ハワイ沿岸に生息するオキゴンドウは個体数の減少が続いており、長期的な保全が課題となっています。一方で、野生個体の健康状態を継続的に把握することは容易ではなく、より精度の高い評価手法が求められていました。
これを受け、一般財団法人沖縄美ら島財団とPacific Whale Foundation(PWF)、ハワイ大学マノア校ハワイ海洋生物研究所・海洋哺乳類研究プログラム(MMRP)は、ハワイ沿岸に生息する絶滅危惧のオキゴンドウを対象に健康状態の変動を分析。保全に向けた新たな知見が示されました。
本論文は、国際学術誌『Endangered Species Research』に掲載されました(論文タイトル:Body condition differs among social clusters and across years in endangered false killer whales in Hawai‘i)
飼育個体のデータを活用し野生個体を高精度に解析
今回の研究は約7年間にわたる国際共同研究として実施されました。
沖縄美ら海水族館で飼育されているオキゴンドウを対象に、3Dスキャンとドローン撮影によって体形データを収集し、そのデータを基準として写真測量技術の精度を補正しました。
沖縄美ら海水族館のオキゴンドウを対象とした3Dスキャンデータ収集の様子(提供:一般財団法人 沖縄美ら島財団)この手法により、ドローンで背面から撮影した画像だけでも、野生個体の体サイズや体形を高い精度で再構築できるようになりました。
また、飼育個体から得られた詳細なデータを野生個体の解析へ応用することで、野生下における体形や健康状態をより正確に把握できるようになったとしています。
個体数は140頭未満、健康状態の変動も確認
研究では、ハワイ沿岸に生息する対象個体群の個体数が140頭未満であることも確認されました。
また、年間平均で約3.5%の割合で減少している傾向が示され、栄養状態の悪化や環境変化などがその要因として考えられるとしています。
オキゴンドウ(提供:PhotoAC)さらに、個体群内の社会的なグループや調査年によって健康状態に違いがみられることも明らかとなりました。
こうした健康状態の変動を把握できるようになったことで、絶滅危惧種の保全や管理に役立つ評価手法としての活用が期待されています。
海洋生物の保全研究への活用に期待
研究チームは、飼育下で得られる精密なデータを野生個体の解析へ応用した点が今回の研究の大きな特徴であるとしています。
これまで把握が難しかった野生個体の健康状態を高精度で評価できる可能性が示されたことで、海洋哺乳類の保全研究にも幅広く活用されることが期待されています。
沖縄美ら島財団は今後も、飼育下での海洋生物の健全な管理やデータの蓄積を進めるとともに、海外の研究機関との連携を通じて海洋生物の保全研究に取り組む方針です。
(サカナト編集部)