北海道各地で水揚げされ、季節ごとに産地を変えながら市場に並ぶ毛ガニ(ケガニ)。北海道を旅行したときやちょっと贅沢したいとき、おなじみの食材です。
そんな毛ガニを前にして、ふと気になりました。このびっしりと生えた“毛”は、一体なんなのでしょうか。
ヒトやほかの哺乳類の毛と同じものなのか、それともまったく別の構造なのか──。
毛ガニの“毛”の正体に迫ります。
ケガニの生態
ケガニ(Erimacrus isenbeckii)はクリガニ科に属する冷水性のカニで、北海道沿岸を代表する水産資源。流通上は「毛ガニ」や「毛蟹」などと表記されることが多いようです。
北海道での主な漁場はオホーツク海や道東の太平洋沿岸などで、水深50〜200メートル前後、水温15℃以下の冷たい海域に生息。砂や泥が堆積した海底を好みます。
毛ガニ(提供:PhotoAC)成長は比較的ゆっくりで、脱皮を繰り返しながら大きくなります。
脱皮の間隔は年齢とともに長くなり、成熟までに数年を要し、この成長特性があるため、乱獲すると資源の回復に時間がかかるといわれています。
そのため北海道では、資源保護の観点からメスは通年禁漁であるほか、甲長8cm未満のオスの個体も漁獲しません。さらに漁期を厳格に設定といった資源管理が行われています。
毛ガニの扱いは時代によって大きく変わりました。1910年代には肥料として利用されることもありましたが、1930年代に缶詰加工技術が普及すると輸出原料として価値が高まり、北海道の主要水産物へと成長したのです。
毛ガニの「毛」の正体
毛ガニをはじめとする甲殻類の“毛”の正体は、甲羅から生えている「突起」です。
この突起は、英語では「setae(剛毛)」などと呼ばれています。
毛ガニ(提供:PhotoAC)毛は生えている部位によって役割が異なりますが、主に水の振動や水流の検知のほか、嗅覚や味覚といった化学信号を検知する働きがあるといわれています。
人間の毛とはどう違う?
ヒト科をはじめとする哺乳類の毛は皮膚の毛根から生えており、甲羅の突起であるカニの毛とは根本的に異なります。
哺乳類の毛は主に体温の保持や皮膚の保護のために生えており、海の中を生き抜くためのセンサーのような役割をしている毛ガニの毛とは役割が違うのです。
毛ガニの毛は生え変わるのか?
では、毛ガニの毛は哺乳類の毛のように生え変わるのでしょうか?
答えはイエスです。
しかし毛だけが抜けたり、換毛期があるわけではありません。脱皮の際、甲羅と一緒に生え変わるのです。
これは、毛が皮膚そのものではなく、甲羅の一部として形成されているためです。
毛ガニの“毛”をよく観察してみよう
毛ガニの“毛”は、ヒトやほかの哺乳類の体毛とはまったく異なる構造をもつものです。
同じ言葉で呼ばれていても、その正体は節足動物のカニならではの器官。別の役割をするものが似たかたちとなるのは面白いです。
何気なく見ていた“毛”も、少し視点を変えるだけでまったく違って見えてきます。
次に毛ガニを味わうときは、ぜひ身の甘さだけでなく、そのびっしりと生えた毛にも目を向けてみましょう。
(サカナトライター:バノレイ)