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国内の雷魚からアジア大陸原産の寄生虫を発見 その名も<ライギョノネドコムシ>?

単に「外来種」というと、比較的に目につきやすい大きさの生物、魚でいえばオオクチバスやブルーギルなどをイメージしがちですが、実は寄生虫にも外来種がいます。

東邦大学と日本大学、水産研究・教育機構水産技術研究所、地球・人間環境フォーラム、ミュージアムパーク茨城県自然博物館の研究グループはこのたび、外来魚のカムルチーから日本未記録種の外来寄生虫を発見。和名はライギョノネドコムシと名づけられました。

この研究成果は『Journal of Helminthology』に掲載されています(論文タイトル:Introduction of Azygia hwangtsiyui (Trematoda: Azygidae) to Japan with its life cycle information)。

カムルチーは「ライギョ」とも呼ばれる

ムルチーは大陸東部を原産とする淡水魚で、別名「ライギョ(雷魚)」とも呼ばれる魚です。

雷魚(提供:PhotoAC)

若い個体では小型の水生昆虫を食べますが、成長して大きくなると小魚などを捕食。大型になることから時に釣りのターゲットにもなります。

本種は1920年頃に日本へ導入されたと言われており、国内で飼育観賞用として流通。現在でも、ネットオークションなどで生体販売がされている様子を確認することができます。

寄生虫の発見

日本の淡水魚の寄生虫を調査してきた研究グループは、カムルチーの寄生虫を調べた際、その胃から大型の吸虫(扁形動物の寄生虫)の成虫を発見。

この成虫の形態などを詳細に調べた結果、アジア大陸原産で日本未記録種の吸虫 Azygia hwangtsiyui (和名をライギョノネドコムシと命名)であることが判明したのです。

また、日本国内のカムルチーにおいて広く調査がされ、この吸虫が関東から九州にかけて広く分布することもわかっています。

<ライギョノネドコムシ>の宿主

研究では続いて、日本でこの寄生虫がどのようにカムルチーへ感染しているのかを調査しました。

チチブ属の魚(提供:PhotoAC)

アジア大陸においては、ライギョノネドコムシをはじめとするAzygia属の吸虫の幼虫は、小型の淡水魚や貝類に寄生することが知られています。そこで、カムルチーが分布する水域におけて、小型魚や貝類の調査が実施されました。

調査の結果、小型魚のヌマチチブヒメタニシから得られた吸虫が形態やDNAに基づき、ライギョノネドコムシに同定されたのです。

ライギョノネドコムシの寄生経路

調査から得られた情報とAzygia属の一般的な生活史を照らし合わせると、日本での生活史は次のようになるとされています。

まず、中間宿主であるヒメタニシにレジアと呼ばれる幼虫が寄生し、セルカリアという感染ステージの幼虫を水中に放出。水中に放出されたセルカリア幼虫は水生昆虫を食べるサイズのカムルチーに捕食された後に胃で成虫へと成長します。

また、セルカリア幼虫はヌマチチブなどの小魚(待機宿主)に食べられ、小魚がカムルチーに食べれることによっても感染すると考えられました。

ライギョノネドコムシが日本へ侵入した経路

中国大陸と日本は海で隔てられていることから、ライギョノネドコムシが日本へ侵入した経緯は寄生された淡水魚や貝類の自然移動によるものではなく、人為的に宿主が持ち込まれたと考えられいます。また、この寄生虫は大陸部でもカムルチーからしか寄生報告がないようです。

雷魚(提供:PhotoAC)

これらのことから、ライギョノネドコムシが日本に分布するようになったのは、少なくともカムルチーが日本に導入された以降であり、本種が日本へ導入された1920年ごろに本虫も一緒に日本に定着したと推察されています。

また、ライギョノネドコムシのミトコンドリアDNAのCOIのハプロタイプ(母系遺伝するミトコンドリアDNAの塩基配列のタイプ)は3つ発見され、本虫が複数回日本に侵入したことが示されました

寄生虫も外来種

今回、発見されたライギョノネドコムシの成虫は、カムルチーがいないと生存できない寄生虫です。そのため、日本にカムルチーが定着したことにより、ライギョノネドコムシが日本に侵入可能になったと考えられています。

また現在、ライギョノネドコムシが日本在来の宿主に悪影響を与えた様子はないものの、今後、同じような経路で別の外来寄生虫が日本で広がってしまう可能性が懸念されています。

特に寄生虫が定着してしまうと、その水域から取り除くことは難しいようです。外来寄生虫を他の水域に広げないためにも、動植物の放流は絶対に行ってはいけません。

(サカナト編集部)

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