メジナは北海道南部よりも南の海岸ではよく見られる魚種で、釣りのターゲットとしても高い人気があります。
繊細かつ豪快な釣り魚であるメジナは専門に狙うファンが多く、12月から2月頃の厳寒期は特に狙い目の季節です。
メジナには近縁種としてクロメジナとオキナメジナがいますが、クロメジナは中~小型のものほどメジナと同時に釣れることが多々あります。
さて、一見似ているこの両者、メジナもクロメジナも基本的な食性や嗜好性が近いのですが、エサを食べるために必要な器官の構造の僅かな違いがあり、競合を避けています。
この僅かな違いによって、微妙な棲み分けをしているのです。
メジナとクロメジナ
メジナとクロメジナは、エラの縁の色や尾びれの太さなどで見分けられます。
しかし、魚体が小さい場合は特徴を表す部位も小さくなるため、一見すると見分けがつきにくい魚でもあります。
クロメジナの写真(提供:チョーさん)特に若魚の場合、この両者は同じ場所に群れていることが多く、また魚体の大きさが近いことで見分けがつきにくくなっています。
同じ草食性だけどそれぞれに適した歯をもっている
一方、微妙に競合を避けて棲み分けているメジナとクロメジナ。歯や鰓耙を観察すると、両者の生態の違いが分かります。
冬のメジナは潮間帯に生えるノリ類を、クロメジナはやや水深がある場所に生える褐藻類を主食にしています。
メジナが好むノリ類は潮間帯よりも高い場所に多く見られますが、概してノリ類は海藻の中でも柔らかく、岩の表面を覆うように生えています。
メジナの歯はノリ類をはぎ取って食べるのに適した構造になっていて、手で触るとまるで歯ブラシのような感触があります。
メジナ(左)とクロメジナ(右)の歯(提供:チョーさん)一方、クロメジナの歯は糸鋸のように硬くて細かい構造をしていて、硬い海藻を噛みちぎるのに適した構造になっています。
これはクロメジナが好んで食べている褐藻類が潮間帯よりも下側に多く見られ、概してノリ類よりも硬く、岩にしっかりと付着していることが理由です。
エサの大きさで鰓耙の細かさが違う
メジナもクロメジナも、ほぼ1年中狙うことができる釣りの対象魚ですが、海水温が上昇する5月を過ぎると、ノリ類を始めとした多くの海藻は枯れてしまいます。そのため彼らは別のエサを食べなければなりません。
ノリ類が無くなった時期のメジナは、岩に付着した小動物をはじめ海中に浮遊する小型の甲殻類を食べるようになります。
一方のクロメジナは、岸から少し離れた場所で浮遊する小型の甲殻類やシラスなどの小魚を食べるようになりますが、岸から離れた場所に発生する餌になる小動物は潮に乗って移動することが多いため、サイズの小さいもののほうが、大量に捕食することができます。
メジナ(左)とクロメジナ(右)の鰓耙(提供:チョーさん)そこで「鰓耙(さいは)」という器官に違いが生まれます。鰓耙はえらの内側にあるくし状の部分で、魚が水中で吸い込んだ餌を海水と振り分けて消化管に取り込むための器官です。鰓耙の数が多い魚は、その分ふるいわける餌のサイズが小さくなります。
メジナが食べる岩に付着した小動物に比べ、クロメジナが食べる海中に浮遊する小型の甲殻類は、サイズが小さい傾向があります。
両者の鰓耙を観察すると、体長がメジナよりも大きくなるクロメジナの方が鰓耙の数が多く、即ちより小さいサイズの餌を篩い分けて取り込むことが可能なのです。
似た魚の外見だけでなく器官を見比べてみる
このように、魚の歯や鰓耙を観察することにより、似た種類の魚でも食性の違いを把握することができます。
同じ場所に暮らす似通った魚。普段気にしなければ見落としてしまうことかもしれませんが、歯や鰓耙といった食物を取り込む器官を比較することによって、僅かながらもうまく棲み分けができていることを知ることができるのです。
(サカナトライター:チョーさん)