東京都豊島区にある「サンシャイン水族館」は今年4月、飼育技術の向上や駿河湾・東京湾で安定した採集ができるようになったことから、2020年11月より飼育展示に挑戦してきたタチウオを正式に常設展示としました。
現在、タチウオの常設展示は日本ではサンシャイン水族館のみ。館内1階の水槽名を「天を仰ぐ太刀魚」とし、泳ぐタチウオを展示しています。
タチウオ展示は難しい
タチウオは鱗をもたない魚なので、とてもデリケート。水揚げの際や水槽内で損傷を受けた擦り傷が致命傷になりやすいです。また光や水流に敏感で、些細な刺激に驚いて怪我をしてしまうこともあります。
タチウオは肉食性が強く、自然界では生きている魚を捕食。飼育下では餌付けづらく、飼育している施設数が少ないことから飼育や展示に関する情報が少なく、まだわかっていないことも多いといいます。
これらの理由から、タチウオの展示は難しいとされてきました。
常設展示実現の要因は?
サンシャイン水族館はこのたび、タチウオを常設展示することを決定。これにはさまざまな要因があるといいます。
まず挙げられるのが、飼育技術の向上。サンシャイン水族館では約4年間、タチウオの展示に挑戦してきており、その間に飼育技術が大幅に向上したそうです。

餌の種類や給餌方法、水流や照明の細かな調整を通して、タチウオに合った飼育環境を作れるように。また、採集時に個体への負担を最小限に減らす工夫や個体への炎症軽減の工夫、採集場所から水族館への輸送技術向上も常設展示を実現した大きな要因となっているといいます。
タチウオの採集
同館は、近年の温暖化による海況変動が影響して、タチウオの採集数が変化したことにも触れています。
サンシャイン水族館の飼育スタッフでタチウオの採集を行う際は、5人から7人のチームで駿河湾や東京湾での採集を行っているのだとか。
タチウオを釣ったあと、針を外すまでを一連の作業で行うため、釣り担当と針を外す担当を設定。普段飼育業務を行っているスタッフ以外にも、他部署の釣り好きを募って採集に臨みます。
タチウオを覆う銀色のグアニンという成分は手で触れると剥がれてしまうので、できるだけ魚に触れないよう針をはずします。

サンシャイン水族館お手製のタチウオ用ビニダモは、生物の取り上げなどで欠かせないビニール製のタモをタチウオの細長い体にあわせて作成。これを数多く準備して、タチウオの採集に向かうといいます。
釣り上げた際には薬浴も

輸送時には、釣り上げた際に負った傷からの炎症を防止するため薬浴を実施。活魚車の水槽は車の揺れに対応できるよう水をいっぱいに張り、車は溝のないレーンや段差の少ない道を選んで輸送するそうです。
サンシャイン水族館でタチウオを観察しよう
サンシャイン水族館では、常設展示でタチウオを観察できるようになりました。これまで水族館でみられなかった魚が技術向上によりみられるようになるのは喜ばしいことです。
私たちからは見えないところで行われている、採集・輸送・飼育について考えながらタチウオを観察すると、また新たな気づきがあるかもしれません。
詳しくは、株式会社サンシャインシティのホームページで確認できます。
※2025年5月27日時点の情報です
(サカナト編集部)