風水でよく使われる「北枕」という言葉を聞いたことはありますか?
北の方角に頭を向けて寝るのは縁起が悪いとされており、私自身も部屋のレイアウトを考えるときに意識しています。そんな縁起の悪い言葉「キタマクラ」と名づけられた魚がいるようです。
この記事では、キタマクラの名前の由来と生態について紹介します。
名前の由来は強力な毒性から
キタマクラはフグ科に属する魚です。名前の由来は、亡くなった人を北向きに寝かせる日本の風習と言われています。
キタマクラがもつ毒「テトロドトキシン」は強力なフグ毒として有名です。人命を奪うほどの毒性があるため、不吉なイメージを連想させる名前がつけられました。またその昔、キタマクラを食べた人たちが寝込んでしまった様子も、名前の由来となっているようです。
もしキタマクラの名前が「北を向いて寝るから」という穏やかな理由でつけられたのであれば、もう少し親しみやすい印象を受けたかもしれませんね。
釣り人に厄介な存在
キタマクラは釣り人にとって厄介な存在として知られています。その理由は、釣り糸のエサをつついて食べてしまうからです。
細長い口が特徴的なキタマクラは、エサをガブッと食べるわけではありません。釣り人が気づかないうちに、いつの間にかエサが無くなってしまうこともよくあります。
さらにキタマクラは、フグの特徴でもある頑丈な歯を持っています。釣り糸をかみ切ってしまうこともあり、せっかく用意した仕掛けが壊されてしまうのも釣り人を悩ます原因です。
また、毒性が強いキタマクラは食用として好まれていません。調理が難しいうえに、とくに美味しいわけでもなく、釣り人にとっては釣りの対象外(外道)として扱われています。
観賞魚としての魅力
縁起が悪い名前で釣り人にとっても厄介者と、ネガティブな印象が強いキタマクラ。しかし、観賞魚としては人気があります。人に懐きやすく好奇心が強い性格で、比較的飼育しやすい魚です。
胸ビレをパタパタと動かす泳ぎ方を見ると、思わずハコフグのような可愛らしさを感じてしまいます。大きな目とおちょぼ口に特徴があり、とても愛嬌のある見た目も印象的です。
それにしても、フグの仲間はほとんどの種がテトロドトキシンを持っています。しかし、多くのフグは「○○フグ」という名前です。
唯一「キタマクラ」という縁起の悪い名前がつけられたのは、過去の釣り人によほどの悪影響を与えたのかもしれませんね。
名前の由来は生き物の生態を知るヒント
フグ特有の強い毒性があるキタマクラは、縁起の悪い名前が印象的な魚です。一方で、愛らしい見た目と飼いやすさから、観賞魚として人気を集めている二面性もあります。
生き物の名前の由来を知ると、その生態や時代背景を知るきっかけとなるはずです。キタマクラのように変わった名前の生き物を見つけたら、ぜひ由来を調べてみてください。
(サカナトライター:taku)