東京湾から約120キロ離れた海に浮かぶ伊豆諸島。そこに、伊豆諸島最大の島、伊豆大島があります。黒潮の影響により1年を通して温暖な気候に恵まれている伊豆諸島には、特有の文化があります。
この記事では伊豆諸島で食べることのできる郷土料理を2つご紹介します。
飴色に輝く魚の切り身<べっこう>
べっこうとは、島唐辛子醤油に旬の魚を漬け込んだ伊豆大島の郷土料理です。作り方は簡単で、島唐辛子醬油にお好みの魚の切り身を浸けて完成です。醬油タレに漬けた切り身の色がべっこう飴の色に似ていることから、この名前がついたとか。
べっこうのポイントは島唐辛子で、ピリッとした辛みがアクセントになります。魚は、伊豆大島で水揚げされる白身魚、なかでもメダイがよく使われるそうですが、マグロやカツオなどが使われることもあります。温暖な伊豆諸島で魚を食べるために明治以降に広まった調理法で、島唐辛子を使って辛くするのはワサビが手に入らなかった当時の名残だと言われています。
べっこうは、刺身でなく丼か寿司で食べるのが基本です。普段は丼で、お祝い事やお祭りの日には寿司と食べ分けるそう。寿司のシャリには砂糖が多めの酢飯が使われることが多く、そのシャリの甘さとネタの辛みのコントラストが絶品です。
独特な匂いが特徴の<くさや>
くさやは、独特な匂いで有名な伊豆諸島の名産品です。室町時代から続く歴史ある食品で、島民の生活の中から生まれました。現在は主に、伊豆大島、新島、八丈島において製造されています。
クサヤモロやムロアジ、トビウオなど伊豆諸島で獲れる魚を「くさや液」と呼ばれる独特な液体に浸したあと、乾燥させると出来上がります。発酵液であるくさや液に漬けるため、くさやは干物でなく発酵食品とされています。くさや液に浸す時間は8~20時間ほどです。魚の種類や大きさ、肉質によって調整します。
正確な発祥地は不明ですが、新島であるという説が最も有力です。八丈島水産加工業協同組合は、「八丈島の“くさや”は昔、元祖である新島より、“くさや汁”を分けてもらい、くさや加工者が長年かけて繰り返し調合を重ね、各々独自で秘伝の汁を完成させたもの。」と記載してあります(くさやについて-八丈島水産加工業協同組合)。
くさやはそのままでも食べられますが、炙って食べると、くさやの風味がより引き立つと言われています。魚焼きグリルで焼くのも手軽でおすすめです。伊豆諸島で製造されている島焼酎や日本酒などお酒によく合うほか、お茶漬けやおかずとしてご飯のお供にする食べ方もあります。
海の幸を使った独特な料理、とても食べてみたくなりますよね。伊豆大島には、東京の竹芝客船ターミナルから高速ジェット船を利用すると、最短1時間45分で到着します。伊豆諸島の海の幸を通じて、島で育まれた多様な文化をぜひ体感してみてください。
(サカナト編集部)