庶民の味方とされたサバやサンマも、今では数を減らし値段が高騰している現代。魚自体が数を減らしつつある中、人知れず数を増やしている魚がいることをご存知でしょうか。
それがクロダイです。クロダイは一部地域のみならず、全国的に数を増やしている傾向があるようです。
タイの仲間<クロダイ>
クロダイはスズキ目タイ科に属する魚であり、背中側は名前の通り黒く腹側は白いのが特徴です。
雑食性で、甲殻類や多毛類(イソメ、ゴカイなど)、小魚を主に食するほか、スイカやトウモロコシなどなんでも食べるそう。夜行性で、日没以降になると活発になります。

タイ科の魚は基本的に深い場所を泳ぐ種族ですが、クロダイは比較的浅い場を好み、水深50メートル以浅の場所に生息。河口付近や河川の淡水域にも生息することから環境への適応能力が高い魚としても知られています。
夏場は水深1~2メートルほどの浅場で見られることも多いです。
また、2~3歳ころはオスですが、次第に卵巣が成熟しはじめ、4~5歳になるとメスへ性転換します。
生息数増加の理由は<海水温の上昇>?
そんなクロダイですが、今では全国的にその数を増やしつつあるようです。
クロダイは暖かい水を好む傾向があるため、温暖化の影響によるものではないかと議論されています。ここ近年の気温上昇のニュースと、暖かい水を好むというふたつのキーワードを見るに、温暖化の影響は少なからず関係しているかと思われます。
また、稚魚放流や環境回復など様々な意見も挙がります。
都心部の河川等でもその数を増やしているクロダイ。これに関しては、海よりも比較的浅い場である点と、ヒートアイランド現象が関係しているのではないかと筆者は考えます。
ヒートアイランド現象は都心部の気温が周辺地域よりも高くなる現象のことで、原因の一つはコンクリートによる熱排出。このコンクリートが熱の発生源となり、気温を上昇させているのです。
都心部の河川はコンクリートで覆われていることが多く、蓄積された熱が水温に影響を及ぼしているのなら、クロダイにとっては格好の穴場。このクロダイの増殖が自然環境の回復の兆しであればいいのですが、そうでない場合は環境破壊によってもたらされる増殖と考えることもできます。
フィッシングターゲットとしても人気
クロダイは、近年ではゲームフィッシュとしても名が高く、老若男女問わず愛されています。
都心部は足場の良さもあり、「ヘチ釣り」でクロダイを狙う人をみかけます。

初心者の方でもすぐにできる釣りとして人気を集めていますが、食用としてはあまり適さないという面も。
決して食べられない訳ではなく、その味は鯛と変わらない味。しかし生息環境によっては臭みがあったり、雑食性で鮮度が落ちやすいなどネックな部分が多いといいます。
自然環境は壊れつつあるのか、その中で回復の兆しはあるのか──。クロダイの数が増えているという事実は、自然環境の現状を考えるきっかけにもなりそうです。
(サカナトライター:東ガイ)