我が家には非常に好奇心旺盛かつユニークとも言える息子(現在小5)がいる。
そんな息子は生き物と植物が大好きで、数えきれない程のそれらを育てている。
多数の生き物や植物を育てていると、時には問題が起きることもある。中でも思い出深いのが、「ハマグリ事件」だ。
我が家で起きた「ハマグリ事件」
我が家にとっては「事件」だったので、「ハマグリ事件」と呼ばせていただく。
2023年、当時小4の息子は何を思ったか、突然「ママ、僕、ハマグリをかいたい」と言い出した(息子の行動にはいつも理由がない)。
「ハマグリ? 好きだっけ? じゃあ、お吸い物にする?」と私が聞くと、「違うよ、購入じゃない。飼育するの!」。
唖然とした。筆者の中でハマグリは食べるものであり、育てるものではないからだ。
息子は夢中になると、そのことしか考えられない。図書館でハマグリの本を借り、ネットでハマグリの動画を見て「かわいい!」(か、かわいい??)と。「好き」は人それぞれなので何も言わないが、相変わらず、面白い子だと思っていた。
やがて、実際に魚屋さんに行くことに……というより日参するようになった。
「ハマグリと過ごしたい」 魚屋の仕入れを“出待ち”
息子の自転車の前カゴには、オリジナルのフラッグがついていた。そこには彼が描いたハマグリ達の絵が……! それをなびかせ、ヘルメットをして立ち漕ぎで魚屋さんへ向かう日々。
やがて、卸しから戻るトラックをアイドルの出待ちのように待つようになった。
魚屋さんが「2枚貝の飼育は難しい。人工海水を作るところから始まり、エアポンプも必要だよ」と言うと、「でも、人工海水とエアポンプを用意すればできるってこと?」と食い下がる息子。
他にも、人工海水にはハマグリの餌であるプランクトンがいないため、人工の餌も買わなければならないことなども教えてくれて、息子は諦めることになった。
その代わりに「ハマグリと少しでも一緒に居たい」と、購入したハマグリを1~2日、家で観察することにした。魚屋さんはとびきり大きいのを選んでくれた。そのため、大変高価であった……(こんなに通ってるのにおまけはなかった笑)。
ハマグリ、ありがとう
購入したハマグリを家に持ち帰り、魚屋さんに譲ってもらった海水に入れて観察した。
いろんな模様のハマグリたちに息子は名前を付けた。「ハマ」「マハ」「モヨ」と貝殻を撫でては可愛がった。変わっているとは思っていたが、ここまでとは……私は苦笑した。だが、2日目になるとハマグリたちは傷んできてしまった。
決断を迫られた息子。このまま観察して死なせるか、食べてしまうか。「ハマグリにとってどちらが幸せか考えてごらん」と夫がアドバイスした。
家族会議の結果、ハマグリたちはお吸い物にすることにした。息子は、鍋に入れる前にハマ、マハ、モヨに「ありがとう」と言い、号泣した。
「できないよ、僕には」と言っておきながら、でき上がったお吸い物には大感動の息子。ご飯と卵を入れて雑炊にしてお代わりまでしていたのには笑ってしまった。
子どもってこんなものですよね。生きものの命について、改めて考えさせられた我が家のハマグリ事件でした。
(サカナトライター:栗秋美穂)