冬の時期に美味しい魚は寒ブリや寒タラが有名ですが、冬はアンコウの美味しい季節でもあります。この記事ではアンコウについてご紹介します。
流通しているのはアンコウじゃない?
アンコウはアンコウ目アンコウ科に属する魚で漢字だと「鮟鱇」。2024年3月現在、アンコウ科の魚は日本に11種が知られており、食用として流通する種はアンコウとキアンコウがほとんどです。
とはいえ、アンコウはキアンコウと比較して流通量が少ないので、実質的にキアンコウ1種のみが広く食用として扱われることが多いのも事実。ややこしいことに流通する場合には、キアンコウもアンコウという名前で流通することが多いので注意しましょう。
市場ではキアンコウとアンコウを区別しており、アンコウはクツアンコウと呼ばれているのに対してキアンコウはホンアンコウと呼ばれます。単にアンコウと言ったらキアンコウを指すことが多いでしょう。
両種は口腔内の色彩により識別が可能です。アンコウの口腔内には斑紋がありますが、キアンコウの口腔内に目立った模様はありません。またアンコウはキアンコウよりも小型であることも特徴。味はキアンコウよりもアンコウのほうが劣るとされており、価格もキアンコウの方が高値です。
アンコウ類は深海魚のイメージが強い魚ですが、アンコウは浅い海にも出現することが知られています。主に底引き網での漁獲が多いですが、定置網や釣りでも漁獲があり、各地で食用になるようです。
アンコウは捨てるところのない魚
アンコウは水分量が多く魚体が大きいことから、通常の魚のようにまな板で捌くことが困難です。そのため、吊るし切りと呼ばれる独特な方法で捌かれます。
アンコウは捨てるところのない魚と言われている魚で、骨を除くほとんどの部位が使われます。特に身、皮、ひれ、えら、水袋(胃)、肝、ぬの(卵巣)、は「アンコウの七つ道具」とも言われており、いずれも食用として料理に使われます。えらを食べるのは非常に珍しいのでアンコウ料理の特徴とも言えます。肝はあん肝として居酒屋などで提供されていますね。
西のフグ、東のアンコウ
アンコウは日本に分布しますが、茨城県大洗がアンコウの産地で有名です。大洗では「大洗あんこう祭」が毎年開催される他、西のフグ、東のアンコウと称されることも。大洗のアンコウの旬は冬で、特に12~2月は肝が大きくて美味しいようです。かつては水戸藩から江戸への献上品にされており、アンコウは江戸五大珍味である「三鳥二魚」の一つに数えられます。
そんな大洗では定番のアンコウ鍋はもちろんのことアンコウを使った料理が多数存在します。アンコウのどぶ汁は福島県から茨城県に伝わる郷土料理。アンコウ鍋とは異なり水を使わないことが特徴で、アンコウと野菜の水分のみで作られる汁物です。元は漁師が船上で食べるご飯でしたが、現代では郷土料理として広く知られるようになりました。
どぶ汁のどぶは「すべて」という意味を持つ説があったり、どぶろくに色がにていることが由来と考えられていたりします。またアンコウの共酢はアンコウの身を肝と酢味噌を混ぜたものに付けて食べる大洗の郷土料理です。
一見グロテスクなアンコウですが非常に美味しい魚でもあります。家庭で調理するのは手間なので、まずは飲食店で食べてみてはいかがでしょうか。
(サカナト編集部)