猫といえば魚が好きな動物の代名詞ともされており、様々なコンテンツや作品で魚を好む猫が描かれています。
そんな魚好きのイメージが強い猫ですが、猫ですら食べずに跨(また)いでしまう魚、通称「ネコマタギ」と呼ばれる魚たちがいるのを知っていますか。
ネコマタギとは
ネコマタギとは、魚が好きな猫であっても食べずに跨いでしまう魚。つまり、食用価値のない魚に付けられる呼び名です。
ネコマタギと呼ばれる魚に決まりはなく、地域によってネコマタギと呼ばれる魚は異なります。
加えて、通常であれば食用になるような魚であっても、時期や部位によってネコマタギと呼ばれることもあるようです。
大量の粘液を放出する<ヒイラギ>
スズキ目ヒイラギ科に属するヒイラギは、内湾や汽水域の砂地に生息する小型魚です。
本種は投げ釣りの定番のゲストとして知られ、釣り上げると大量の粘液を放出することから一部の釣り人からは嫌煙されています。
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加えて、体が薄く棘が硬いことから食用として認知している人が少なく、ネコマタギと呼ばれることもあるのです。
しかし、ヒイラギ自体は味がよいため、一部の地域では食用とされており、主に煮付けなどで食べられているほか、同科のオキヒイラギは干物にして好んで食べる地域がいくつか存在します。
また、ヒイラギ科の大形種であるセイタカヒイラギは東南アジアで多く漁獲され、重要な水産資源として重宝されているようです。
磯場で見られる<タカノハダイ>
スズキ目タカノハダイ科に属するタカノハダイも、地域によってネコマタギと呼ばれる魚です。
日本のタカノハダイ科は本種を含めて3種(ユウダチタカノハ、ミギマキ)が知られており、タカノハダイは3種の中でもよく見られます。
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温帯域の磯場で普通に見られる種でありながら、食用としての認知度は低く、釣り人の中には釣れても逃がしてしまうことも少なくありません。
しかし、個体や時期によっては磯の香りが強いものの、味が良く鮮度が高いものは非常に美味。特に刺身で食べると歯応えのある魚なので、食感の良い刺身が好きな方におすすめの魚です。
また、価格も安価であるためお財布に優しい魚でもあります。
磯焼けの原因の一つとも指摘<アイゴ>
スズキ目アイゴ科に属するアイゴもネコマタギと呼ばれることがあります。
アイゴ科の魚は亜熱帯・熱帯を中心に生息しますが、アイゴは温帯域でよく見られる種で、近年は海水温の上昇により東北でも増加。本種の大きな特徴として、背びれ、腹びれ、臀びれの棘に毒を持つことが知られ、これに刺されると酷く痛みます。
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また、アイゴは磯焼けの原因の一つとも指摘されており、生態については不明点が多いものの、神奈川県の城ヶ島では刺し網により大型のアイゴを駆除することによりカジメ場を回復させることに成功しているようです。
各地で行われているアイゴの活用
アイゴは味がよく、地域によっては食用とされています。そのため、未利用魚とは言えないものの、全国的に認知されている食用魚とも言えない存在です。
一方、近年ではアイゴを食用として利用する取り組みが各地で見られます。
例えば、長崎県佐世保市に本社を置くスーパーマーケット「エレナ」と同県内の養殖業者がアイゴの養殖・販売に取り組んでいるほか、三重県志摩市では県立水産高校と共同で<アイゴのさつま揚げ>を開発しています。
全国的には食用魚として認知されていなかったアイゴが、徐々に食用として扱われるようになっているのです。
ネコマタギと呼ばれていても、実は美味しい
このようにネコマタギとも呼ばれる魚たちですが、いずれも地域によっては食用になっています。そして、個体にもよりますが、実際に食べると非常に美味しいものばかりです。
ネコマタギという言葉に惑わされずに一度食べてみるのも良いかもしれません。
(サカナト編集部)