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東京都北区で移動水族館をやってみた <荒川〜東京湾の生態>を再現する地域密着の水槽展示に挑戦!

東京都北区赤羽台で11月10日、周辺地域の活性化を目的としたイベント「BONBONフェスタ赤羽台」が開催されました。

筆者はプログラムの一つ「移動水族館」の展示で参加。イベントの運営リーダーとなった大学の先輩から声をかけてもらい、もう一人の別の先輩や後輩らと共にチームに加わったのです。

開催場所は「ヌーヴェル赤羽台」という団地内。団地というものの、オシャレなマンションが建つエリアです。

てっきり古き良き団地内で行われるものだと思っていたのですが、すっかり圧倒されてしまいました。

BONBONフェスタ赤羽台のチラシ(提供:BONBONフェスタ赤羽台2024)

地域密着型のお祭りの一角で行われた小さな移動水族館だったため、あまり目立たない小規模な展示となりました。しかし、この展示を作り上げるまでにはたくさんの人たちの協力や努力、また様々な苦労があったのです。

そこで、移動水族館で行われたイベントの裏話や苦労話、そして当日の様子をご紹介します。

移動水族館の展示テーマは「荒川〜東京湾」

今回の移動水族館の展示テーマは、ズバリ「荒川〜東京湾」。展示はタッチプールと水槽4つで構成しました。

赤羽には荒川が流れており、その荒川は東京湾へと流れ込みます。今回は地域密着型のイベントということで、赤羽に近い<荒川〜東京湾>をテーマに展示を行いました。

東京湾に生息するマアジ(撮影:みのり)

今回展示した生き物たちのほとんどは、移動水族館の運営メンバーが自ら採集したものや、知り合いらに採集してもらったものです。

採集したトゲチョウチョウウオ(撮影:みのり)

筆者の住んでいる場所は赤羽からも海からも遠く離れており、私自身が生体を確保することは困難でした。そこでチームメンバーで役割分担をし、私は主に展示作成に携わることになりました。

想定外? 実際に荒川へ現地調査に行ってみると…

「荒川〜東京湾」というテーマを基に展示作りを開始。水槽は「荒川」と「東京湾」でそれぞれ分けて展示する構成です。

当初「荒川」にあたる展示ではアブラハヤオイカワといった、よくいる淡水魚を展示する予定でした。しかし、実際に足を運んでみると、赤羽周辺の荒川はほぼ汽水域であり、それらの淡水魚はほとんど生息していないことが分かったのです。

赤羽駅から行ける荒川(撮影:みのり)

テーマを決めた以上は、実際には生息しない展示しても、それは“ウソの展示”になってしまいます。

とはいえ、汽水域に生息する魚はボラクロダイといった東京湾にも生息する魚たちのため、「東京湾」の水槽と生体も環境も被ってしまいます。

“かつての荒川”を再現した「北区・子どもの水辺」

どうしたものか……と思いながら調査を進めると、赤羽には「北区・子どもの水辺」という人工のビオトープのような場所があることが分かりました。

北区・子どもの水辺(撮影:みのり)

ここは“かつての荒川”を再現した場所だそうです。

そこでフィールドワークをすると、なんと水溜まりに無数のメダカがいました。

メダカたち(撮影:みのり)

これが野生のミナミメダカなのか、それとも誰かが放流した市販のメダカなのかわかりません。

しかし、かつて東京にも野生のミナミメダカが生息していたということ、このビオトープがそうした環境を思い出すために作られたということは、展示に生かすことができると確信しました。

現地調査を元にイメージ図を作成(撮影:みのり)

当初想定した魚がいないことで断念しかけた「荒川」の水槽展示でしたが、この現地調査をきっかけに展示の構想が完成。メンバーにも提案し、無事了承を得られたのでした。

以前水族館飼育員だった筆者は、自然環境をテーマに展示を作る際、必ず現地調査をするべきだと考えていました。まさに今回も、その経験が活きた形です。

展示で重要な<説明パネル>は大学の後輩たちが制作

今回展示した「説明パネル」の多くは、北里大学海洋生命科学部の学生らが作ってくれました。

筆者も今回のイベントに声をかけてくれた先輩も、そして協力してくれたもう1人の先輩も同大学の卒業生であるため、彼らは私たちの後輩にあたります。

後輩たち作成のパネル(撮影:みのり)

読みやすい短い文と図、イラストを駆使して荒川や東京湾の魅力を上手く伝えてくれています。前々から準備し、忙しい中でパネルを作ってくれたのでした。

あまりにもデザインが秀逸なので、先輩も私も何も言うことなしで、ほとんどそのまま展示することになりました。

手作り感のある展示に合う<手書きパネル>も用意

筆者の手書きパネル(撮影:みのり)

後輩たちの作ったメインの説明パネルに載せきれない内容は、筆者が手書きでパネルを作成。

水槽展示も手作り感があるため、こうした手書きパネルも相性がいいのです。

名札も手書き&手作り!

手作り名札の絵が上手すぎる……(撮影:みのり)

生き物の採集など展示制作に協力してくれたもう1人の先輩は、チームメンバー用の名札を作ってくれました。

この名札も、全て手書き&手作り! 作れるもの・できることは全て自分たちでやりました。

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みのり

みのり

センス・オブ・ワンダーを大切に

北里大学海洋生命科学部卒・元水族館飼育員。魚類・クラゲはもちろん、イルカの飼育も担当。非常に多趣味で、生き物観察やフィールドワークはもちろん、映画や読書、ゲームも好き。多趣味ゆえの独自の視点、飼育員視点を交えつつ、水生生物やそれを取り巻く自然環境、文化、水族館の魅力を発信していきます。

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