日本人にとって馴染み深い魚「メダカ」。
意外にもメダカについては不明な点が多く、近年も様々な視点から研究が行われ、新たな知見が蓄積されています。
今回、大阪公立大学大学院理学研究科の近藤湧生特任助教らが行った研究では、メダカの産卵行動に着目。産卵行動を繰り返したオスのメダカは精子の泳ぐスピードが低下することを明らかにしました。
この研究成果は「Journal of Ethology」に掲載されています(論文タイトル:Qualitative sperm depletion: Successive mating reduces initial sperm velocity in medaka fish)。
メダカの産卵行動
大阪公立大学大学院理学研究科の近藤湧生特任助教と安房田智司教授、琉球大学熱帯生物圏研究センターの伊藤岳特別研究員PDの研究グループは、これまでもメダカの繁殖に関する研究を行ってきました。
同研究グループが行った先行研究では、メスが多くいる環境において、オスが平均して1日に19回、最大27回も産卵行動が可能であることが明らかになっています。
さらに、約10回続けて産卵行動をすると、1回あたりの精子の量が減り受精率が低下することがわかっています。
メダカ(提供:PhotoAC)一方、連続で産卵行動をした場合、精子の泳ぐスピードがどのように変化するのかについては明らかにされていませんでした。
精子の泳ぐスピードは、受精率に大きく影響すると考えられている重要な要素です。
異なる条件のヒメダカを比較
研究グループは、産卵行動を繰り返したオスで、精子の泳ぐスピードが低下するかどうか確かめるため、ヒメダカを用いた実験を行いました。
ヒメダカ(提供:PhotoAC)実験では1回だけ産卵行動をしたオスと、4時間で平均9.3回産卵行動をしたオスを用意。それぞれから精子を取り出し、水中での精子の泳ぎの観察・撮影を実施し、その速度の測定が行われました。
精子の泳ぐスピードが2割低下
測定の結果、産卵行動を繰り替えしたオスの精子は、産卵行動を1回しかしていないオスの精子と比較して、泳ぐ速さが約2割も低下。ただし、このスピードの差は泳ぎ始めから30秒後までの時間帯であり、40秒を過ぎると差が見られなくなったようです。
受精では、精子が泳ぎ始めた短時間の間が重要とされています。つまり、産卵行動を繰り返したオスでは、受精に重要な時間帯で精子の泳ぐスピードが低下することがこの研究で明らかになったのです。
今後は精子の質も考慮する必要がある
今回の研究によって、産卵行動を繰り返したオスのメダカは精子の量が減るだけでなく、泳ぎ始めから30秒までの受精に重要な時間帯において、泳ぐスピードが2割低下することが判明しました。
これまでメダカの繁殖行動は、主に精子の量に着目した研究が進められてきたといいます。しかし、精子の量に加え、質の変化も併せて考える必要があることが示されたのです。
この成果は、動物の繁殖戦略への理解を深める上で重要な手掛かりにになることが期待されています。
(サカナト編集部)