みなさんはサンゴを食べるサカナのことをご存じですか?
実はサンゴが大好きなサカナがいるんです。そんなサカナたちは、サンゴの維持や破壊といった環境問題に密接に関わっています。
今回はサンゴを食べるのが大好きなサカナのことや、サンゴ礁に与える影響についても解説します。
サンゴを食べる魚たち
サンゴを食べる魚は多数います。有名なブダイだけでなく、チョウチョウウオ類やハギ類、コクテンフグやアツクチスズメダイ、ヒフキアイゴなどたくさんのサカナがサンゴを食べます。
サンゴのポリプを食べるサカナ、サンゴに付着する藻類を食べるためにサンゴをかじるサカナなど、食べる部位はそれぞれです。
コクテンフグ Arothron nigropunctatus
コクテンフグはフグ目フグ科に属する魚で、犬のようなアザラシのような可愛い顔をした愛嬌のあるフグです。
灰褐色の体色に黒い斑点があるのが基本的ですが、色味にはかなりのバリエーションがあります。黒点はどの個体にもあるのが特徴です。
コクテンフグは鋭い歯でサンゴの骨格ごとかじって食べます。
キャプテンパロットフィッシュ Chlorurus enneacanthus
ナンヨウブダイはスズキ目ブダイ科ハゲブダイ属の魚です。夜はサメなどに襲われないように、粘液繭を作って岩やサンゴの隙間で眠ります。
キャプテンパロットフィッシュは、スズキ目ブダイ科ハゲブダイ属の魚です。夜はサメなどに襲われないように、粘液繭を作って岩やサンゴの隙間で眠ります。
サンゴ食の魚ですが、死んだサンゴに付着した藻類を削って食べることもあるそうです。
写真の個体はサンゴを枝ごとかじって食べていました。
メロンバタフライフィッシュ Chaetodon lunulatus
メロンバタフライフィッシュは以前、ミスジチョウチョウウオと同種だと思われていました。インド洋にのみ分布することから、別種とされたようです。この2匹は、尾びれの根元がオレンジ色(ミスジは白色)であることから、やはりメロンバタフライフィッシュで間違いないでしょう。
身体に3本の黒い帯があることから、別名インドミスジチョウチョウウオとも呼ばれます。ミスジチョウチョウウオと同じく、スズキ目チョウチョウウオ科のチョウチョウウオ属の魚です。
サンゴのポリプを専食とする魚で、ミドリイシ類のサンゴを好みます。
サンゴ食はサンゴ礁にどう影響するのか?
ここまでサンゴを食べる魚たちを紹介しました。では、サンゴを食べる魚によるサンゴ食はサンゴ礁にどう影響するのでしょうか?
サンゴだけを食べる“サンゴ専食”の魚といえば、チョウチョウウオ類が挙げられます。メロンバタフライフィッシュ以外にも、ミカドチョウチョウウオ、ミスジチョウチョウウオなどがサンゴを専食するようです。
サンゴはポリプを食べられた部分から死滅するため、サンゴ専食のチョウチョウウオ類が多いサンゴ礁では、サンゴは死滅することがあります。しかしチョウチョウウオ類は成長が早い枝状サンゴよりもテーブルサンゴのポリプを好むため、サンゴ礁の遷移に役立っているのかもしれません。
チョウチョウウオ類には、サンゴのポリプだけでなく小動物も食べるものも多く、上記写真のセグロチョウチョウウオもその1種です。
死んだサンゴを分解する魚やサンゴの生育を助ける魚
サンゴ礁が維持されるためには、日光がサンゴに届くことが必要です。そのため、海藻を食べる魚が居ないとサンゴは育ちません。また、サンゴはきれいな環境で生育するため、死んだサンゴを分解する魚も必要です。
また、ブダイ類やベラ類などは海藻を食べるためサンゴの生育を助けます。また、ブダイ類やコクテンフグは死んだサンゴの中にいるゴカイや小動物をエサにするため、かじったサンゴを分解して砂に変えます。サンゴを分解してサンゴが育ちやすい環境を作り出し、サンゴの復活を助けるのです。
長い歴史の中で生態系維持システムが構築され、様々な魚がそれぞれの役目を持ってサンゴ礁に棲み、サンゴ礁が維持されるようになっているのかもしれないですね。
サンゴ礁を守るには、総合的かつ俯瞰的な視点で対策を取ることが大切となるでしょう。
(サカナトライター:額田善之)