコウ科、ヤセムツ科など様々な分類群の多種多様な深海魚を掲載しています。
掲載されている深海魚は136科423種にもなり、他の図鑑ではあまり見ることのないマニアックな深海魚も満載です。
また、本書では掲載する種はもちろんのこと、掲載する写真にもこだわっており、厳選された美しい標本写真が使用されています。
あの魚も載っている?最新情報を反映
『日本の深海魚図鑑』に掲載されている深海魚は、マニアックなだけではありません。
2024年に新種記載されたオオシロブチギンザメ、2022年に沖縄県から得られた標本をもとに和名が提唱されたコゲメヤセムツ、2022年に東北地方太平洋沖から得られた標本をもとに日本初記録種として報告されたフサフサヒレナガチョウチンアンコウなど、つい最近も話題になったばかりの最新の深海魚も掲載しています。
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そして、貴重な標本写真を実際に命名した研究者の解説とともに楽しむことができます。
研究者ならではの知見が盛りだくさん
本書は美しい写真もさることながら、研究者による解説も大きな見どころです。
解説には、分類に精通した19人の深海魚研究者が参加。それぞれが得意とするグループを担当しており、研究者しか知りえない深海魚の情報が充実しています。
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魚によっては、記載者または命名者による貴重な解説もあります。深海魚マニアの人でも「知らなかった」「初めて知った」となる情報がきっと見つかるでしょう。
この他にも、解説文に食味に関する記述や、ちょっとしたエピソードなども含まれており、コンセプト通りの<読んで楽しい魚類図鑑>となっています。
多くの人が楽しめる深海魚図鑑
『日本の深海魚図鑑』は表紙から中身まで、非常にディープな深海魚図鑑です。
美しい写真はもちろんのこと、研究者による解説も素晴らしく、深海魚マニア、そしてこれから深海魚について学びたい方にもぜひおすすめしたい1冊となっています。
(サカナト編集部)