9月2日、鳥取県で底引き網漁が解禁されました。底引き網漁ではカレイ類、ハタハタなど、一般的な魚の他、モサエビと呼ばれる中型のエビも漁獲されます。
このモサエビという甲殻類、関東ではあまり馴染みのないエビですが、山陰地方では名物として知られているのです。
モサエビとは
「モサエビ」はエビジャコ科クロザコエビ属に分類される中型のエビで、モサエビのモサは「ゴツゴツした頭部が猛者の風貌の如し」が由来と言われています(クロザコエビ(モサエビ)―鳥取県・とりネット)。
モサエビの名は鳥取県東部での呼び名であり、標準和名はクロザコエビ。鳥取県の西部ではクロザコエビを「ドロエビ」とも呼んでいます。
クロザコエビは北海道から島根県の日本海側の水深200メートル前後に分布し、9~5月に行われる底引き網において漁獲される鳥取県名物のひとつです。
モサエビは“幻のエビ”とも呼ばれる?
鮮度の低下が早いことや時間が経つと頭部が黒ずんでしまうことから、かつて、産地のみで味わえる「幻のエビ」でした。
しかし、流通や冷蔵技術の発達により、現在では県外でも稀に見られるようになり、知名度も上がってきています。味が大変良く、甘エビよりも甘みがあると評する人もいるとか。
鮮度の良いものは刺身はもちろんのこと寿司ネタとしても人気があり、味噌汁や天ぷら、蒸しエビなどでも食べられています。価格も昔よりも高騰しており、今では鳥取県の名物の一つとして挙げられる程になりました。
クロザコエビの地域ごとの別名
鳥取県の名物として知られるモサエビですが、日本海に広く分布することから日本海側の各地で漁獲対象となっています。そのため、各地に別名が存在し、混同されることも少なくありません。
実際、鳥取県ではクロザコエビをモサエビ、ドロエビと呼ぶのに対して、ツチエビ(京都府)、ガサエビ(福井県)、ガスエビ(石川県)など各地で似たような名前で呼ばれています。
また、クロザコエビと同属のトゲザコエビも食用となっており、色彩パターンや生息する水深がトゲザコエビの方が深いことなどの違いがあるようです。この2種は形態的に酷似しているものの、産地では区別しており、鳥取県でクロザコエビを「ホンモサ」と呼ぶのに対して、トゲザコエビは「トゲモサ」と呼んでいます。
モサエビは鮮度の低下が早いことから、かつて、漁師さんが船上で食べていたものでしたが、味が良いこともあり現在では産地を中心に流通するようになりました。依然、産地やその周辺以外では珍しいエビなので、日本海側へ行った際にはぜひ食べてみてはいかがでしょうか。
(サカナト編集部)