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どんな生きものがいる? 広大なビオトープでガサガサを体験してみた【岡山県自然保護センター】

生きものが大好きな筆者と息子は昨年5月、岡山県自然保護センターで開催された「人とみどりと野鳥のつどい 水生動物コース」に参加し、色々な水の中の生きものを見つけました。

そこで、ビオトープに生息する小さな生きものたちと共に、イベントで見つけた生きものたちについて紹介します。子どもと楽しく水辺で遊ぶ際の参考にしてくださいね。

ビオトープってどんな場所?

ビオトープの一例(提供:PhotoAC)

ビオトープとは、「特定の生物群集が生存できるような、特定の環境条件を備えた均質なある限られた生物生息空間」のことをいい、具体的には池沼や湿地、田んぼの周辺、草地、里山林などが挙げられます(参考:環境省 環境白書)。

今回は水生動物をテーマにするので、小さな川や池、湿地帯などに生息する生きものたちをピックアップします。

ビオトープに生息する生きものたち

ビオトープには、多様な生きものたちが生息しています。

大型水生甲虫<ゲンゴロウ>

ゲンゴロウ(学名:Cybister chinensis)は、水生昆虫や水生動物(小さな魚など)を食べる4センチほどの大型水生甲虫。ミズカビにやられないように甲羅干しする習性があります。

筆者が子どもの頃はまだ見かけることはあったのですが、今は本当に見かけなくなりました。ゲンゴロウやいくつかの近縁種は環境省の絶滅危惧II類(VU)に指定されています。

ゲンゴロウ(提供:PhotoAC)

都道府県では、準絶滅危惧種~絶滅危惧IB類に指定されており、全国的に減少が著しいのが現状です。

太鼓を打つような仕草をする<タイコウチ>

タイコウチ(学名:Laccotrephes japonensis)はカメムシ目の水生昆虫で、前肢の動きが太鼓を打つ仕草に似ていることからその名が付いたそう。魚類やオタマジャクシを食べます。

タイコウチ(提供:PhotoAC)

捕まえると死んだふりをするので、「殺してしまったかも?」とドキッとすることも。タイコウチはいくつかの都道府県で準絶滅危惧種や絶滅危惧I類に指定されています。

細長い身体と鎌をもつ<ミズカマキリ>

ミズカマキリ(学名:Ranatra chinensis)は、カマキリのような細長い身体と鎌のような腕を持つため、この名が付きました。

ミズカマキリ(提供:PhotoAC)

ミズカマキリはまだたまに見かけますが、本種もいくつかの都道府県で絶滅危惧種に指定されています。

希少生物<タガメ>

タガメ(学名:Kirkaldyia deyrolli)は、環境省レッドリスト2020で絶滅危惧II類(VU)に指定されている希少生物です。

保全のため特定第二種国内希少野生動植物種に指定され、販売目的の捕獲は禁止。販売目的で捕獲した場合、個人では5年以下の懲役または500万円以下の罰金、またはその両方が科せられます(法人の場合、1億円以下の罰金刑)。

タガメ(学名:Lethocerus deyrolli)

もし、野外で見つけたら優しく観察して逃がしてあげましょう。

自然保護センターのビオトープで見つかった生き物たち

岡山県自然保護センターで開催された「人とみどりと野鳥のつどい 水生動物コース」のイベントは予約不要で参加可能だったので、当日はたくさんの親子連れでいっぱいでした。

休耕田や小さな水路などのビオトープを網でガサガサし、泥ごとすくうことで生きものを採集。たくさんの種類のヤゴ、オタマジャクシ、カエルのほか、アカハライモリ、コオイムシなどが見つかりました。

アカハライモリがたくさん捕れました(撮影:額田善之)

なお、岡山県自然保護センターでは、生きものの採集や捕獲は禁じられています。イベントなどで一時的に採集する場合、観察後にリリースして保全することがルールです。

タガメにそっくり<コオイムシ>

コオイムシ(学名:Appasus japonicus)はタガメを少し小さくしたような姿をしている肉食水生昆虫。産卵時期にはオスが卵を背負うため、この名がつきました。

コオイムシ(提供:PhotoAC)

本当にタガメそっくりで、「絶滅危惧種、捕ったど~!」と喜んだのですが、確認してもらったところコオイムシとのことでした。コオイムシは何匹か捕まえたのですが、容器内でオタマジャクシを襲っていたので、すぐに逃がしました。

色々な大きさのオタマジャクシも

オタマジャクシもたくさん捕れました。10センチ程度の大きさで、斑点の出方などからおそらくウシガエルのオタマジャクシだと思われます。

大きなオタマジャクシ(撮影:額田善之)

大中小の色々なオタマジャクをたくさん採集。足が生えている個体もおり、「変態」という発生の仕組みに改めて感動しました。

色々な形のヤゴも

足と身体のバランスから(オオ)シオカラトンボのヤゴのように見えるのですが、もしかするとサナエ系かもしれません。

中くらいの大きさのヤゴ(撮影:額田善之)

余談ですが、ヤゴは図鑑で見るとまるで“観音様”みたいですね。

子どもも大好きな<アカハライモリ>がいっぱい

アカハライモリ(学名:Cynops pyrrhogaster)は日本固有種のイモリで、赤いお腹と愛嬌のある顔や体型が人気です。

本州、四国、九州に普遍的に見られる両生類で、「ニホンイモリ」とも呼ばれます。背面は黒緑色や黄土色などバリエーションに富み、腹面の模様は地域でかなり違いがあるのが特徴です。

アカハライモリ(撮影:額田善之)

環境省のレッドリスト2020では準絶滅危惧 (NT)に指定。特に関東地方では絶滅危惧I類に指定されるところもあり、生息場所が減っていることが示唆されます。

なお、アカハライモリはフグと同じテトロドトキシンという猛毒を皮膚表面から分泌するため、触ったあとは丁寧に手洗いをしてくださいね。

自然保護や環境保全の大切さを知る

水生昆虫が減少した理由の一番は農薬の使用だと言われています。また、減反政策による生息地の減少やコンクリートによる生息環境の悪化、ブラックバスなどの外来種が増えたこと、エサの減少なども挙げられます。

田んぼやビオトープの手入れ・整備などにより生息環境を増やす保全活動のほか、外来種の駆除活動などがなければ、近い将来に希少な水生生物たちが絶滅してしまう危険性が非常に高いです。

一人ひとりが生物多様性を大切にし、豊かな自然を守るという意識を持てば、絶滅危惧種に関する事態も少しは変わるのではないでしょうか?

ビオトープで遊んでみよう(提供:PhotoAC)

外来種の放流や移動はくれぐれもやめましょう。法律で罰せられるのはもちろん、不可逆に生態系を破壊する可能性があります。

なお、ビオトープの中には、管理がされており無断で立ち入れない場所もあるため、十分に気をつけましょう。また、危険防止のため、水辺では子どもに必ずライフジャケットを着用させてくださいね。

岡山県自然保護センターに行って自然に触れましょう!

岡山県自然保護センターは、自然とのふれあいを通じて自然保護についての認識を高めるために設立された自然保護・学習施設。年間を通じて、様々な自然に関するイベントが開催されています。

なお、国の指定特別天然記念物及び国内希少野生動植物種に指定されているタンチョウの飼育もしており、散策する様子や池のそばでたたずむ様子を見ることが可能です。

今後も引き続き楽しいイベントを紹介しますので楽しみにしていてくださいね。

(サカナトライター:額田善之)

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額田善之

額田善之

人生を楽しもう!

愛媛大学理学部生物学科卒の生粋の生き物大好きライターです。特に魚が好きで、子どもと水族館巡りや釣りを楽しんでいます。オートバイで旅をして産地の珍しい魚を食べるのも趣味です。旅行や納豆の記事をよく書きますが、今回から水生生物についても執筆していきますので、よろしくお願いいたします。

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