イシガキフグを正面から見たことはありますか。横顔はキリッとしたお顔ですが、正面から見ると笑顔でこちらに笑いかけてくれているように感じます。
この癒しのイシガキフグについて、飼育中の実体験を交えてご紹介します。
イシガキフグは身近なフグ?
季節の幼魚を探しに南房総の漁港へ行った際に、イシガキフグの成魚に何度か出会いました。
水深2~3メートルの辺りで、1匹で泳いでいることが多く、まれに10匹くらいで泳いでいたことも。漁港の岸から網で届く付近まで近づいてきます。
イシガキフグは岩礁域やサンゴ礁に生息するフグ目ハリセンボン科の魚です。ほかのハリセンボン科の魚同様、体にたくさんのトゲを持っており、大きいものは55センチ程度まで成長するようです。
生息域は北海道〜九州南岸の日本海、東シナ海沿岸、北海道、[宮城県気仙沼]〜九州南岸の太平洋沿岸、屋久島、小笠原諸島、琉球列島(イシガキフグーぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑)とあり、国内でも様々な場所で見られるようです。
イシガキフグは胃がない無胃魚
筆者は、現在漁港で出会った30センチくらいのイシガキフグの飼育をしています。
飼育を始めるにあたってイシガキフグを飼育している水族館の方に餌の量や種類についてお話を聞いたところ、イシガキフグは胃がない「無胃魚」と教えていただきました。
エビ、アサリ、キビナゴ、アジなどを食べると聞いて、我が家でもあげてみたところ、やはりエビやアサリを好んであげた分だけよく食べます。
可愛い見た目でアサリの殻も噛み砕く
イシガキフグは可愛らしい笑顔を見せてくれて、普段はゆったりと泳いでいます。
しかし餌に気がつくと一変して素早く食い付き、エビや魚の切り身は一口で丸飲みしてしまいます。
食べ物を噛む力がとても強く、殻付きのアサリをあげると、殻ごとバリバリと噛み砕くほどです。噛み砕いて小さくなった殻を少しづつ吐き出し、最後にアサリの身だけを上手に食べる姿も見られました。
器用に殻を噛み砕く姿は普段のおっとりした姿とのギャップに驚かされました。
膨らんだ時のトゲは短め
フグは身の危険を感じた時などに膨らむことがあります。イシガキフグのトゲはハリセンボンに比べて短く、三叉に別れたトゲが体に沿って広がるように膨らみます。
トゲの長さは短いですが、しっかり硬くて触ると痛いです。トゲは動かず、毒はありません。
イシガキフグの稚魚の繁殖に初めて成功したのは日本人
イシガキフグの稚魚の繁殖に世界で初めて成功したのはさかなクンと東京海洋大学の森田哲郎先生です。おふたりの出会いや経緯についても公開されています(さかなクンとつくったイシガキフグの稚魚ー一般社団法人楽水会)。
映画『さかなのこ』(2022)では、主人公であるミー坊が飼育している魚として出演しているシーンが観られますよ。
日本近海にたくさん生息し、その研究にも日本人が多く関わっているイシガキフグ。記事を読む前より少し親近感が湧いてきたのではないでしょうか?皆さんも観察する機会があれば是非、その可愛い体や生態をじっくり観察してみてくださいね。
(サカナトライター:ミドリフサあんこ)