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野生下の魚たち

それでは、野生下の魚はどのような反応を見せるのでしょうか。

とにかく人を恐れる反応をするのだろうと思われがちですが、実際には少し違ってきます。人を恐れる魚ももちろんいますが、全ての魚がそういった反応を見せるわけでもないのです。

一体どういうことでしょうか。

磯遊びで出会う魚にはすぐに逃げられる!

磯遊びをしたことがある人は、「磯の魚たちは人影でびっくりして逃げて行く」と感じると思います。

確かに磯で上から魚を見下ろした際、彼らは凄いスピードで岩陰や穴の中に隠れますし、なんの魚なのかすら認識もできない速度で人前から姿を消します。磯で魚を捕まえようとしても、中々苦戦する理由でもあります。

磯で手軽に魚と触れあえる(提供:みのり)

とにかく上から見える影に恐れをなしていることがわかります。恐らくですが、彼らは地上にいる捕食者が自分たちを狙っていると認識しているのでしょう。

それが飼育下だと徐々に学習することで人を驚異の対象と見なさなくなり、反応が鈍くなったり、逆に人を見て餌の時間だと認識できるのかもしれません。

それでは、上からではなく横から、すなわちダイビングで水中から魚を見た場合、彼らはどんな反応を見せるのでしょうか?

水中では「余裕」を湛えた魚たちが観察できる

ダイビング経験者に聞くと、大体の方が「水中で見る魚は水族館で見る魚とは全く違う」と言います。

あいまいな表現ですが、まず雰囲気からして磯の魚とは様子が違います。どんなに広い水槽であろうと、飼育下の魚が必ず持っている“人が管理している魚”というステータスが一切ないため、人に対する「余裕」を感じるほどです。

水中世界の営み、彼らはこちらに見向きもしない(提供:みのり)

もちろん種類や個体にも寄りますし、近づきすぎると逃げていく魚もいますが、多くの魚はそこに人がいないかのように振る舞います。特にベラの仲間などは人が巻き起こした砂埃などに餌が紛れ込んでいないか群がってきます。

クリーナーフィッシュとして有名なホンソメワケベラは、人を大きな魚と勘違いして掃除してきます(たまらなくかわいいです)。人を含めて、そこで行われているのは水中世界の当たり前の営みです。

ホンソメワケベラ(提供:みのり)

水中では、彼らの生活や営みを肌で感じることができます。それは同じように横から見るアクリル越しの魚とも違う顔です。そこで見られるのは「普通」に生きているだけの魚たちの顔なのです。

これは筆者の考察ですが、ダイビングスポット周辺は魚が観光資源となることから、釣りや漁が禁止されている場所もあります。そのため、魚たちに「人を恐れる」という概念がないのかもしれません。

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みのり

みのり

センス・オブ・ワンダーを大切に

水族館に関するお話やフィールドワーク体験の記事を中心に、自然環境の素晴らしさやそれらを取り巻く文化的なお話もお伝えしていきます。

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