今、世界の人口は80億人程度とされていますが、2080年には100億人に達するという試算があります。
人口増加に伴う食糧不足が懸念される中、アクアポニックスと呼ばれる環境負荷の少ない農法が注目されているのをご存知でしょうか?
アクアポニックスとは
アクアポニックスとは魚の養殖(Aquaculture)と水耕栽培(Hydroponics)を組み合わせた単語で、化学肥料を使わない環境負荷の小さい農法として知られています。
日本ではまだ馴染みのない言葉ですが、1980年代にオーストラリアやアメリカで開発されたとされ、日本では近年、注目されるようになりました。
アクアポニックスではハーブやミント、リーフレタスなどの葉物が栽培される他、トマトやイチゴなどの栽培も行われています。
アクアポニックスの仕組み
アクアポニックスという単語だけ聞くと難しいように感じますが、仕組はいたってシンプル。よく見られるのは魚の排泄物を微生物が分解し、それを植物が吸収するタイプです。
野菜は魚の排泄物由来の栄養を使って育つため、化学肥料を必要としません。また、浄化された水を再び魚が利用し循環が生まれるので、水替えの必要がなくなるメリットがあります。
アクアポニックスは土耕農法と比較して野菜の成長速度が速い他、同面積あたりの収量が多く、使用する水の量は2割程削減できるそうです。
一方、魚に有害な農薬が使用できず害虫による被害が出てしまうことや初期費用の高さ、飼育できる魚の単価が低いことなどのデメリットも存在し今後の課題になっています。
アクアポニックスの今後
日本ではまだ馴染みのない農法のアクアポニックスですが、今後、市場は拡大すると見込まれています。
アクアポニックスに使用される水産物の多くはニシキゴイ、ティラピア、チョウザメなどの淡水性の魚ですが、汽水アクアポニックスによるバナメイエビの試験的な養殖が始まるなど、技術的な面でも進化している分野です。
アクアポニックスは農業と養殖のどちらの知識も要することから難しい分野とされていますが、今後アクアポニックスに関する知見が蓄積されれば多種多様な野菜、水産物が生産できるかもしれませんね。
(サカナト編集部)