深海にはアカムツやキンメダイといった高級魚がいる一方で、見た目が地味であることなどから安価である魚も少なくありません。
しかし、地味だからと言って味が悪いという訳ではなく、高級魚の陰に隠れた美味な魚が多く存在するのです。今回はそんな魚の一つであるオオメハタをご紹介します。
深場釣りの定番オオメハタ
オオメハタは深場に生息する15センチ程度の中型魚。主な生息地は千葉県以南の太平洋沿岸部で、水深100~600メートルの大陸棚に生息します。
深場にいるため、主な漁法は船釣りや底引き網。時として底引き網で大量に漁獲されるものの、小さな個体は利用されないことも少なくありません。釣りにおいてはアマダイ、キンメダイ、アカムツを狙った釣りの外道として知られています。
オオメハタの“オオメ”は本種の眼が甚だ大きいことに因み、“ハタ”はかつて、オオメハタがハタ科(スズキ科)に含まれていたためと考えられます。現在、オオメハタはハタ科から独立したホタルジャコ科・オオメハタ属に含まれるため、“ハタ”と付くにも関わらずハタ科と別のグループの魚なのです。ホタルジャコ科には高級魚として知られるアカムツや「じゃこ天」の主原料であるホタルジャコが含まれます。
オオメハタ属は日本に4種?各地に別名も
2024年1月現在、日本産オオメハタ属はオオメハタの他にナガオオメハタ、ワキヤハタ、ヒゲオオメハタが知られていますが、食用として広く流通するのは本種。日本のオオメハタ属4種は鱗の数、体型、ひれの形で識別できるものの、酷似することから区別しない漁業関係者も少なくありません。
オオメハタ属の主な産地は駿河湾、愛知県、三重県で、底引き網に入ったものが流通しています。また、オオメハタは多くの地で食用とされているためか、各地に別名があることも特徴です。
相模湾で「シロムツ」、静岡県では「デンデン」または「デン」、三重県では「ショウワダイ」と呼び、「ショウワダイ」は昭和にたくさん獲れたことが由来とも考えられています。また、本種の鱗が大きく体が一様に銀色であることがフナを彷彿とさせるためなのか、「ウミブナ」という異名もあるそうです。
オオメハタは旨味が強い
オオメハタは近縁のアカムツと比較して味が劣ると思われがちですが、実は非常に美味な魚です。強い旨味と程よくのった脂が本種の特徴で、アカムツよりオオメハタが好みという方も少なくありません。旬は夏頃でこの時期のオオメハタが一番美味しいとされています。また、アカムツと比較して価格が安いこともオオメハタが好まれる理由の一つと言えます。
そんなオオメハタですが、調理法が多様なことも魅力です。新鮮なオオメハタが手に入る産地では刺身や寿司が食べられている他、煮付け、塩焼き、干物、揚げ物など様々な調理法で食べられています。
オオメハタはアカムツに遜色ない味を秘めているにもかかわらず、値段はアカムツよりもずっと安価な魚です。底引き網が盛んな地域ではよく流通する魚なので、見かけたら買わない手はありませんね。
(サカナト編集部)