日本に広く分布するモクズガニ。
名前は有名ですが、このカニについて詳しく知らない人も多いのではないでしょうか。
この記事ではモクズガニについてご紹介します。
モクズガニとは
モクズガニはモクズガニ科モクズガニ属に分類される甲殻類で、北海道から琉球列島にかけて広く分布。通し回遊を行い、海で生まれた後、汽水域で変態し河川へ戻ります。
本種の和名は鋏脚(きょうきゃく)に密生する軟毛が藻屑のように見えることが由来です。成長するに従い鋏脚に毛が生え、メスよりもオスの方が毛が多いとか。
さらに、大型のオスでは鋏脚を一周するように軟毛が密生します。この特徴から英語ではMitten(手袋)crabと呼ばれているそうです。
また、モクズガニは全国各地に広く分布することから各地で食用とされており、大分県の「がん汁」や高知県の「つがに汁」は本種を使った郷土料理として現代まで継承されています。
一部の地域では漁業権が設定されている場合があるため、注意が必要です。
日本のモクズガニは2種
現在、日本に分布するモクズガニ属の甲殻類はモクズガニとオガサワラモクズガニの2種が知られており、後者は小笠原諸島のみに分布する固有種です。
オガサワラモクズガニは2006年に新種記載されたばかりの種で、モクズガニとは体色や鋏脚の軟毛の分布が異なること、モクズガニよりも大型になること、遺伝的差異があることから明瞭に区別されます。
なお、環境省のレッドリストではオガサワラモクズガニが絶滅危惧II類に分類されています。
上海ガニはモクズガニの近縁種
日本各地に分布するモクズガニですが、大陸にも広く分布しています。
「上海ガニ」は大陸の高級食材として日本でも知られていますが、実は本種もモクズガニの仲間です。モクズガニによく似るものの異なる種であり、高級食材である一方、在来の個体群へ影響を及ぼす恐れがあることから「特定外来生物」に指定されています。
日本ではチュウゴクモクズガニの和名が与えられており、2004年に東京湾で採集されたことがあるものの、定着していないようです。
上海ガニとワタリガニの違い
モクズガニの仲間として知られる上海ガニですが、度々、ワタリガニと混同してしまう方も少なくありません。
2グループの大きな違いは甲羅や脚の形が異なることです。ワタリガニでは甲羅が左右に尖ることに対し、モクズガニの甲羅の輪郭は丸みを帯びるほか、ワタリガニは第5脚が泳ぐことに特化した遊泳脚になっています。
モクズガニの仲間が香港や上海で高級食材になっている一方、ワタリガニは韓国でカンジャンケジャンの原料として親しまれています。
モクズガニが日本全国に分布することや小笠原諸島の個体群が固有種ということは意外に感じるかもしれません。また、上海ガニがモクズガニの仲間というのも実はあまり知られていない事実です。
(サカナト編集部)