日本食でよく用いられているタコ。日本はタコの消費量が世界で最も多いとも言われています。
マダコは日本でも最も一般的なタコ類であり、兵庫県明石市は本種の主産地の一つに数えられます。しかし近年、マダコの漁獲量が減少傾向にあるようです。
一方、タコは国内のみならず、世界的に需要のあるものとなっており、価格は上昇傾向にあります。ここで疑問なのが、「なぜ需要の高いタコが養殖されていないのか?」ということです。
マダコの養殖研究は行われている
結論から言うとマダコの完全養殖は既に成功しており、2017年には日本水産がマダコの完全養殖に成功したと発表しました(日本水産がマダコ完全養殖 世界で2例目、量産へ前進-みなと新聞)。
また、今年の7月にはマダコ同様に漁獲量が減少しているイイダコの完全養殖にも成功しています(世界初イイダコの完全養殖に成功 香川県水産試験場 稚ダコを放流「課題はまだたくさん」-KSBニュース)。
しかし、スーパーで売られているタコは全て天然物であり、養殖タコを見かけることはありません。タコの養殖が商業化されない理由はいくつかの課題が壁になっているとされています。
タコ養殖が商業化されないワケ
タコの養殖における課題のひとつとしてまず、タコの餌が挙げられます。
タコはエビやカニを食べる肉食性の動物ですが、特に活餌を好むことが知られており、餌代のコストが多くなりがちです。また、タコの養殖ではエサを十分に与えなかったり、狭い空間に複数個体飼育すると共食、自食することが知られている一方、食べ残しの清掃など給餌に関係することだけでも複数の課題が挙げられます。
また、タコは知性が高いことに加え、柔軟な体を持つことから“脱走のプロ”としても有名です。そのため、タコを養殖するためには脱走の対策が必須となります。
タコの養殖は倫理的な問題も?
タコの養殖における課題はコスト面だけではありません。
タコは知能が高いことから倫理的な問題もあると考えられています。実際にアメリカ・カリフォルニア州では、タコの養殖を禁止する法案が多数決で成立されたことがニュースになっています(世界で需要増加も…米で「タコ養殖禁止法」成立 ナゼ?-日テレNEWS NNN)。
タコは好奇心旺盛で記憶力も優れていることから高い知性持つ動物として知られており、今の技術ではタコに快適な空間を提供するのは難しいとのことです。
様々な課題から難しいとされているタコの養殖。その理由にはコスト面と倫理的な問題があるのでした。今後、タコ養殖がどのような展開を迎えるのか目が離せませんね。
(サカナト編集部)