京都大学・白眉センターの佐藤駿特定助教と大阪公立大学大学院理学研究科の奥野聖也助教を中心とした研究チームは、鑑賞魚としても人気の高い、アフリカにあるタンガニイカ湖に生息するランプロログス族シクリッドの協同繁殖が複数回、独立して進化したことを明らかにしました。また、体の大きさと協同繫殖進化の関係を示しています。
この研究成果は「Communications Biology」に掲載されています(論文タイトル:Repeated evolution of cooperative breeding and life history traits in Lake Tanganyika cichlids)。
グループで子育てする協同繁殖
協同繫殖とは、親以外も子育てに参加しグループで生活するシステムのことです。
この社会システムは我々人類はもちろんのこと、他の哺乳類や鳥類、一部の魚類で知られていました。
タンガニイカ湖のシクリッド
魚類で知られている協同繫殖種のほとんどは、アフリカのタンガニイカ湖に生息するランプロロギニ族のシクリッドたちです。
ランプロロギニ族の協同繫殖種では、子育てを手伝うヘルパーが、巣に侵入する捕食者を追い払うほか、シェルターの掃除や卵に水を送るといった行動を担っています。
ネオランプロローグス・ブリシャディ(提供:PhotoAC)協同繫殖の進化をより一般化して理解するには、魚類における系統種間比較研究の蓄積が必要不可欠です。
しかし、これまで哺乳類や鳥類の協同繁殖については進められているものの、魚類での較研究は限られていたといいます。
そのため、どのような条件で協同繫殖が進化してきたのかは謎に包まれていました。
少なくとも7回の独立した進化
今回の研究では、ランプロロギニ族の協同繫殖がどのように進化してきたのか、その進化が生活史形質にどのような変化をもたらしたのかを明らかにすべく、文献調査、野外調査、系統種間比較法を用いた解析がおこなわれました。
対象となったのはランプロロギニ族のシクリッド73種です。研究グループは、これらについて分子系統樹を用い祖先状態復元により、協同繫殖が何回進化したのかを推定しました。
その結果、最初の協同繫殖種が約400万年前に出現したこと、協同繫殖が少なくとも7回、独立して進化したことが示唆されています。
小型種ほど協同繫殖の進化を促進?
さらに、共同繫殖種は非共同繁殖種と比較して体が小さく、1回あたりの産卵数が少ないことも明らかになりました。
また、捕食魚の胃内容物解析では、被食魚の多くが標準体長50ミリ未満、最大でも約90ミリの小型種であることが判明。この被食サイズの範囲は協同繫殖の体サイズ帯と概ね重なっていたといます。
これらのことから、小型で捕食されやすい種ほど、グループで子育てを行う共同繫殖の進化を促進し、共同繫殖への移行が少産化を促進した可能性が示されたのです。
仮説の域を出ない部分も
今回の研究は、ランプロロギニ族における協同繫殖の進化と、協同繫殖に伴う生活史の変化が示されました。
一方、研究で提案された捕食圧によるランプロロギニ族の協同繫殖種進化は、まだ仮説の域を出ない部分もあるようです。
このような、動物社会の複雑化プロセスの検証は今後、様々な手法や知見の統合により、大きく発展していくことが期待されています。
(サカナト編集部)